奈良女子大学(公式HPより)
なんと、今年生まれたばかりの新しい大学日本舞踊サークルがある。
それが「奈良女子大学 日本舞踊サークル さほ姫の会」だ。同じ日本舞踊教室に通う二人の奈良女子大生が「大学で本物に学ぶ機会を」と今年発足させた。
今日はそのお二人に、サークル設立の経緯や、これからの展望を伺った。
サークルの創立者のお二人にお話を伺いました
木村望美さん 文学部4回生 滋賀県出身(左)/小浦方花歩さん 理学部4回生 新潟県出身(右)
奈良女子大学 日本舞踊サークル さほ姫の会
創部:2020年
サークルの目的:奈良は古来より様々な文化が息づく土地。その文化の一端に触れる体験をサークル活動の場で行い、更なる深みへと誘う。
活動場所:奈良女子大学 学内施設
活動日時:月4~5回
人数:5人
男女比:女性のみ
プロの指導あり(山村流 山村若女(わかめ)、山村若瑞(わかみずき))先生)
*2020年6月取材時
2020年6月時点、新型コロナウィルスの影響で、使用する予定だった大学施設の使用許可は出ていない。しかし「奈良女子大学 日本舞踊サークル さほ姫の会」にはすでに5人の部員がいる。創立者の2人と新入部員3人の合わせて5人。すでに、Googleのサービス「Meet」を使って、浴衣の着付けの練習などを行っているという。
5人はなんと一度も、直接顔を合わせていない。授業もオンラインになり、大学へ行くこともままならないからだという(取材時)。創立者の二人は気が気ではなかっただろうし、立ち上げたばかりの新歓で、急にコロナによりWEB対応を迫られて悩みもたくさんあっただろう。
見やすいチラシや資料は、デザインを勉強している小浦方さんの手作りだ(文章は木村さん)
新型コロナウィルスの影響をまともに受けながらも、立派に新しい部員を迎えてスタートした「奈良女子大学 日本舞踊サークル さほ姫の会」だが、発足のきっかけは、文学部4回生の木村望美さんが、通っていた日本舞踊教室に、友人の小浦方花歩さんを誘ったことから始まる。
木村さんはもともと日本文化全般に興味があり、プライベートで参加したイベントで知り合ったのがきっかけで、上方舞の山村若女(わかめ)先生の教室へ通い始める。
友人の小浦方さんはデザインに興味があり、日本の美について関心があった。そこへ友人の木村さんから日本舞踊に誘われ、そのまま同じ教室へ通うようになる。
二人とも日本舞踊歴は2年に満たないが、日本舞踊への気持ちは熱い。
「日本文化に触れる機会が少ない中で、大学のサークルがひとつのきっかけになれば」
との思いから、日本舞踊団体の設立を決意。2020年にサークル「奈良女子大学 日本舞踊サークル さほ姫の会」を創設した。
サークルのキャラクター「さほ姫ちゃん」
「さほ姫」とは、春をつかさどる若々しい女神で奈良の佐保山の神とされる。秋をつかさどる竜田姫と並び称される存在で、和歌など様々な古典文学に登場する。
指導者の山村若女(わかめ)、若瑞(わかみずき)先生の言葉
山村若女先生(右)
「日本文化・芸術の発祥、揺籃(ようらん)の地、古都奈良に建つ奈良女子大学に日本舞踊サークルが誕生したことは、私の長い間の念願でもあり、大変喜んでいます。
美の女神『佐保(さほ)姫』は、日本の美の象徴『桜』の化身と言われ、奈良女のキャンパスはその佐保姫の住む佐保山に見守られ、大学のあるきたまちには数多くの歴史が点在し、新古共存した魅力的な町です。
将来の日本を背負う奈良女の一人でも多くの方に、山村流の舞を通して日本古来受け継がれてきた美意識を体感しながら、心豊かに楽しんでもらいたいです。
今後の『さほ姫』の発展を楽しみにしています。」
山村若瑞先生(左)
「奈良女子大学に日本舞踊サークルが誕生し、またその講師を務めさせていただけることを心より嬉しく思います。
さほ姫の会を通じて1人でも多くの若い世代の方へ上方舞の魅力や日本独自の美意識を伝えていけるように指導し共に楽しみたいと思います。」
お二人にとって、日本舞踊の魅力は?
サークルの代表である木村さんは、大学生で日本舞踊を始める意義として、「第一歩として始めやすいこと」そして、「誰でも、一人の表現者になれること」を挙げてくれた。
誰でも「一人の表現者」に
「日本舞踊は激しい運動を求められるものではないので、誰でも一人の表現者として舞台に立てるのが魅力的かなと思います。
私が表現するのが楽しかった舞いは、小浦方さんと舞った、『浪花の四季』という曲です。大阪の春夏秋冬を描いたもので、当て振りが多くて、賑やかな町の雰囲気とか、江戸時代の大阪へタイムスリップしたような気分で舞えたのが楽しかったです。」
*当て振り リズムに合わせた抽象的な振りではなく、詞の言葉をそのままパントマイムのように表現する振りのこと。例えば「酒」の詞で杯を飲むしぐさをしたり、「山」という詞で手で山の形を作るなど。
最小限に美を表現
小浦方さんは、「ミニマムかつ最大限に美を表現するところ」に日本舞踊の魅力があると語る。それは俳句などにも見られ、他の日本文化に通ずる共有点だという。もともと、独学しているデザインへの関心から、「日本の美」に興味があった小浦方さんは日本の美学に触れられる日本舞踊に興味を持ったという。
「余計なことをせずに、最大限に美しく見せようとする考え方に惹かれます。」
*日本舞踊の中でも「さほ姫の会」が師事する山村流の上方舞は「座敷舞」とも言われるように、より小さなスペース(畳半帖、とも)で表現することに特徴がある。
キャンパスで練習できる日が待ち遠しい。(奈良女子大学公式HPより)
お客様におもてなしとして舞を披露したい
サークルの今年の目標を伺うと、
「まずは基礎を舞えるようになること。そして最終的には、上方舞はお客様に向けて舞うものだから、お客様におもてなしとして舞うのが完成形かな、と思っています。」
「浴衣が着れるようになると、こんどは着物が着れるようになります。奈良は奈良町っていう古い町並みがたくさんあるので、みんなで着物で歴史探訪などもしてみたいです。」
創立メンバーは二人ながら、具体的な目標に向かう木村さんと小浦方さんの歩みは着実だ。
SNSアカウントで情報発信しつつ、そこで積極的に質問を集めて、サークル紹介資料に盛り込む、資料もデザインがしっかりした本格的なものだ。だからこそ、オンラインのみの新歓ではありながら、新入部員が3名加わるという結果につながっている。二人とも日本舞踊経験者だという経験値もあるだろうが、手を抜けない理由は他にもある。
説明資料のQ&Aは、SNSであらかじめ収集した質問を元にしている
小浦方さんはともに4回生。つまり来年の2021年の3月に卒業してしまうのだ。
しかし、サークル設立からここまで、コロナという困難の中でも着実に歩を進めてきた「さほ姫の会」。加わった新しいメンバーとともに、きっと新しい文化を築いていってくれることだろう。
最後にサークルの魅力を聞いた。
「奈良女子大学で一番新しいサークルで、なにもかもこれからなので、みんなで決めて、発展していけることだと思います。」
歴史ある古都・奈良で誕生した日本舞踊サークル「さほ姫の会」。逆境にめげず、新しい歴史を作っていってほしい。