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目標は「家族の次に身近な存在」人の役に立つ日本舞踊を見すえて~若柳尚雄里(なおゆり)東京都中央区月島~

目標は「家族の次に身近な存在」人の役に立つ日本舞踊を見すえて~若柳尚雄里(なおゆり)東京都中央区月島~

東京都中央区にお稽古場を構える若柳尚雄里(なおゆり)さんに取材しました。

尚雄里さんは北海道で生まれ、日本舞踊家のお父様、水木雄二郎さんの元で育ち、現在は月島のお稽古場で、お子さんと中心とした多くのお弟子さんに囲まれています。

「伝・Tokyo」という団体で舞踊家としても活動、代表も務められています。近年はカウンセラー資格を取得したり、ADHD(多動性症候群)やLD(学習障害)といった発達に課題を持つ子どもたちへの、日本舞踊を通じたトレーニングに参加したりするなど「人の役に立つ日本舞踊」を探求しています。

そんな尚雄里さんの生い立ち、先生としてのこだわりなどを伺いました。

若柳尚雄里(なおゆり)プロフィール

幼い頃より父、水城雄二郎に師事し、平成十四年より若柳尚里師に師事。 日本舞踊のみにとらわれず、多様にわたり勉強する。国内外を問わず活動の場を広めていける様、日本文化、日本舞踊を探求中。

・1986年 日本舞踊家 水城雄二郎の長女として札幌に生まれる
・1988年 水城雄二郎に師事
・1989年 2才9ヶ月の時、童謡「絵日傘」にて初舞台
・1990年 4才の時より能籐玲子創作舞踊研究所にてモダンダンスを学ぶ
・2000年 ダンススタジオマインドにてジャズダンス、ヒップホップ、タップ等の洋舞を学ぶ
・2002年 正派若柳流 若柳尚里師に師事
・2005年 名取資格’10年には師範資格取得
・2010年 雄の会日本舞踊研究所 開設

目標は「家族の次に身近な存在」人の役に立つ日本舞踊を見すえて

1歳から稽古場で踊って遊ぶ子供だった

うめざわ

尚雄里さんはどんなお子さんでしたか?

若柳尚雄里(なおゆり)さん

1歳のときから稽古場に行っては、大人に「着物を着せて」「お扇子もたせて」「音楽かけて」と頼み、踊って遊んでいるような子供でした(笑)

うめざわ

すごい!本当に小さいときから踊りがお好きだったんですね。お仕事にすることもずっと前からお考えだったんでしょうか?

若柳尚雄里(なおゆり)さん

2003年に父が亡くなり、そのとき「日本舞踊をもっと続けたい」ということを強く思いました。「雄の会 日本舞踊研究所」をつくったのは24歳で師範を取ったときです。

父の言葉「大丈夫、お姉ちゃんには踊りがあるから」

お父様が最後に振り付けてくださったという「Everthing(MISIA)」

うめざわ

日本舞踊家でもあったお父様の存在は大きかったと想像します。お父様との印象的なエピソードを教えていただけますか?

若柳尚雄里(なおゆり)さん

印象的なのは思春期真っただ中の、中学3年生のときの思い出です。

「いい成績をとらないといけない!」と、受験ノイローゼで思いつめていた時に、父が一言「大丈夫、お姉ちゃんには踊りがあるから」と言ってくれたんです。「ああ、そうか!」と、その一言に救われました。

うめざわ

なるほど!お父様は、どういう意図があっておっしゃったんですかね?

若柳尚雄里(なおゆり)さん

私があまりにも受験で頭がいっぱいになっていたから、気持ちを緩ませることを考えたんでしょうね。

うめざわ

「踊りの道に進んでほしい」ということを暗に示されたのかもしれない?

若柳尚雄里(なおゆり)さん

彼の思惑があったかもしれませんね(笑)

2010年、東京で稽古場を構える。2歳から87歳まで、約45名の大所帯!

 

 
 
 
 
 
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温習会(発表会)は2021年で17回を迎えた

うめざわ

その後、お父様の言葉通り日本舞踊の道へ進まれます。

若柳尚雄里(なおゆり)さん

結婚を機に東京へ来て、長女の出産を経て24歳で師範をとり、教室を開きました。

うめざわ

お弟子さんは何名くらいいらっしゃいますか?

若柳尚雄里(なおゆり)さん

2歳から87歳まで、約45名です。内訳は大人15名、子ども30名くらいですね。

うめざわ

お子さんも多いですね!

教室としては、かなりお弟子さんが多い方だと思いますが、ここまで大所帯になった、なにか秘訣はありますか?

若柳尚雄里(なおゆり)さん

教室にいらっしゃる方は、ほとんどがインターネットからなんですよ。ですので、HPは定期的にリニューアルするなど、手間をかけていますね。

GoogleとかYahooとか検索にひっかからないとどうにもならないので、その対策とか。

また、最近ではお子様向けにお受験コースを作りました。

立ち方、座り方、先生とのお話の仕方、お返事の仕方、歩き方などを教えるんです。最後にお扇子を持って踊りも教えますよ。

私立の有名幼稚園や小学校にも進学実績がある。
ほかに一般、シニア、マタニティコースなどを設けている

うめざわ

中央区という土地柄もあり、私立受験に役立つものを求める親御さんは多そうですね。

「お受験コース」から日本舞踊に興味を持つお子さんもいますか?

若柳尚雄里(なおゆり)さん

みんなお受験が終わっても辞めないですね(笑)

楽しいからまた来たいと言ってくれるようです。

「伝・Tokyo」で伝統芸能の普及活動も

伝・Tokyoとは・・・日本舞踊、殺陣、邦楽、茶道、書道などのパフォーマンスやワークショップを通じて日本の伝統芸能を伝えている。国内外、ホテル、劇場、野外ステージなど場所を問わず公演を行う。尚雄里さんが代表を務めている。

うめざわ

尚雄里さんは「伝・Tokyo」という会社も経営されています。こちらは最近の活動はいかがですか?

若柳尚雄里(なおゆり)さん

コロナになってからは、ぱったりと止まってしまいましたね。去年までは仕事も多かったのですが。

2020年の3月までは2か月のロングラン公演もありましたし、ニューオータニさんには毎年出演させていただいていたり。

伝・Tokyoのスタッフは古典も新舞踊も、いろいろできるスタッフですよ。

舞台に立たないと自分が勉強できない、と尚雄里さん

これからは「人の役に立つ日本舞踊」を追求したい

「吉野山」若柳慶次郎氏と(第5回慶次郎會)

うめざわ

これからの展望や目標を教えてください。

若柳尚雄里(なおゆり)さん

継続すること」と「人の役に立つこと」の2つです。

これまでの日本舞踊は、江戸時代からずっと「自分が舞台に立ちたい」など自分を通していくやり方が中心だったと思います。

一方で、これからは「人や社会の役に立つ」などプラスアルファが求められるのではないかと思ってます。

うめざわ

そのように思われたきっかけは何ですか?

発達に課題を持つ子供たちを教えて

児童発達支援・児童デイサービス 愛ちゃんの家にて日本舞踊トレーニング

若柳尚雄里(なおゆり)さん

一つは、ADHD(多動性症候群)やLD(学習障害)、自閉症の子供たちに日本舞踊を教えはじめたことです。

地元・北海道の友人がそのような子供たちのためのデイサービス施設を経営しています。その友人から2年ほど前、子供たちのためのトレーニングを行いたいから来てくれないか、と声をかけられたのがきっかけです

うめざわ

それは素晴らしい活動ですね。これまで継続されていかがですか?

若柳尚雄里(なおゆり)さん

みなさん、人前で踊りを発表できるまでになりました。

ADHDの子供たちは、お稽古のときには正座して、扇子を置いて待つ、ということができるようになりました。普通はこのようなことは難しいんです。

LDの子供たちは、記憶することが難しい子供たちです。この子たちも、頭より身体を使って踊りを覚えてもらうことで、徐々にクリアしてきています。

自閉症の子たちに関してはまだ課題もあるのですが、専門家の人も一緒に取り組んでいます。

家族の次に身近な存在でありたい

 

 
 
 
 
 
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閉塞感漂う現在、大人にとっても子供にとっても、お稽古場は心のよりどころだ

若柳尚雄里(なおゆり)さん

もう一つのきっかけは、この新型コロナウィルスですね。

 

うめざわ

緊急事態宣言が出たときはいかがでしたか?お休みにされていた教室も多かったですが。

若柳尚雄里(なおゆり)さん

うちは逆で、子供をどこにも預けられないから、お願いだから稽古を続けてください、というご家庭が多かったですね。

大人の方も、どこにも行けないし家にいても鬱々とするから、お稽古に来たいと。

うめざわ

家以外の居場所があるって、誰にとっても大切なことですよね。

コロナ禍の辛い状況の中で、お弟子さんにとっては尚雄里さんのお稽古場がまさにそういう場所になっていた。

「相手が救われるような語りかけができるようになりたい」その想いからカウンセラーの資格も取得されたという

若柳尚雄里(なおゆり)さん

師匠として「家族の次に身近な存在でありたい」と思っています。子供たちにとっては第二の母になりたい。新型コロナウィルスによって、その気持ちがより強くなりました。

私にとって、師匠がそういう存在だったんです。悩み事があるとき、師匠はあらいざらい聞いてくれたし、共感してくれました。

師匠がそうしてくれたから、私も家族にも話せないことを話せるような、そういう存在になれたらいいなと思います。

うめざわ

本日は貴重なお話をありがとうございました!

経営者、舞踊家として伝・Tokyoの活動を行い、お師匠さんとして多くのお弟子さんを束ね、常にエネルギッシュに走り続ける尚雄里さん。今後の活躍にますます期待がかかります。「人の役に立つ」という新しい軸の活動にも注目です。