部活動の地域移行と伝統文化にできること【セミナーレポート】
伝統文化による地域アクション研究会の第2回セミナーが開催されましたので、そのダイジェストを記事でお届けします。テーマは「部活動の地域移行と伝統文化にできること」です。
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伝統文化による地域アクション研究会は、地域貢献を通じた伝統文化の持続可能な在り方を考え、行動する研究会です。
地域スポーツクラブや、部活動として、伝統文化・伝統芸能を導入したい教育機関、自治体関係者様は、弊社がサポートできますので、お問い合わせください。
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部活動の地域移行とは?
部活動の地域移行とは、これまで学校教員が担ってきた部活動の指導を、地域団体や関係事業に担ってもらうことで地域の活動に位置づけることです。
部活動の地域移行は、教員の働き方改革や少子化問題などの背景があり、学校部活動の維持が困難になってきていることから急務となっています。
中学校や高等学校の部活動は、多くの学生にとって重要な経験であることは間違いありません。しかし、部活動の指導や休日の練習試合、大会引率などが教員の過重労働の一因となっているという事実も同様に課題視されています。
渋谷区の渋谷ユナイテッドや、茨城県つくば市の茎崎地区文化・スポーツクラブなど、地域移行を成功させている事例が存在します。これらの事例では、学校と地域、スポーツ・文化団体などが連携して、部活動を支える体制が構築されています。
部活動の地域移行のメリットと課題
地域移行のメリットとしては、教員の労働環境の改善以外に、専門人材を確保できれば、生徒達にもより良い指導が提供できる点があります。
一方で、そのような人材をどう確保するのか、予算をどうするか、勝利至上主義加速の懸念など課題も存在します。
なお、地域移行以外の部活動の改革の方向性としては、部活動の合理化、大会の見直し、ICTツールの活用などがあります。
伝統文化ができることはなにか?
伝統文化や伝統芸能は、部活動地域移行の受け皿としての役割を担うことができるのではないでしょうか。ただ、課題は同じく存在します。
人材確保
指導ができる人材の確保が求められます。さらに踏み込んで予想される課題として、技術指導だけではなく生活指導を求められる可能性があげられます。部活動には技術向上に加え、人間的成長が期待されているからです。そもそも論として、外部人材が生活指導をするべきか、という問題はありますが、どこまでその役割を担うのかの調整も含めて、学校、保護者、地域と連携できる人材が望ましいと思います。
また、安全講習などを業界や業界内団体が行うことなども求められるでしょう。
予算の確保
原則は、受益者負担(サービスを受ける人が対価を払う)の考え方に基づき、保護者が負担することが検討されると思いますが、一方で、これまで「指導者に報酬を払う」ということをしてこなかったわけですから、「費用負担が上がるなら部活動を諦める」という家庭も出てくる可能性があります。よって、学校や自治体からの予算、個人や企業からの何らかのスポンサードを募るなど、活動資金を集める手だてが必要です。
また、指導にあたる講師としては、部活動指導だけでは、収入の大きな柱となるような仕事にはならないため、自分のビジネスのポートフォリオの中にどう位置付けるか、ということを明確にしたうえで、関わる必要があります。
スポーツ庁だけでなく、文化庁も文化系部活動の地域移行について検討を進めています。2023年からは文化系部活動の地域移行の実証事業が開始されています。新たな受け皿としての伝統文化系クラブの創設も十分考えられます。本格的な開始は3年間の強化期間を経て行われるので、現在伝統芸能や伝統文化に携わる人は、地元での地道な活動や、地域スポーツクラブ(子供に限らず、地域に開かれたスポーツ、文化活動を推進する活動)などで実績を重ねるなどして、文化系サークルの地域移行が本格化するタイミングで、学校や行政へ働きかけることが有効ではないかと考えます。
参考:文化部活動の地域移行に関する検討会議(文化庁)、部活動の地域移行に向けた実証事業及び地域文化クラブ推進事業(文化庁)
いかに魅力的な活動を提供できるのか
部活動自体は、全体でみると、少子化の流れ以上に、縮小の傾向に向かうと考えられます。
なぜなら、地域移行を行った結果、指導者が見つからない、予算が確保できないなどの理由で解消に向かう部活動が出てくることが予想されるからです。
これまではそこを、先生が無償労働によって支えていたわけです。これは部活動の衰退ともいえるし、逆に健全化ともいえます。
しかし見落としてはならないのが、「部活動をしたい」という子どもたちの気持ちです。この子供たちは何かしたい、でも、必ずしも伝統文化・芸能に興味があるわけではありません。そのような子供たちに対して、いかに魅力的な活動を提示できるか。ここが最大のポイントとなるでしょう。
地域スポーツクラブや、部活動として、伝統文化・伝統芸能を導入したい教育機関、自治体関係者様は、弊社がサポートできますので、お問い合わせください。

