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清元「うぐひす(うぐいす)」歌詞と解説

清元「うぐひす(うぐいす)」歌詞と解説

女性の心に秘めた恋心を、まだ冬の寒さの名残ある初春の情景にのせて描きます。

清元「うぐひす」解説

曲の大意

うぐいすの鳴き始めた初春、長い間、会えなかった好きな人が来てくれました。

お茶のおもてなしをしている間にも、嬉しい気持ちが思わずあふれてきそうです。

梅と鶯(うぐいす)

「うぐいすの笹鳴き初めし 軒の梅」・・・「梅に鶯(うぐいす)」とは、仲の良いもの、取り合わせの良いもののたとえです。また、両者とも別名を「春告草」「春告鳥」と言いまして、春の訪れを告げるものでもあります。

梅は、冬の厳しい寒さに耐えて、冬が終わると一番に花を咲かせることから縁起物とされます。同じく冬でも緑を絶やさない松と竹と合わせて「松竹梅」「三寒の友」とも呼ばれます。

うぐいすは「ホーホケキョ」と鳴くのが定番ですが、実は鳴き声には、他にもいくつか種類があります。

1.「ホーホケキョ」「さえずり」。春、オスがメスに求愛するときです。

2.「ケキョケキョ」と鳴くときは、「谷渡り」という、縄張りを主張するときです。

3.それ以外のときは「チャッチャッ」と鳴き、これを「笹鳴き」または「地鳴き」といいます。

ここでは「笹鳴き」ですので季節は、まだ暖かな春にはなりきっていない、冬の名残がある時期、初春でしょう。

囲いの内は松風の沸る想いを・・・

いよいよ、好きな人が訪ねてきてくれました。

お茶室にお迎えして、お点前(おてまえ。お客様にお茶を供する、一連の所作)をしています。「囲い」とは茶の湯を行う小座敷のこと。「松風」は、釜の湯が「シュンシュン」と沸く音のことを例えて言います。

袱紗(ふくさ)捌(さば)きに紛らせて・・・

好きな人を前にして、とても嬉しい・・・でも、その気持ちを表に出してしまっては恥ずかしい。

だから、お点前の袱紗(ふくさ。茶器をぬぐったりするのに使用する)さばきに気を紛らわせます。釜の湯を柄杓(ひしゃく)で冷ますように、沸る自分の気持ちを落ち着かせていますが、それでもやっぱり嬉しい気持ちは心に満ちています。

人来鳥(ひとくどり)も、うぐいすの別名で、鳴き声が「ひとくひとく」と聞こえたことからこの字を充てたといわれています。

作品情報

作曲者 清元 寿兵衛
作詞者 木村 富子

清元「うぐひす」歌詞

うぐいすの笹鳴き初めし 軒の梅

囲いの内は松風の 沸る想いをしっとりと

袱紗(ふくさ)捌きに紛らせて 濡るる柄杓の湯加減を

ほんに嬉しい人来鳥(ひとくどり)