長唄の本調子、二上り、三下りとは?三味線の調子について解説!
日本舞踊で長唄を踊るとき、歌詞を見ると、「本調子」「二上り」「三下り」などと書いてあるのをご覧になったことはありませんか?今日はこれらについて解説します。
そもそも「本調子」「二上り」「三下り」ってなに?
「本調子(ほんちょうし)」「二上り(にあがり)」「三下り(さんさがり)」とは、三味線の調弦(ちょうげん。チューニング)の種類のことを言います。
ギターをやったことがある人はピンと来るのではないでしょうか。ギターや三味線、バイオリンなどの弦楽器は、いろんな高さの音を出すために、異なる太さの弦を複数張り、さらに指で抑える場所を変えることでさまざまな音を出すことができます。
ギターなら6本ですし、三味線なら3本です。演奏する曲に合わせてそれぞれの弦の張り方(=どの高さの音を出すか)を変えることを「調弦」と言います。三味線曲では曲の途中で調弦を変えることがよくあります(これを『移調』といいます)。歌詞の途中で(二上り)とか(三下り)などと書いてあるのを見たことはありませんか?それは、その箇所で調弦を変えている、ということなのです。
本調子(ほんちょうし)とは?
本調子は、三味線の最も基本となる調子(調弦)です。「一の糸と二の糸の間が完全4度」、「二と三の糸の間が完全5度」、「一の糸と三の糸の間が完全8度」になります(4度とか5度とかいうのは、音と音との距離を表します。例えばドとソの音は5度離れています)。
二上り(にあがり)とは?
二上りは「一の糸と二の糸の間が完全5度」、「二と三の糸の間が完全4度」という調弦です。本調子の調弦から、二の糸を全1度あげて作るため、「二上り」と呼ばれます。
三下り(さんさがり)とは?
本調子の三の糸を長二度さげた調弦です。開放弦間の音程はいずれも完全4度となります。三の糸を下げるので「三下り」と呼ばれます。
調子はドレミで表せないの?
さて、ここでひとつ疑問に思いませんか?洋楽ですと、ハ長調はドから始まるとか、調律ごとにどの音階が割り当てられるか決まっています。つまり、絶対的な音が決まっています。三味線の調子では絶対的な音は、決まっていないのでしょうか?
本調子は「一の糸と二の糸の間が完全4度」、「二と三の糸の間が完全5度」、「一の糸と三の糸の間が完全8度」と先ほど紹介しました。「一の糸はド」とか決まっていないのでしょうか?実は決まっていないんです。そうしたら、曲を演奏するとき、特に複数人で合奏する時はどうやって合わせるのでしょうか?
基準音を「律名(りつめい)で決めている
三味線を演奏する時は、調子と一緒に、その調子の基音(きおん)=基準となる音を絶対音で決めます。三味線の世界では絶対音は「ドレミファソラシド」や「CDEFGHBA」ではなく「律音」といい、オクターブを12個に分けた「十二律」を使います。演奏する時は、「この本調子の曲は、基音は『壱越(いちこつ。Dにあたる音)』でやりましょう」という感じですね。
十二律と西洋音階の対応はこちら。
- 壱越(いちこつ) – D
- 断金(たんぎん) – D♯
- 平調(ひょうじょう) – E
- 勝絶(しょうぜつ) – F
- 下無(しもむ) – F♯
- 双調(そうじょう) – G
- 鳧鐘(ふしょう) – G♯
- 黄鐘(おうしき) – A
- 鸞鏡(らんけい) – A♯
- 盤渉(ばんしき) – B
- 神仙(しんせん) – C
- 上無(かみむ) – C♯
三味線の「本調子」「二上り」「三下り」についてまとめてみました。ご参考になれば幸いです!

