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絹なのに労働着?「紬(つむぎ)」とは?

絹なのに労働着?「紬(つむぎ)」とは?

紬(つむぎ)は先に糸を染めてから織り上げる、絹織物の一種です。繭の糸を何本か集めて糸にしたものを「生糸」といいます。それに対して、生糸にできない、いわば不良品の繭を一度煮て、綿状にしたものを「真綿」といいます。この真綿から紡いで織られたものが紬です。布の表面に「節」と呼ばれる波のような凹凸があることが多く、絹の光沢やハリを持ちながら、この節によって独特の風合いを持つのが紬です。ただし、大島紬など、一部には節を持たない紬もあります。

紬の着物の魅力

紬は薄くて軽い素材なので、着心地がよく、絹性なので丈夫で保湿保温性に優れます。柔らかで光沢のある質感は、どんな装いにも洗練された印象を与えます。ただし、着物の格としては普段着からオシャレ着まで。節がなく美しい大島紬でも、礼装には使用しません。

紬の歴史

紬の歴史は古く、結城紬で有名な茨城、栃木あたりでは、奈良時代に紬を朝廷に献上していたという記録があるそうです。

絹織物は高級品で、一般庶民には手の届かないものでありましたが、紬は商品価値が低い屑繭を原材料としていたため、農家の労働着や、町人の着物として使われました。

江戸時代にたびたび発布された贅沢禁止令(奢侈禁止令)により、「絹であるにも関わらず木綿に見える」紬の人気があがり、武士の間でも着用されるようになりました。明治時代になるとさらに人気が高まっていきます。

紬の価格

紬の価格は一般に中程度で、生地や仕上がりの良し悪しによって比較的手頃なものからかなり高価なものまであります。安価なものなら反物で2〜3万円くらいで手に入れることができます。もちろん、本場の大島紬や結城紬といった工芸的価値のあるものは、数十万円から百万円を超えるものもあります。

紬のお手入れ方法

紬の素材は絹です。水に弱くデリケートなので、できればクリーニングに出すことをおすすめします。また、きちんとたたんで、湿気を避けて涼しい場所に保管しましょう。防虫対策も忘れずに行ってください。

紬の長所と短所

紬の最大の長所は、絹の特徴である、高級感、強度、保温保湿性を持ちながら、「節」による独特の風合いにより、礼装を除く、あらゆるスタイルやシーンに対応できることです。屑繭を再生している素材の背景から、「サステナブル」の象徴でもあります(ただし、安価な紬は、機械によってあえて節を作る場合もあります)。