【取材】日本舞踊の発表会に潜入!
日本舞踊の発表会って、どんなの?
・知り合いに日本舞踊の発表会に誘われたけどどんな雰囲気なのか不安
・日本舞踊を始めてみようかと思っているけど発表会とかお金かかるって聞いてて不安…実際どうなんだろう
日本舞踊の公演ってまず目にする機会がないですよね。そこで今回、護国寺で日本舞踊教室を運営している、花柳廸薫(はなやぎみちかおる )先生にご協力いただき、特別に発表会を取材させていただきました!
日本舞踊の発表会って、どんなだろう?と思っている方、必見の内容です!
取材させていただく花柳廸薫先生
今回、取材に快く協力してくださったのは、護国寺で日本舞踊教室を開いていらっしゃる、花柳廸薫(はなやぎみちかおる:以下、廸薫)先生です。元タカラジェンヌ、今は「日本文化の水先案内人」として、今回お邪魔する、日本舞踊教室「薫乃会」はじめ、舞踊家として、講師としてなど、さまざまな活動をされています。
今回取材させていただく発表会の概要
薫乃会(廸薫先生一門の名称) 浴衣浚い&シリーズ第15回 花柳廸薫 日本の情景を踊る~納涼 あやかしの風景~
第一部 薫乃会 浴衣浚い(ゆかたざらい)
長唄「寿」(劉佳)
長唄「関の小万」(大迫 茉奈)
大和楽「藤むらさき」(中泉 陽子)
長唄「夢」(上野 真弓)
長唄「潮来出島」(片山 彰子)
清元「うぐいす」(中村 信恵)
長唄「松の緑」(志田みなみ)
第二部 ~納涼 あやかしの風景~
舞踊二題
長唄「もみじ葉 〜高尾懺悔より〜」
大和楽「きつね」
お話し
朗読「お札はがし
(三遊亭圓朝口演『怪談牡丹灯籠』より)」
佐藤光生(友情出演)
なごみ会主宰/明治座アートクリエイト
日 時 8月3日(土) 13:30〜16:00
場 所 根岸 笹乃雪 JR山手線 鶯谷北口より徒歩3分
発表会は朝、お弁当の買い出しからはじまります
発表会の準備は朝8時からはじまりました。出演者のお弁当の買い出しです。会場近くに朝早くから空いているお店がないため、品川駅の駅弁屋さんへやって来ました。こんなに早くから準備は始まっているんですね!
会場、根岸の料亭「笹乃雪」さんへ
今日の発表会の会場は、鶯谷の豆腐料理の老舗「笹乃雪」です。舞台付きのお座敷があり、そこで発表会が行われます。
お弁当を持って到着するとすでにお弟子さんたちが準備を始めていらっしゃいました。
座布団の敷き方にもあらわれるお出迎えの気持ち
座布団は、ピシッと揃えることはもちろん、後ろの人が見やすいように交互にしたり、向きも、座布団カバーのファスナーが見えないように揃えたり。お客様を迎える気持ちが座布団の並べ方にも表れています。みんなで準備すると、こちらの気持ちも引き締まるようです。
受付の準備も
会場の入り口では受付の準備です。入ったばかりで今日は舞台に上がらないお弟子さんと、応援で駆けつけてくれた先生のお友達が受付を担ってくださっています。ご案内方法などを確認&チェック。
少しずつ開場が近づいてきました。本番前のリハーサルです。
会場の準備が終わって時間は10時。これから12時までがリハーサルです。
リハーサルは実際に舞台で曲を通して行われます。音楽、緞帳のタイミングも入念にチェック。
お弟子さんたちは、役者さんや会社員など、普段はお仕事をされている社会人の方ばかり。忙しいお仕事の合間を縫って、この1年間お稽古を重ねてこられました。あと3時間ほどでその成果の発表です。こちらにまで緊張感が伝わってきます。
先生から最後のアドバイス!
リハーサルが終わったら先生から最後のアドバイス。もうすぐ1年間の成果が出ます。みなさんの心境やいかに。
セッティング、照明、拍子木、舞台進行もみんなで
舞台照明、進行(司会)、拍子木を鳴らす、緞帳を上げ下げする、こういった裏方も分担して行います。一見、単純な作業のようですが、他の人の演目の「間」「タイミング」がわかっていないと、雰囲気は台無しになってしまう繊細な作業でもあります。
「何でもやってみると勉強になります」とは廸薫先生の言葉。
二部・朗読のリハーサル
今回の発表会は二部構成。後半は朗読の佐藤光生先生を迎えて、怪談「牡丹燈籠」の朗読のリハーサルです。怪談の世界がより伝わるように、舞台の背景や照明なども微妙に調整していきます。打ち合わせの結果、踊りの時の背景にあった金のふすまはとることになりました。このほうが怪談噺の雰囲気が出そうですね!
集合して師匠の一声
集合して全員にアドバイスです。最後に締めの挨拶の練習をみんなでして、リハーサルは終了!
みんなでお昼ご飯
控え室で、朝、品川駅で買ってきたお弁当をみんなでいただきます(私もご相伴に預かりました^^)。束の間の、ほっとする一息です。
お客様向けに抹茶とお菓子の準備
廸薫先生の発表会では、お客様に呈茶(抹茶をお出しする)のおもてなしをされています。出演者のお友達が応援に来てくださり、お抹茶とお菓子の準備です。
今回の発表会のテーマは「あやかし」。先生が披露される大和楽「きつね」にちなんで、こぎつねのお菓子です。かわいいですね。
13時半になりました。ついに開場です!
13時半、開場しました。続々とお客さんが入ってきます。受付メンバーが受付し、他のメンバーが席にご案内します。ご来場の方へは基本全員に、別室でお抹茶をふるまうそうです。出番前ですが、気が抜けないですね。まさにみんなでおもてなしです。
開演です!
いよいよ発表会がはじまりました。最初のお二人は今回、初舞台。堂々と演技されています。
会場には60名を超えるお客さん。一番後ろの席でも舞台の上の人の表情がわかるくらいの距離感です。会場は程よい緊張感と和やかな雰囲気でした。
舞台袖では・・・?
さて、こうして始まった発表会ですが、ちょっと舞台袖に回ってみましょう。
廸薫先生が客席からは見えないところで、お弟子さんのガイドになるように踊っていらっしゃいました!リハーサルでは危なげなく踊っていらっしゃったみなさんですが、本番はなにが起こるかわかりません。突然覚えた振りがとんでしまう、なんていうこともありえます・・・先生が舞台袖に控えてくださっているというのは、なんとも心強いですね!
裏方も真剣!
本番の緊張感は当然、裏方にも、みなさん自分の出番も控えている中、一生懸命、務められています。一瞬も気を抜く暇がありません。
舞台上ではみなさんの踊りが披露されていきます。
みなさん、それぞれの精一杯の踊りを表現されていました!「きれい」「かわいい」「かっこいい」「しとやか」「力強い」・・・演目によってさまざまな特徴があり、一つの演目の中でも表情が変化があるのが楽しいですね。
なじみの少ない作品を親しみやすく。演目の解説
曲と朗読について、廸薫先生から解説です。日本舞踊は言葉遣いは古く、音楽も長唄や清元といった聞きなれない音楽ですので曲の意味が伝わりづらいものです。初めての人でも理解しやすいように解説を入れているそうです。
長唄 もみじ葉 〜高尾懺悔より〜
傾城(=けいせい。男が城が傾くほど財産をつぎ込んでしまう魅力がある女性のこと)と呼ばれた高尾太夫(遊女の名前)が、亡霊となってあらわれ、生前の懺悔をする、という内容です。
MCの雰囲気とは打って変わって、テーマ通り、ここから会場は一気に「あやかし」の世界に・・・ 演技を通じて高尾の悲しみを感じとれたような気がいたしました。
朗読・怪談「牡丹灯籠」
怪談「牡丹灯籠」は落語家の三遊亭圓朝(さんゆうていえんちょう)作と伝えられる怪談噺です。恋に焦がれて死んでしまった娘と、その侍女の幽霊が男の元へ現れ、ついにとり殺してしまうという物語です。朗読家の佐藤光生さんと廸薫先生により語られました。
言葉だけで江戸の情景や、流されやすい人々の心、不気味で、どこか哀れな幽霊の様子など、牡丹灯籠の世界観が広がります。
最後は賑やかに手拍子入りの演目 大和楽「きつね」
最後は大和楽の「きつね」という演目。手拍子も入り賑やかに、会場のお客様も一緒に手拍子で盛り上がります。
最後は会場みんなで三本締めにて終演
最後に出演者一同が舞台に上がり、挨拶と三本締めで閉幕となりました。
終わってもしばらく熱気は続く・・・
終演となりましたが、しばらくは出演者とご友人、ご家族の方々とがお話しされたりで会場は熱気が続きます。私は参加できなかったのですが、このあと出演者とお客様との懇親会もこの会場で行われたそうです。笹乃雪のおいしい料理を食べながら、先生や出演者のみなさんとお話しできるのは良い機会ですね。
観客の存在があってはじめて100%という考え方
廸薫先生の言葉で印象に残った言葉があります。「稽古ではありえない。本番前のリハーサルで何とか80%に。そして本番観客の存在でプラス20%。これでやっと100%。この100%と言うのは『完璧』を意味するものでは無くパフォーマンスとして当たり前の水準であり、そこに更にパーセンテージが加算されるか否かによってその意義が問われる様に思います。」
みんなで作り上げる舞台、座布団の並べ方など、細部にも宿るお出迎えの気持ち、こういったものは、お客様に来ていただくことに対する素朴な感謝の気持ちに加え、根底に先生のこのような考え方があるのだなと思いました。
発表会の取材を終えて
今回初めて、日本舞踊の発表会の取材を行いました。日本舞踊の発表会というと、少しお高いというか、堅苦しいイメージがありました。実際に準備から密着させていただいて、確かに、畳のお座敷に金のふすま、格調高い踊り、だったり、背筋が伸びるような雰囲気もありました。一方で、舞台と客席が近くて、出演者が近くに感じられたこと、くだけた踊り、親しみやすい踊りもありましたし、なによりみなさんで作っている会の雰囲気、迎えられているという感覚が心地よく、日本舞踊をより身近に感じるきっかけになりました。
取材に快く協力したいただいた「薫乃会」のみなさん、廸薫先生、どうもありがとうございました。