たんす屋はなくなるわけではない。倒産ではない「民事再生」ってなに?
着物業界に衝撃的なニュースが流れました。日本舞踊をしている人も、一度は耳にしたり、利用している人も多いと思われる、リサイクル着物屋「たんす屋」を有する業界大手の東京山喜株式会社が民事再生手続きに入ったというニュースです。
「新型コロナ倒産」などと見出しをつけられていたりしていますが、実は東京山喜は潰れてしまうわけではありません。民事再生とは事業を継続しながら経営再建や債権整理を進めていく手続きです。
会社が潰れることと誤解されがちな「民事再生」と、「たんす屋」の今後についてまとめました。
ヤマノホールディングスとともに収益改善、相乗効果を模索している
「『東京山喜』が民事再生」というニュースの翌日、和装事業を展開するヤマノホールディングス(JASDAQ上場)がニュースリリースを発表しました。
東京山喜株式会社の民事再生スポンサーに関する 基本合意書締結のお知らせ
https://global-assets.irdirect.jp/pdf/tdnet/batch/140120200424498721.pdf
東京山喜は今後、ヤマノホールディングスとともに事業再生、もしくはリサイクル着物事業を譲渡していく見込みのようです。
倒産という法律用語はない
倒産とは、一般的に、資産を使いつくして会社がつぶれる、というニュアンスだと思いますが、そもそも「倒産」という法律的な定義はありません。
では今回の「民事再生」とはなんでしょうか。
民事再生とは
民事再生とは、「民事再生法」に基づく裁判手続きです。
自力で経営再建できない状況に陥った法人が、債権者やその他スポンサーなどの協力の元、経営の再建や、債務の整理を行うことです。あくまで経営の主導は現経営者です。
民事再生とは何をするのか
民事再生の過程では以下のようなことが行われます。
再建計画の立案・実行
事業を再建してく計画を立て実行します。
債務の圧縮
債権者(お金を借りている先、銀行など)に債権(借金)の減額、返済の猶予などの交渉をします。
資金調達
民事再生に入ると金融機関からの借り入れが出来なくなります。金融機関以外のスポンサーの資金協力を受けて再建計画を実行します。
事業の譲渡
場合によっては、既存の事業を別会社に売却したりすることもあります。
主に上記の中から複数、もしくは全部を実行していくことになります。
破産・民事再生・会社更生
民事再生と似たものに、破産、会社更生があります。それぞれについて簡単に説明します。
破産
破産はいってしまえば、すべて清算してしまうこと。
資産、負債ともにすべて清算され、会社自体もなくなります。
会社更生
会社更生と民事再生はかなり似ています。大きな違いは、会社更生は経営権が現経営者の手から離れること、大企業に適用されることが多いことです。
さらに詳しくは。参考記事
民事再生と破産との違い。あなたはどの手続を選択すべきか。 | 法人破産(倒産)・リスケジュール・企業再生に強い大阪の弁護士法人
JALは民事再生より難しい会社更生から復活した
最近では、2010年に会社更生法が適用されたJALが、2012年に再上場したことが注目されました。また、同じ航空業界でもスカイマークは2015年に民事再生に入り、2016年には債務の弁済を終えました。
たんす屋の今後に注目
ヤマノホールディングスのリリースによると、東京山喜の「事業の全部又は一部の譲受けの検討」、という記述があります。今後、ヤマノホールディングスが事業を継承する可能性もありますし、民事再生スポンサーとして一緒に経営再建を目座していくのかもしれません。たんす屋さんの今後に注目です。

