日本舞踊で元気に!心豊かに~葉月雛丸(はづきひなまる)・神奈川県伊勢原市~
神奈川県伊勢原市で葉月流の二代目家元を務められている、葉月雛丸(はづきひなまる)さんにお話を伺いました。
葉月流を作られた、宗家・葉月香寿凰(かずおう)さんから2019年に家元を継承し、お弟子さんの指導、学校指導など地元を中心に幅広く活動されています。
他にもラジオ出演、ライブハウスでの古典、創作舞踊の公演、話題の音声SNS「clubhouse(クラブハウス)」でも発信を行うなど、日本舞踊を広く知ってもらうための活動にも積極的です。
日本文化を通じて豊かな心の大切さを伝えていきたいと話す雛丸さん。生い立ち、家元としての決意、活動のこだわり、これからの目標などを伺いました。
葉月 雛丸(はづき ひなまる) プロフィール
葉月流宗家家元である香寿凰(かずおう)の娘として生まれ、1歳4ヶ月で初舞台を踏む、葉月流2代目。
地元神奈川県伊勢原のほか、横浜・東京・関東近県、アメリカなどで日本舞踊を踊る。
歌手のバックダンサー、ホテルなどのショーなどにも出演し、大ホールの他、老人ホーム、病院、神社・寺院、国際交流、アメリカJapaneseフェスティバルにも参加
初舞台は・・・なんと1歳!
うめざわ
雛丸さんが日本舞踊をはじめたきっかけは、やはりお母さまの影響ですか?
葉月 雛丸さん
そうですね。
私、初舞台が1歳4か月のときなんです。
うめざわ
ええっ早い!
葉月 雛丸さん
もちろん一人では踊れませんから、みんなで踊る総踊りの舞台だったんですけど、1歳の私は、その舞台に出たがったらしいんです。で、出してみたら意外と踊りも覚えていたらしいですね。もちろん私の記憶にないですよ(笑)
うめざわ
1歳4か月ならそうですよね!でも、すごい。
覚えている最初の記憶っていつですか?
葉月 雛丸さん
「絵日傘」を踊った3歳の時の舞台ですね。なんで覚えているかっていうと、前日、ストーブのやかんを置くところに手をペタッて置いて、てのひらをヤケドしちゃったんですよ。
熱いから触っちゃだめよって言われてたんですけど、どれくらい熱いんだろう?って気になっちゃったらしいんですよね。
「絵日傘」に、両手のてのひらで傘の柄をはさんで、くるくる回す振りがあるんですけど、それができなくて、なんか変な風にして回したのを覚えています。
人間は全員が日本舞踊をやっていると思っていた!
子供時代の舞台写真
うめざわ
葉月 雛丸さん
子供の頃は、当たり前すぎて、考えたこともなかったですね。
とにかくそんな小さい時からやっているので、歯磨きするのとか、食事するのと同じくらい日本舞踊をするのは当たり前で、なんなら人間は全員、日本舞踊をしていると思っていました。
なので、幼稚園に入ったときに、他の子に「なんのお稽古してるの?」って聞いたら「なにそれ?」って。私も全員日本舞踊してると思ってるから、それをしていないなんて、こっちも「なにそれ?」って(笑)衝撃でしたね。
うめざわ
それでは、日本舞踊を仕事にしよう、と思われたのも、自然な流れなんでしょうか。
流派を継ぐ覚悟を決めたのは、高校生のとき
写真左が宗家・葉月香寿凰(かずおう)さん。右が雛丸さん
葉月 雛丸さん
そうですね。大人になったら踊りの先生になるんだとずっと思ってました。
私が20歳くらいのとき、母が葉月流を創流するタイミングで、母から初めて「この先、踊りを続けていきたいのか」「継ぐ気持ちはあるのか」「どうしていきたいのか」などを聞かれました。
そこであらためて、その年齢なりに真剣に考えて「やります」と答えました。
うめざわ
葉月 雛丸さん
母は花柳流にいたのですが、母がいろいろと自由に挑戦したいことがあって、流派とも相談した結果、自分の流派を作ったほうがやりやすいだろう、ということになって、創流されました。
葉月流は、新舞踊、和風リズム体操、総合行儀作法など、古典舞踊の枠にとらわれない指導、活動を行っている。
和風リズム体操
総合行儀作法から「着付け」「お辞儀の仕方などの基本動作」「日本茶のたしなみ方」。ほかにも指導内容にはテーブルマナー、生け花などがある。
うめざわ
葉月 雛丸さん
宗家が八月生まれなんですよ。八月の和名は「葉月」。漢字にすると末広がり、数字の「8」は横にすると無限大だし、いい意味がいっぱいあります。
時代を経ても、宗家が八月生まれだったんだ、と思い出してももらえる、ということで「葉月流」となりました。
うめざわ
「雛丸」さんのお名前の由来は何ですか?
葉月 雛丸さん
宗家は香寿凰(かずおう)、で「凰」は鳥の「鳳凰」の凰。、跡を継ぐ人だから「雛」なんです。
日本舞踊を通じて心の豊かさを伝えたい
長唄「藤娘」
うめざわ
葉月流の特徴や、雛丸さんが実際にお弟子さんを教えるときに気を付けていることなどを教えてください。
葉月 雛丸さん
葉月流としては「日本文化を尊ぶこと」や「心の豊かさ」を大切にしています。
稽古場には「所作台」がある。
所作台(しょさだい)とは・・・日本舞踊や歌舞伎舞踊など、地舞台の上に敷かれる台。桧の板で作られていて、足のすべりをよくし、足拍子の響きをよくするために使われる。
葉月 雛丸さん
実際のお稽古では「その人がなにをやりたいのか」「なにを学びたいのか」「どうすれば、その人の魅力を引き出せるのか」を心がけています。
葉月 雛丸さん
日本舞踊って、いいところが無数にありますよね。歴史も学べるし、身体を動かして健康にもなるし・・・
すべてを教えようとすると、その人もいっぱいいっぱいになっちゃうので(笑)その人が関心があることはないか、なにをやりたいか、学びたいかを汲み取って、それに合わせた指導をするようにしています。
そして、私のお稽古に来ると元気になる方が多いんですよ!(笑)
うめざわ
雛丸さん、とっても明るいので、こうやってお話ししても、元気いただけますよ(笑)
葉月 雛丸さん
精神的に落ち込んでいる方の症状がよくなったり、実際にあるんです。
まず「身体を動かすこと」がいいでしょうし、日本舞踊のお稽古って、いきなり全部じゃなくて、少しずつ振りを覚えて進んでいくじゃないですか。そうして「小さく達成していくこと」もいいんだと思います。
あと、そういう人って、ずっと考え込んだりしてしまうじゃないですか。でも考えすぎると踊りってできないので、一回そういうことも全部忘れて集中する、そういう時間が、一瞬でも生活の中にあるっていうのがいいのかなと思います。
当たり前すぎて教えられない?
長唄「汐汲(しおくみ)」
うめざわ
教えるようになって、雛丸さんの中で変化したことはありますか?
葉月 雛丸さん
最初、教えられなかったですね。
うめざわ
というと?
葉月 雛丸さん
私にとって踊るのが当たり前すぎて、説明できないんですよ。
例えば、顔の前から手を下に降ろす振りがあったとして、「手が、ここからこの位置に来る」っていうのが、私にとって当たり前、自然の動きすぎて、「どうやったらそうなるんですか?」って聞かれても「自然とそうなる」としか答えられないんです(笑)
葉月 雛丸さん
そこからは日々勉強ですよね。
自然にやっていることにも、決まりがあるということを知っていきましたし、「日本舞踊の基本」を大人になってから理屈づけていきました。
うめざわ
たぶん、大人になってから習う人は逆が多いですよね。まず、動作の名前を覚えて、頭で理解してから身体が動かせる。私はそうです(笑)
雛丸さんは2019年に家元を継がれました。他の流派のことを考えると、家元を継承するというのがずいぶん早いですよね。
猛反対されても・・・若くして家元を継ぐ意味
葉月流の創流20周年公演。
香寿凰さんから雛丸さんへ家元が引き継がれるお披露目も行われた。
葉月 雛丸さん
たしかに家元を継ぐというのは、日本舞踊の世界を見ると早いんですけど、一般の会社に置き換えたら普通なんですよ。
家元を継ぐのは、ある程度早くしておかないと、時代に乗り遅れて葉月流がなくなる、ひいては日本舞踊が・・・と思ったんです。
葉月 雛丸さん
最初に相談した時は・・・猛反対でしたね。
でも逆に、宗家が高齢になってからいきなり渡されるより、まだまだ現役で活動できるときにした方がいいと思ったんです。
宗家は会長、家元は社長なわけじゃないですか。家元が前に立って仕事をして、判断に困る時もある、ひょっとしたら日本舞踊の道に外れるようなことをしそうになるかもしれない。そういう時に、宗家として指摘してもらったり相談できるほうがいい、その方が、葉月流のためにも、ひいては日本文化のためにもいいことだ、と。
葉月 雛丸さん
それを、創流15年目の時に提案して、20周年で家元を継ぎました。
それでも、直前までプレッシャーで不安でしたけどね。やっぱり、ずっと二代目がいいなあって(笑)
でも、襲名の口上の時に覚悟が決まりましたね。
心に残る舞台、若者に古典舞踊がうけた!
2015年にはクラウドファンディングに挑戦。見事、目標を達成しライブハウスでの公演を成功させた
葉月 雛丸さん
若い人に日本舞踊を知ってもらいたいと思って、ライブハウスで古典と創作舞踊を踊ったんです。
うめざわ
クラウドファンディングで資金を集められてた公演ですよね。反響はどうでしたか?
葉月 雛丸さん
意外と、古典のほうがいいという感想が多くて!
創作舞踊のほうが見やすいのかなって思ったら、古典のほうが人気だったので、あ、なんだ、若い人も日本舞踊を見てないだけなんだ、って思いましたね。
うめざわ
見てもらえれば好きになる人も多いということですね。古典舞踊のポテンシャルを感じますね。
清元「玉兎(たまうさぎ)」ライブハウス公演にて
コロナ禍でも・・・発表会がモチベーションに
うめざわ
2020年の活動はいかがでしたか?
葉月 雛丸さん
公演はみんな中止になってしまったんですけど、11月に公民館で発表会をやりました。お弟子さんと家族と後援会の方だけで。
発表が決まったとたん、すっごいお弟子さんのモチベーションが上がりまして。
「今日は納得いくお稽古ができるまで帰りません!」っておっしゃった方もいました(笑)
うめざわ
誰かに見てもらうって、やっぱり日本舞踊では重要ですよね。
子供たちや外国人にも日本文化のすばらしさを
うめざわ
これからやりたいこと、目標などを教えてください。
葉月 雛丸さん
幼稚園の授業で、子供たちに日本舞踊や行儀作法を教えていきたいです。実は、すでに教えている園もあるのですが、コロナで延期になっているところもありますので、これを広げていきたいですね。
また、日本にいる外国人の方、文化がわからなくて生活に困るということも聞いています。外国人の通う学校へ日本文化を教える活動などもしていきたいと思います。
うめざわ
子供たちへの普及も大切ですし、困っている外国人の方にも喜ばれそうです。
雛丸さんの明るいキャラクターなら日本舞踊や文化・マナーなども、先入観なく楽しく覚えられそうです。早く、思いっきり活動できるようになってほしいですね。
本日はありがとうございました!
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