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日本舞踊の世界を変えていく「小さなコミュニティ」

日本舞踊の世界を変えていく「小さなコミュニティ」

日本舞踊はこのまま先細っていってしまうのだろうか。

これまでだって悩みがあったのに、去年からは新型コロナウィルスの影響で、公演ができない、稽古場を開ける基準はどうするか、オンラインレッスンはやるのか、やるとしたらどうすればいいのか・・・課題や悩みが次から次へ・・・

日本舞踊の世界には、このように多くの課題あります。どうすれば課題に対応できるのか?日本舞踊の世界に良い変化が起きるのか?

私は、これから日本舞踊の世界を変えていくのは「小さなコミュニティ」だと思っています。小さな流派や、師匠と弟子が一致団結した稽古場、志を同じくする先生同士のつながりなどです。この記事では、私がそう考える理由を説明します。

この記事でわかること

・小さなコミュニティが日本舞踊の世界を変える理由
・大きな組織や個人が抱えている課題
・何からやればいい?仲間作りから始めよう

山積みの課題。対応できるのは「小さなコミュニティ」

日本舞踊の世界は、以前から課題を持っていました。日本舞踊人口が高齢化している、若い人が新しく入ってこない・・・などです。
しかも2020年からは新型コロナウィルスという脅威が、

・公演ができない
・稽古場をいつ、どういう基準で開けていいかわからない
・オンラインレッスンをどうする?
・地方のお弟子さんをどうする?

などの数々の課題を突きつけてきました。いまは目の前の問題に対応するだけでも大変なのに、以前からの課題はもちろん無くなったわけではありません。

これからの課題をどう解決するかを考え、実行して成功事例を共有してくことが、日本舞踊界によい変化を起こしていくために必要です。

それが実現できるのは、「小さなコミュニティ」だと思います。つまり、小さな流派や、師匠と弟子が一致団結した稽古場、志を同じくする先生同士のつながりなどです。

集客・感染症・オンライン・・・多様化、専門化する課題

日本舞踊が盛んだった時代、先生は「教えること」に専念できました。しかし、いろんな習い事や体験が増えているいまの時代、日本舞踊を選んでもらうために「集客」に知恵を絞ることも必要です。新型コロナウィルスでは、感染症の知識を勉強して、お稽古場をいつ、どういう基準で開ければいいのか、公演をどうするのか、また、オンラインレッスン導入の是非を検討したり、やり方を調べたり・・・と対応すべき問題が多様化し、専門性がどんどん高まっています。

これらの課題に一人で対応するのは困難です。これを読んでいるあなたが一番よくわかるはずです。したがって、複数人が知恵を出し合って解決していく必要があります。人数が集まれば、解決に必要なタスクを分担して行うことができますし、客観的な効果検証もしやすく、成果につながりやすくなります。お金を出し合って専門家を雇い意見を行く、対応法を教えてもらうということもできるでしょう。

成果の発信についても、ひとりではほとんど影響力はありませんが、複数人ならある程度の拡散力と影響力を持つことができます。成果を積み重ねつつ、発信していくことで、周囲からの信頼も高まり、成功事例が浸透していくと考えられます。

大きな組織、課題はスピード

では大きな流派で対応することはできないのでしょうか?

これには一定のハードルがあると思います。大きな組織では、利害関係者が多数存在し、意思決定も複雑なため、スピード感をもって意思決定することが難しくなります。

例えば、教室の感染対策や公演開催のガイドラインは、教室の先生が最も必要としていた情報の一つです。

教室を開けなければ収入が絶たれる、しかし感染者を出せばそれこそ死活問題となる。妥当と思われる基準はなんなのか。

緊急事態宣言前後は特に、稽古を休止するか、再開するかは難しい問題でした。各教室は、具体的な感染対策、年齢、稽古場への移動手段、家族の職業などさまざまな要素で、個別に判断せざるを得ませんでした。

このような状況でひとつのガイドラインを作ることは大きなストレスが生じます。このような大きな出来事の前にはさまざまな判断が存在し、異なる意見の間で主張が激しく対立する恐れがあるからです。

オンラインレッスンにしても、どこまでなにができるのか、スピーディにその性質とノウハウをまとめ、共有することが求められていた半面、まず、オンラインレッスンを認めるか認めないかの価値判断を巡って意見が割れ、具体的なノウハウの議論まで行きつかないことが予想されます。組織が大きくなればなるほど組織内の意見調整に時間がかかり、スピード感ある対応は難しくなります。もちろんこれは、日本舞踊に限った話ではありません。

個人の場合、物理的な時間とマネタイズが問題

では卓越した個人が成功事例を作って、それを横展開するのはどうでしょうか。

これも、現代ではかなりハードルが高いと考えます。集客であればマーケティング、とくにいまはWEBマーケティングの知識が欠かせません。コロナ対策においては感染症の基礎知識、オンラインレッスンではITスキル、オンラインレッスンを始めたら今度はオンラインでうまく教える技術と、次々に専門性の高い知識、ノウハウが求められます。

そもそも優秀な人はすでに多くのお弟子さんを抱えていたりするので、いろんなことを試みる物理的な時間や、ノウハウをまとめて発信、浸透させる余裕がないのが通常です。そして、発信するだけではマネタイズにならないので、言ってしまえば「タダ働き」となり、継続することが難しくなります。

「小さなコミュニティ」成功事例、取り組み事例は?

では、小さなコミュニティで成果を出した事例や、すでに行われている活動例を具体的に紹介します。

未来座のオンライン公演

一つは未来座が行ったオンライン公演です。

松本幸四郎と未来座が新作舞踊をリモートで創作、Eテレ「にっぽんの芸能」本日放送(2020年7月3日)

「オンライン公演」という業界ではまだ先鞭が付けられていない試みを、いち早く企画し、実現させたことで事例として紹介させていただきます。

2020年6月に予定されていた未来座=祭 SAI=「夢追う子~ハレの日への道しるべ」公演が中止になり、代わりに出演予定だった舞踊家と、一般公募による踊りの映像をひとつの作品にするという企画が行われました。

2020年5月にはこの企画の趣旨が発表され、映像の公募が始まり、7月に完成した映像がNHKにっぽんの芸能にて放送されています。

流派を超えて一つの公演を作るという目的で集まったメンバーで組織されていたという点が、素早い意思決定と、前例がない状態での映像作品作りにつながったのではないかと思います。

この企画の実現を見て、稽古や公演へのオンラインの活用を、前向きに検討できた教室も多かったのではないでしょうか。

習い事の先生コミュニティが生まれている

もうひとつが、習い事のマッチングサイトが先生同士のコミュニティを組織し、知識の共有の場を作り始めていることです。

例えば、習い事・体験マッチングサイトの「カフェトーク」や「趣味なび」は、講師登録している先生だけのFacebookグループを作り、先生同士で集客のノウハウや顧客対応などを相談できる仕組みを作っています。一人でがんばるのではなく、知恵を出しあい、高めあえる仕組みとなっています。

師匠と弟子が一致団結する強さ

日本舞踊に良い変化をもたらすのは、日本舞踊を仕事にしている人だけではありません。日本舞踊を習っているお弟子さん(生徒さん)もその参加者の一人です。社会人のお弟子さんはさまざまなスキルを持っています。ITに詳しい、広報に詳しい、英語が得意、流行に詳しい・・・など。心当たりはありませんか?

そういう人が教室のために一致団結したらどうでしょうか?「ITに得意なお弟子さんが教室HPを作り、お弟子さんが増えた」「パソコンに強いお弟子さんのサポートでオンラインレッスンを導入できた」「オンライン配信に強いお弟子さんのおかげで公演のオンライン配信に成功した」「お弟子さんの有志で教室のSNS運用をしている」こういう話を、いくつも耳にしています。

他の業界、他の仕事を経験しているお弟子さんだからこそ、貢献できることがたくさんあるのです。案外、お弟子さんのボランティア精神がきっかけで、日本舞踊の世界は変わっていくのかもしれません。

大きな組織、個人がムーブメントを起こすには

では、大きな組織、個人で業界をけん引していくことは不可能なのでしょうか。

先ほど紹介した理由で、私はハードルが高いと思っていますが、成果を出しやすい方法はあると思います。

大きな組織では、組織の中で小さなプロジェクトチームを作ること、個人は、情報発信する仕組みを活用したり、マネタイズの方法を探ることです。

組織の中でプロジェクトチームを作る

組織として一つの意思決定をすることは先ほど書いたように、利害関係者の調整や時間が必要です。したがって、いきなり全体での結論を急ぐのではなく、まず調査のためのプロジェクトチームを作るのがよいのではないでしょうか。

例えば、感染対策調査チーム、オンラインレッスン検討チーム、WEB集客強化チームなどです。

そこに興味があるメンバーを集めて期間と予算をつけ、調査します。

例えば感染症対策については、専門家にヒアリングを行う、他の業界の取り組みを調べる、教室と公演で必要な感染症対策をまとめるなどのタスクが考えられます。

オンラインレッスンであれば、まず最低限の機材をそろえてやってみる、オンラインレッスンで何ができて、何ができないのか、解決できる課題はあるか、できない課題はないか、各教室に導入判断の基準となる情報をまとめる・・・など。

大きな組織のメリットは優秀な人材を集められること、まとまった予算を捻出できることです。このメリットを生かし、まずは小規模なプロジェクトチームで成果を積み重ねることが早道ではないでしょうか。

個人が発信を続けるには

個人で優秀な先生はたくさんいて、コロナ対策にしてもオンラインレッスンにしても、果敢に挑戦して結果を出されています。一方で個人の先生の課題は時間です。成功事例をうまく横展開する、発信を続けるのはどうしたらいいでしょうか。

発信力のあるメディアを活用する

ひとつは発信力のあるメディアを活用することです。個人でSNSの多くのフォロワーを抱えている先生は、ご自身がインフルエンサーとして情報発信することもできますし、PRTIMESなどのプレスリリースサービスをうまく利用すれば、大手メディアを通じて成果を公開できます(俺の日本舞踊でも記事ネタお待ちしております)。

オンラインショップサービスなどを利用してマネタイズする

一方で、メディア発信は、業界への貢献、先生の知名度アップには貢献するものの、すぐにマネタイズできる性質のものではないので、仕事としては継続しづらいという欠点もあります。その場合は、ノウハウを教材化して、オンラインショップサービスなどで販売し、マネタイズするという方法もあります。

現在「note」や「BASE」といった、初期費用、ランニングコスト無料の決済サービス、ショップサービスがあるので、こういったものを利用してノウハウを販売すれば、業界への貢献と、マネタイズを両立できます。

結論、仲間を作ろう

これから日本舞踊を変えるのは「小さなコミュニティ」です。

意思決定の早い小さな流派や、スピード感をもって挑戦できる小規模集団、が成功事例を生み、業界全体に展開していくことが日本舞踊の世界に良い変化をもたらしていくことでしょう。

そして今、私たちに何ができるでしょうか。それは一人で考えるのではなく、志を同じくし、建設的な議論ができる仲間を作ることです。そして、良いアイデアや成功事例をシェアして、みんなでよくしていこうという姿勢をもつことです。

そして、俺の日本舞踊はそのような取り組みを応援しています。面白い取り組みは積極的に取材させていただき、記事にしてご紹介いたしますので、その際はぜひご連絡ください。

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