【取材】「伝統のその先」を目指す南国生まれの舞踊家~西川壱弥(いちや)~東京都足立区

【取材】「伝統のその先」を目指す南国生まれの舞踊家~西川壱弥(いちや)~東京都足立区

取材:梅澤

東京で活躍されている西川壱弥(いちや)さんにインタビューさせていただきました。

他の芸術家さんとも積極的にコラボされており、洋舞にも挑戦し参加作品が国際的な受賞歴もある壱弥さん。SNSも駆使してInstagramでは多くのフォロワーさんがいらっしゃる、まさに「現代の舞踊家」という印象を受けます。しかしそのベースには三代続く舞踊家の家系で培われたゆるぎない「古典」の基礎がありました。

コロナ禍の取り組み、「伝統のその先へ」というご自身のテーマの元、これから挑戦したいことなど詳しくお伺いしました。

西川壱弥(にしかわいちや)プロフィール

沖縄県出身 西川流師範
二代目・西川扇一郎(父)に師事
3歳で初舞台、5歳で歌舞伎座出演
日本舞踊教室「朱里(あかり)の会」主宰
門真国際映画祭2020 ダンス映像部門にて「YUGAFU project」参加作品が優秀作品賞・最優秀女性ダンサー賞

西川壱弥さんのご出身は沖縄県。

三代続く舞踊家の家に生まれ、現在は東京で日本舞踊教室「朱里(あかり)の会」を主宰、個人でも舞踊家として活躍されています。

祖父の代から繋いできた「古典」と「コラボ」との系譜

壱弥さんの活動で目を引くのは、異業界とのコラボレーションです。


「ショカブシャ」書道家:龍芳、華道家:栖佳、舞踊家:壱弥、写真家:hitomi の4人によるアジア初のコラボ作品

壱弥さんはこれまで、シンガーソングライターとのコラボで楽曲振付・上演、書道、洋舞など様々なジャンルとコラボしてきました。残念ながらコロナで延期になっていますが、「文楽」とのコラボや、今後は落語とのコラボレーションも検討しているといいます。

ダンスアートフィルム「RIVER」。門真国際映画祭2020 ダンス映像部門にて優秀作品賞と最優秀女性ダンサー賞をダブル受賞(舞踊家Danzatakara. さんの舞踊作品『yugafuプロジェクト』)

そのコラボのルーツは意外にも、壱弥さんのおじいさまにあると言います。

沖縄に日本舞踊を広めた壱弥さんの
祖父 初代・西川扇一郎

壱弥さんのおじいさまは奄美大島のご出身です。戦後、人々に楽しんでもらえるものを、と沖縄で芸能一座を立ち上げます。

日本舞踊に興味を持たれると東京へ渡り、十世宗家・西川扇藏氏に師事。以降、「初代・西川扇一郎」としてご活躍され、沖縄で日本舞踊を広めた第一人者としていまも語り継がれています。

 

(西川壱弥、以下、壱弥)祖父が戦後、沖縄の人に楽しんでもらいたい、元気づけたいという想いで、日本舞踊以外の踊りもたくさんやってたんですよ。洋舞、タップダンス、インド舞踊、ジャズダンス、モダンバレエ、いろいろやってたみたいで。

戦後すぐに創作活動をし、数々の受賞作品を残し、父も古典舞踊のみならず創作活動で数々受賞しております。

ですので、小さい頃から創作に触れる、日本舞踊以外の舞踊家さんと仲良くさせていただいたいて、コラボレーションするというのが、とっても自然だったんですよね。

自分のスタイルを作るためにも「じゃないジャンル」へ挑戦し続ける

(壱弥)「日本舞踊じゃないジャンル」へ挑戦していくっていうことが、『祖父から受け継いだDNA』だと思うんです。それが、自分のスタイルを作っていくためにも必要だなって思って。」

 

一方で、違うジャンルの要素を取り入れたダンスをするときでも、必ず、手の動きや見る角度など、日本舞踊の要素を入れるのがこだわりだそうです。

 

(壱弥)「コンテンポラリーダンスで自由だったとしても、日本舞踊という要素を入れるようにしています。」

 

いろんなジャンルへ挑戦する壱弥さんだが、流儀の看板を背負い、日本舞踊家として品格を持ち、その道から外れないということは常に意識しているのだそう。そこには自分が古典で育ってきたという自覚と、先達への強いリスペクトがあります。

褒められたことがない

(壱弥)「私は、ゴリゴリの古典で育ってきてまして(笑)」

 

真新しく目を引く活動をたくさんされている壱弥さんですが、舞踊の基礎はゆるぎない「古典」で出来ています。

 

(壱弥)「一度も褒められたことがないんですよ。」

 

と、ご本人が仰るように、三代続く舞踊一家で厳しく育てられてきました。古典作品に対するこだわりを伺うと、

 

(壱弥)「古典は『いかに役になれるか』だと言います。ちょっと役者さんたちに近い感覚だと思います。

演目で台詞があるものだと、その役、台詞と舞踊が入ってきます。同じ台詞でも、役によって言い方が全然違う。そして台詞の言い回し一つとっても、先輩たちが何百年もやってきたもの。

そこは崩さずにやる、ということに気を付けています。

好きな演目・心に残る演目

「THE 古典!」という作品が好きです。
名披露目での「櫓のお七」や、16歳で親子で踊った連獅子は印象深かったですね。

五歳の時、歌舞伎座デビュー。演目は「粟餅」七人立。左が壱弥さん、真ん中がお父様、右は姉の壱花さん、角兵衛獅子は本来出ませんが、姉妹のためにお父様が出番を作ってくれたのだそう。

名披露目の時に踊った「櫓のお七」

歌舞伎座にて、親子で連獅子

テーマは「伝統のその先へ」

古典舞踊と新しい舞踊が共存している、壱弥さんの活動テーマは「伝統のその先へ」

 

(壱弥)「先輩がたが残してくださった伝統芸能、郷土芸能もそうですが、先輩たちがどんな時代も乗り越えてやってきたものを、いまやっている。

私が今生きている時代の中で、そんな日本舞踊と向き合うとなったときに、あえて大きな旗を掲げて、自分を奮い立たせるために『伝統のその先へ』というテーマがいいな、と思いました。」

 

その考え方は、いま世界が大きな影響を受けている、新型コロナウィルスへの向き合い方にも表れています。

コロナにどう向き合ったか?

オンラインの日本舞踊体験も開催

新型コロナウィルスの影響で、今年の舞台はすべてなくなったそうなのですが、壱弥さんは「今できることにベストを尽くせばいい」と、前向きに捉えていらっしゃいました。

 

(壱弥)「『Withコロナ』、その中でどういう活動をして後世に残すのか、ということが、いまを生きている私たちにかかっています。

コロナを乗りこえよう、というよりは、その中で希望を見つけて次にバトンを渡していくぞ!という気持ちです。」

 

その具体的に壱弥さんが取り組まれていることとは。

Instagramで意外なことを発見?

Instagramでは着物の装いの他、踊りの動画なども発信している

SNSでメインに活用しているのはInstagram。着物の装いの写真や、インスタライブというリアルタイムでの動画配信などをされています。

インスタライブではリアルな自分を見せることで、ファンが増えたと言います。

 

(壱弥)「最初は、世間の日本舞踊のイメージに合わせようとしていたところがあって。

でもライブで話すと、人となりがリアルに伝わるので、フォロワーさんには「壱弥さんって、もっとクールビューティーな方なのかと思ってました」って言われたりして(笑)

でもそのことで、逆に親しみを持ってもらって、フォロワーさんが増えたりしました。

きっかけが『私』で、ここからディープな世界へ入っていただく、という道が作れたかなと思います。」

 

「コロナだからこそのチャレンジ」として、オンラインのお稽古で体験会を実施されています。

SNSもオンラインも、共通して感じた壱弥さんのメッセージは、「前までのやり方は通用しない。今の時代で生きていく。」ということ。

しかし、決して悲観的ではなく、あくまでもポジティブに取り組まれている姿が印象的でした。

日本舞踊を教えるということ

日本舞踊をわかりやすく教える手作り紙芝居

壱弥さんは足立区で「朱里(あかり)の会」という日本舞踊教室を開いています。次に、教えることへの考え方、こだわりを伺いました。

五感をフルに使うことが絶対必要

(壱弥)アレ?日本舞踊のお稽古に来たんだよね?っていうお稽古をしています(笑)

例えば、エネルギーや宇宙の話をしたりします。私は、沖縄出身ということもあって、目に見えない世界と通ずるところがあるんです。

日本舞踊は五感をフルに使ってやらなきゃ絶対できないんですよ。

日本舞踊はいわば、江戸時代にタイムスリップするわけなので、そのイメージング力も必要です。

だから、自分に集中する、ってどういうこと?とか、目に見えない相手を見えるようにするために、どう感じて見せるか、とか。

そういうことを追求して、勉強していったらこういうスタイルになったんです(笑)」

 

独特の稽古スタイルに聞こえますが、それだけ教え方の引き出しが多いということでもあります。

実際に、日本舞踊の先生にとって引き出しの多さは必要なことだとおっしゃいます。

 

(壱弥)「舞台を見て、この先生に習いたい、って思ってもらったらそれがベストだと思うんですが。

きっかけってそこだけじゃないので、どこまで自分の引き出しがあるか、生徒さんが来た時、楽しめる空気感・世界観をどこまで作れるか、それは先生の責任だと感じています。

興味を持たれなければ、『日本舞踊とは』までもいかないじゃないですか。

 

先生の日本舞踊を押し付けるのではなく、教わる方の気持ちにも寄り添う。それは子どもたちを教える時も同じです。

 

(壱弥)「今の子たちって・・・先生と生徒の境目がないんですよ。フレンドリーというか。
だから厳しくするところは厳しくするんですけど、子どもはとにかく楽しく、「来週お稽古ないの寂しい!」って言ってもらえるとガッツポーズが出ます。(笑)

あとは、お稽古終わったあとにノートに今日の反省と一緒、好きなシールを貼ってもらったり、楽しく、ほんわかした雰囲気づくりをするようにしています。」

これから挑戦してみたいことは?

(壱弥)「いろんなことに挑戦したいんです。踊りだけじゃなくて、日舞とは関係ないジャンル、ロックバンドとかともコラボしてみたいし、壱弥、というものを見て、『面白いな』と思ってくれた人と、いろいろやりたいですね。

日本舞踊で遊んでくれる方、募集!(笑)

私の中で、『守破離』をとても大切に考えていますので、そうした活動の中で日本舞踊家としても独自の芸を磨いていきたいです。

「Christmas Show & Party 月世界へようこそ(睦静紀社中)」ゲスト出演 Photo:高橋とんこ

オンラインでのインタビューでしたが、終始、笑顔で楽しくお話しいただきました。ありがとうございます。

舞踊家としても、先生としても、今後ますますの活躍が期待される壱弥さんに、これからも注目です!

西川壱弥さんのSNSアカウントはこちら

ICHIYA Instagram @ichiya_0038

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