長唄「黒髪(くろかみ)」歌詞と解説
日本舞踊、上方舞(地唄舞)で有名な、「黒髪」の歌詞と解説です。
長唄「黒髪」の解説
時政の娘・辰姫
愛しい恋人を思って、一人寝の寂しさを募らせる女性の心を描いた歌です。
元の意味はそういう歌詞なのですが、この曲には別の場面で有名になったエピソードがあります。天明四年(1784年)中村座で初演された歌舞伎「大商蛭子島(おおあきないひるがこじま)」に使われたことで有名になり、地唄舞、日本舞踊へ移されます。
「大商蛭子島」は、源頼朝による源氏再興のストーリーを描いた作品です。伊豆に流された源頼朝は、身元引き受け人の伊東祐親(すけちか)の娘・辰姫と恋仲になります。
しかし源氏再興には関東武士の力が必要。源氏復興という悲願を求め続けてきた頼朝の気持ちを慮り、辰姫は自分の気持ちを押し殺して、頼朝に北条時政の娘・北条政子との結婚を進言したのです。
頼朝と政子の初枕を交わす夜、ひとり髪を梳きながら嫉妬と苦悩に苛まれる辰姫。その場面のメリヤスとして使われた「黒髪」は、艶歌の代表として現代に受け継がれることとなりました。
長唄「黒髪」の歌詞
黒髪の 結ぼれたる思いには
溶けて寝た夜の枕とて ひとり寝る夜の仇枕
袖は片敷く妻じゃというて
愚痴な女子の心も知らず しんと更けたる鐘の声
昨夜の夢のけさ覚めて 床し懐かしやるせなや
積もると知らで 積もる白雪
参考リンク