長唄「都鳥(みやこどり)」歌詞と解説
日本舞踊で有名な長唄「都鳥(みやこどり)」歌詞と解説です。
長唄「都鳥(みやこどり)」解説

風流江戸八景 両国橋夕照(鈴木晴信)
隅田川の春から夏にかけての情景を品よく唄った独吟もの(一人で唄う曲)の名曲。
恋人を待っている、隅田川の屋形船から見える情景、そして恋人との逢瀬を唄っています。
在原業平の和歌「名にしおはばいざ言問はむ都鳥わが思ふ人はありやなしやと」で有名になった隅田川の都鳥。実は、学術上の「ミヤコドリ」ではなく、「ユリカモメ」という鳥を指します。
隅田川の舟遊びは今も昔も人気です。「向島」「門前仲町」「柳橋(今の浅草橋)」には芸者街がありましたし、向島の対岸には浅草。この唄にも登場する「待乳山」は浅草寺の一部です。夏には納涼船や物売りの舟が所狭しと出て、それは賑やかな様子でした。

東都両国ばし夏景色(五雲亭貞秀)
この唄では、季節は春から夏。おそらく向島、浅草あたりに舟を出し、ひっそり恋人を待っているという様子でしょうか。
君なつかしと都鳥・・・業平の歌を指しています。
幾代かここに隅田川・・・屋形船から隅田川を眺めている風情ですが、「墨田川」と「住む」を掛けています。
往来の人に名のみ問はれて・・・こちらも業平の歌から「言問橋」と「人に問われる」を掛けています。
晴れて逢ふ夜を待乳山・・・待乳山聖天(まつちやましょうでん)は浅草付近にある浅草寺の一部。「待乳山」と恋人を「待つ」が掛かっています。
翼交はして濡るる夜は いつしか更けて水の音 思ひ思うて深見草 結びつ解いつ乱れ合うたる夜もすがら はや後朝(きぬぎぬ)の 鐘の声 憎やつれなく明くる夏の夜・・・都鳥のつがいに例えて、男女のややエロチックな描写です。
「深見草」は牡丹の別名で、「二人の思いが深い」ことを表します。「はや後朝(きぬぎぬ)の 鐘の声」とは、朝を知らせる鐘が鳴った」ということで、夜が明けて二人の時間が終わり、また離れ離れになってしまうことへの、後ろ髪引かれる思いを表現します。

ユリカモメ
長唄「都鳥(みやこどり)」歌詞
たよりくる 船の内こそゆかしけれ
君なつかしと都鳥 幾代かここに隅田川 往来の(ゆきき)人に名のみ問はれて
花の蔭 水に浮かれて面白や 河上遠く降る雨の 晴れて逢ふ夜を待乳山 逢うて嬉しき
あれ見やしゃんせ
翼交はして濡るる夜は いつしか更けて水の音 思ひ思うて深見草
結びつ解いつ乱れ合うたる夜もすがら はや後朝(きぬぎぬ)の 鐘の声
憎やつれなく明くる夏の夜
作品情報
| 作曲者 | 二代目・杵屋勝三郎 |
| 作詞者 | 伊勢屋喜左衛門 |
| 初演情報 | 初演年月 1855年6月(安政二年) |
| 大道具 | 隅田川の言問付近を情景とした景色、墨田河岸に屋形船などある風景など |
| 小道具 | 扇子 下駄 傘など |
| かつら | つぶし島田など |

