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【取材】踊って、魅せて、惚れさせる~慶應義塾大学 日本舞踊研究会 宝~

【取材】踊って、魅せて、惚れさせる~慶應義塾大学 日本舞踊研究会 宝~

慶應義塾大学(公式HPより)

なんとメンバーの3分の1が留学生、という日本舞踊サークルがある。それが「慶應義塾大学 日本舞踊研究会 宝」だ。

2018年に「国籍問わずもっと多くの方に日本舞踊の魅力を知ってほしい!」と、「気軽に、でも本格的な日本舞踊を学べる」サークルとして発足。そのコンセプト通り、現在約30人のメンバーのうち3分の1にあたる約10名が海外からの留学生が占める。

その「宝」の国際交流活動、日本舞踊の練習風景、日常などを伺った。

三田祭(学園祭)のメインステージにて

慶應義塾大学 日本舞踊研究会 宝

創部:2018年
活動場所:慶應義塾大学日吉キャンパス、三田いきいきプラザ
活動日時:週2回、水曜日と土曜日
人数:約30名、留学約10名含む
兼サーOK
月に2,3回、プロの指導あり(藤間流・藤間毬宝(まりほう)先生)

年間行事

4,5月 浅草浴衣会
6月 留学生送別会 (7月に留学生が帰国するため)
11月 三田祭公演メインステージ(一番大きなイベント。メインステージでは毎年大勢の観客が訪れる)

「宝」の和田野様と高島様にお話を伺った。

【和田野様】

入部のきっかけは?

小学生の時に日本舞踊の体験をして、それからずっと興味がありました。

どんなサークル?

アットホームなサークルです。

入部してみて印象的だったことは?

女性らしい踊りだけでなく男形も教えてもらって、かっこよくて、こんな踊りもあるんだ!と新鮮でした。

【高島様】

入部のきっかけは?

元々、母親が日本舞踊を長くやっていて、いつかできたらいいと思っていました。先に入っていた友だちに誘われて入りました。

どんなサークル?

非常にアットホーム。先生を中心として親戚みたいなサークルです。

入部してみて印象的だったことは?

想像よりも大変!バレエを習っていたが、動きが全然違うこと。バレエは、体重を上に上に飛んだり跳ねたりするイメージだけど、日本舞踊は地に足を付けてかかとを上がらないようにしずしずと踊る感じ。

サークル創立のきっかけ

創部のきっかけは2017年。

日本舞踊をなさっていた創立者の稲永萌黄さんが、中国で日本舞踊を披露した折、とても喜ばれ感動してもらえたことから、これから「国籍問わずもっと多くの方に日本舞踊の魅力を知ってほしい!」と、サークルの設立を決意。

浴衣で日本舞踊を体験するという、設立時の体験会では約100名が参加する盛況ぶりで、そのうち約20名が入会。現在は留学生約10名を含む、30名ほどが活動している。

「宝」は、留学生との国際交流をその目的の一つとしているため、留学生が約1/3在籍している。

稽古以外の活動も、慶應大学の国際寮の新歓パーティーで日本舞踊を発表するほか、みんなで料理を作る会では留学生が自国の料理を披露し合ったりといった国際交流的なアクティビティが多い。

留学生にとって、非常に心強いことであり、日本人学生にとっても、他では経験できない貴重な体験の場となっていることだろう。

帰国した留学生から、部員と先生に届いた手紙

Cooking Party

どんな曲を練習していますか?

民謡「お江戸日本橋」ステージにて

「最初は、『お江戸日本橋』や、『お祭り』など、日本を象徴するような曲を留学生と一緒に踊ります。」

通常の練習は先輩が中心となって振りを教え、月に2,3回ある先生の練習では細かい表現を修正してもらったり、意味を教えていただいたりしている。

2、3年と続けている人は、「祇園小唄」や「藤音頭」などもっとたくさんの曲を学んでいく。練習時間が限られるため、複数人で練習することが多いそうで、発表会では学年ごとに踊りを披露するそうだ。

指導者の藤間毬宝先生は、どんな方?

藤間毬宝先生と、宝のみなさん

「慶應義塾大学 日本舞踊研究会 宝」の指導者、藤間毬宝(まりほう)先生は、故・市川團十郎氏や片岡仁左衛門氏、文楽の人間国宝吉田蓑助氏との共演経験など数多くの実績をお持ちで、日本舞踊の指導歴も60年以上のベテラン先生だ。ではそのお人柄は?

「すごく優しくて、留学生も日本人の自分の子供のようにかわいがってくださいます。『宝』が、毬宝先生を中心とした家族のような雰囲気です。

ちょっと難しい演目も、振りを分かりやすく踊りやすいように変えて教えてくださったり。逆に、あえて、最初から絶対できないような踊りを教えてもらえたりする。そうやって、日本舞踊の面白さを伝えてくださいます。

「最初から絶対できないような踊り」とは、例えば昨年の三田祭で上級生が発表した「傀儡師(かいらいし)」のことだ。

傀儡師、練習風景

清元「傀儡師」は通常演じると20分を越え、大曲の部類に入る。もちろん、日本舞踊を始めたばかりの初心者が気軽に踊れる曲ではない。毬宝先生は、そのような曲にも触れる機会をと、曲を学生でも踊れるように、振りや長さをアレンジしてくれたのだそうだ。

大学生は忙しい。勉強はもちろん、インターンシップが普及したことで、就職活動も実質、通年化の流れになっている。学生がサークル活動に打ち込める時間も年々少なくならざるを得ないかもしれない。

そんな中でも、格式のある日本舞踊を柔軟にアレンジし、限られた時間の中で少しでも学生に良いものに触れてほしい、という先生の心意気を感じるエピソードだ。

大学で日本舞踊を学ぶ(楽しむ)意味は?

「いろんな日本文化があり、大学サークルでも茶道等もある中、身体一つででき、本格的な着付けも覚えることができるのが日本舞踊の魅力です。」

「今後、海外に行く人もいます。日本人として日本文化を知っていて、他の物と違って、道具がなくても、日本舞踊なら披露して見せられます。」

「世界に出ても、日本人として自国の文化を知って、発信することができます。」

国際交流に力を入れている「宝」ならではの答えだと強く感じた。

「宝」は将来、世界で活躍する学生たちにとって、日本文化を学び、さまざまな国の学生と交流し、みずからのグローバルアイデンティティを形成する場となっているのだと思う。まだ創立2年。これからの「宝」がどう発展していくのか、とても楽しみだ。