長唄「菊づくし」歌詞と解説
日本舞踊で人気の長唄「菊づくし」の歌詞と解説です。
長唄「菊づくし」の解説
子供の手習い曲として踊られることが多いですが、日本舞踊の基本の型や形を学ぶのに最適な曲として年齢を問わず入門曲として学ぶ機会の多い曲です。菊の花があしらわれた花笠をかぶり、さらに両手に持って踊ります。
初代・花柳寿輔が嘉永(1848年~1855年)ごろ、屏風にあった唄を作曲させて入門用にしたものだといわれています。
(安永四年(1775年)9月の江戸森田座で、初代中村のしほの演じた四季の所作事「袖模様四季色歌」(そでもようしきのいろうた)の内の「秋 都大踊」がこの「菊づくし」にあたるとの説も)
腰の入れ方、首の振り方、おすべり、袖の持ち方など、古典舞踊を踊る上での基本的な動作が入っており、初心者のお稽古にこの『菊づくし』を用いることが多いです。
古典の基礎を身につけ、間や足取り、体のこなしなどを会得するには最適な曲です。
長唄「菊づくし」歌詞の意味
歌詞はタイトル通り、まさに色とりどりの菊の情景が浮かぶ「菊づくし」です。
園に色よく咲きし菊づくし
サアーヤツトヤー サアーヤツトヤ―
菊のませ垣に 七重八重に菊
御所御紋の菊は 九重菊流しにしよかえ
「園に色よく咲きし菊づくし」の唄い出しは、手踊りでかわいらしく手拍子、足拍子もが入ります。 「菊は九重流しにしよかえ」と袂を使います。
*ませ垣=竹や柴を編んで作る、目が粗く低い垣根のこと
(京都府向日市観光協会HPより引用)
黄菊 さえやい 白菊菊合わせ
サアーヤツトヤー サアーヤツトヤ―
仲をへだてし数も 東菊
紫の菊は 百夜菊 菊合わせにしよかえ
「黄菊さやえい」から両手に菊の手持笠、頭には菊の花笠をかぶって踊ります。
(※稽古時には、菊の花笠の代わりに扇を2本使用することもある。)
「仲をへだてし数も」以下、菊の花々を詠み込んだ詞章になります。
花の一枝の盆おどり
勇んで 勇んで 仕出し踊りの華やかに
花笠娘小娘と 実に面白き菊づくし
「花の一枝の盆踊り」より曲調が変わり、テンポよく盛り上がったのち、「実におもしろく菊づくし」で決まります。
作品情報
作曲者 | 初代杵屋作十郎か? |
初演情報 | 安永4年(1775年) 劇場:江戸・森田座初演 *諸説あり |
大道具 | 竹や柴などの垣に、菊花乱れたる場所の装置 菊花壇などを飾る場合もある |
小道具 | 菊の花の冠り笠 菊の花の手持笠2つ 草履(紅緒) |
衣装 | 着付:朱色地縮緬 菊模様 襦袢:無地の赤袖 帯:ヒワ桜 箔置房付中巾帯 小烈:赤けだし かつら:おかっぱなど |
長唄「菊づくし」の歌詞
園に色よく咲きし菊づくし
サア ヤットナ サァ ヤットナ
菊のませ垣 七重八重菊 御所の御紋の菊は 九重 菊流しにしよかえ
黄菊さいよは白菊 菊流し
サア ヤットナ サァ ヤットナ
仲を隔てし 数も吾妻菊 紫の仲は百夜菊 菊流しにしよかえ
花の一重(枝)の盆踊り
勇んで勇んで 暫し踊りの華やかに
花笠娘 小娘と 実(げ)に面白き 菊づくし