長唄「汐汲(しおくみ)」の歌詞と解説

長唄「汐汲(しおくみ)」の歌詞と解説

日本舞踊で人気の「汐汲(しおくみ)」の歌詞と解説です。

「汐汲」の解説

秋、月の美しい夜、伝説上の海女、松風がかつて恋をした在原行平との思い出を偲んで舞を舞うという内容です。

元は「松風・村雨物語」とも呼べる伝説がベースになっています。

天皇の勘気を蒙り須磨へ流された在原行平(在原業平の兄)は、汐汲(塩を作るために海水を汲むこと)にでかけていた村の娘「もしほ」と「こふじ」に出会います。行平は二人に松風と村雨と名前をつけ恋愛関係になりますが、やがて天皇から許され都に帰ることになり、別れの際に松の木に、自分の烏帽子と狩衣を残して去って行きました。

室町時代に能の大成者、観阿弥と世阿弥はこの物語を元に「松風」という能楽作品を作りました。

長唄「汐汲」はこの「松風」を元にし、文化8年(1811年)、江戸三座の一つ市村座にて、三代目坂東三津五郎によって初演されました。

なお、行平が二人との離別の際に詠んだとされる和歌が古今和歌集に残っています。みなさんも聞いたことがあるのではないでしょうか。

立ち別れ いなばの山の 峰に生ふる まつとし聞かば いま帰り来む

「汐汲」の歌詞

松一木かわらぬ色のしるしとて うつし絵島の浦風に

 

ゆかしき つてをしら波の よする渚に世をおくる

如何にこの身が海士じゃと云うて 辛気しんきに袖濡れて

いつか嬉しき逢瀬もと 君には誰かつげのくし

さし来る潮を汲もうよ

汲み別けて 見れば月こそ桶にあり

是にも月の入りたるや

月は一つ 影は二つ三つ見られつも

雲の上此処は鳴尾の松影に 月を荷うて

 

見渡せば面白や なれても須磨の夕まぐれ

漁る船のやつしつし 波をけたてて友呼び交わす

浜千鳥の散りやちりちり 散りやちりちり

ちりちりぱっと 鹽屋の煙さえ

立名いとわで 三年はこごに 須磨の浦わの松の雪平立ち帰りこば

我も小陰にいざ立ちよりて 礒馴松のなつかしや

遺物こそ 今は仇なれ見初めてそめて

 

逢うた其の時や つい転び寝の帯も解いでそれなりに

二人が裾へ狩衣を 掛けてぞ頼む睦言に

 

可愛がらすの何じややら 泣いて別りよか

笑うて待つとか待たば こんとの約束を

忘るる暇はないわいな

それから深う云かわしまの 水も漏らさぬ中々は

 

濡れによる身は傘さして御座んせ 人目せきがさ何時あうがさと

ほんに指折り其の日からかさ まつに長柄の辛気らしそれそれ

気を紅葉傘 白張りの殿子に操たてがさの 相合傘の末かけて

誓文真実つまおりがさと云われたら 思いも開く花傘しおらしや

 

いとま申して帰る波の音の

須磨の浦かけて 村雨と聞きしも今朝見れば

松風ばかりや残るらん

松風の松風の 噂は世々に残るらん

参考リンク

汐汲 – Wikipedia

松風・村雨 – Wikipedia

松風村雨堂 – Wikipedia

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