日本舞踊に関するお困りごとを送る        お問い合わせ
流派から干されるのでは?と怖いです

流派から干されるのでは?と怖いです

俺の日本舞踊では読者のみなさんからお悩みやご質問を募集しています。この記事ではそのご質問に対する回答をお届けします。

【お悩み】
普段付き合いのある2,30代の方によく「ライブイベントなどで踊ってみたら?」と言われます。一般の方は生で日本舞踊を見たことがない人も多く、昨今のジャパンカルチャー全般、興味がある方も多いようです。
私は流派に所属していることになっているので、営利的にイベント出演などしてはいけないのでは?と思いオフィシャルでない音楽イベントなどの出演はしたことがありません。
若者にもっと日舞の魅力を知ってほしいと思っている反面、伝統ある日本芸能ということもあり、流派から干される?のでは、と怖いです。
また、実際にそういったご活動をされている方はいるのでしょうか?
師範に相談するのも難しいですし、同年代の方で日舞をされてる方がいないので梅澤さんに送らせていただきました。
長文になり申し訳ありません。ぜひご意見お聞かせください。

回答|交渉材料としての事例を探しているなら、あまり得策ではなく、正面突破が良い。外堀から埋める道も

質問文には明記されていませんが、あなたは師匠に相談するのに交渉材料がほしいのだと認識しました。相談せずにライブ出演して、不利益があるかもしれないリスクはあなたは承知している。しかし、ノープランで、師匠に「出たい」と言って、ダメだと言われたら、もう出演の道がなくなる。「同年代の方で日舞をされてる方がいない」「そういったご活動をされている方はいるのでしょうか?」というのは、「自分と同じような状況で流派の行事以外で出演している人がいる」という事実をもって、師匠に相談しようということなのでしょう。

その気持ちはわかりますが、もしこれを武器に相談しようとしているなら、あまり得策ではないと思います。別のお稽古場の例を持ち出されても、それはあくまで、よそのことなのであって、そこの流派、またはお稽古場で決めたこと。あなたのお師匠さんは許可してくれるかもしれませんが、逆に気持ちを傷つけてしまう可能性もあります。今の状態では「相談が難しい」とおっしゃっているので、師匠はおそらく「ライブ」的なものには良い印象がないんですよね。すでに許可がもらえる確率は低いと予想されていますから、昔かたぎのお師匠さんなのでしょう。そういう方ならなおさら、他の稽古場の話を引き合いに出されて、良い気持ちはしないと思います。

交渉するなら、これまでの常識とは違うかもしれないが、ライブに出ることで若い人に日本舞踊を知ってもらえるし、流派にも日本舞踊界にも、すごくいい影響がある、もしくは、自分はそういう場で成長したい、というロジックがより有効だと思います。どうしても出たい理由、出なければならない理由を堂々と説得して交渉ください。事例は、あくまでタイミングを見て、使った方が良ければ出すという隠し玉として持つべきです。

外部での活動は、条件付き(流派の名前は使わず、別名や本名でならOK)で許可してもらう例もあり、「どうすれば実現できるのか」の条件次第で、相談の余地は意外にあると思います。いきなり師匠ではなく、同門の仲のよい人に相談する、共感してもらう、相談の仕方を相談する、という方法で、外堀から埋める方法もあります。

でも、もし断られたら。どのれくらい出演活動に興味がありますか?いますぐ出演活動、あなたの言う「若者にもっと日舞の魅力を知ってほしい」気持ちが本当に抑えきれないなら、そういう活動を許してくれる師匠を探すのもアリだと思います。でも人からすすめられて迷っているくらいなので、そこまでではきっとないですよね。

ともかく、日本舞踊に限らず、筋を通すことは重要ですから、師匠に、「どう相談するとうまくいくか」という方向で考えてみてください。参考になれば幸いです。

補足|外部での活動基準の整理は誰の役割か

さて、後半は、なぜこういう相談が来るのかということについて、少し考えたいと思います。

外部での活動について、相談しても断られるかもしれないという不安は理解できます。

しかし「師範に相談するのも難しい」だけでなく、「流派から干される」のような強い表現がなぜ使われるのか。

相談者さんが、経験の浅さから相談の言葉を持たないがために、過度に恐れを持ってしまっているのか、もしくは、日本舞踊のある種の閉鎖性や非民主性が表れているのか?もしそうだとすると、今回は、そのマイナス面に注目すべきでしょう。

この相談者さんが思っているように「もっと日舞の魅力を知ってほしい」ということはステキなことです。しかし、閉鎖性や非民主性によって、その前向きな活動が抑制されるのは、場合によってはマイナスです。日本舞踊のPRのチャンスを逃しているからです。このような方が活動を見通せるように、外部での活動基準などを整理する役割が求めらているのではないでしょうか。私は、もし必要とされるなら、流派がおおまかなガイドラインを引いて、個別には師匠が判断して許可、というのが良いと思っています。許可制にするにしろ、その基準が明確になり、それに向かってより努力して、日本舞踊をその外側の世界で披露する人が増えれば、日本舞踊の認知が広がり、流派にとってもプラスが大きくなるはずです。