長唄「千代の寿(ちよのことぶき)」歌詞と解説
長唄「千代の寿」は、長寿で縁起物のシンボルである「鶴」を主題にした曲です。
夫婦仲良く連れ添う姿を”友鶴(雄雌そろった鶴)”に例え、この二羽の鶴がやがてめでたい尉(じょう。老翁)と姥(うば。老婆)になるでしょう、という願いを込めた歌詞になっています。
婚礼の場をはじめ、お祝いの席で祝舞としてよく踊られます。
長唄「千代の寿」の解説
常盤(ときわ)の松の色かえぬ
梢に遊ぶ友鶴の
羽音長閑(のどか)に晴れやかに
“常盤”とは木々の葉の色が一年中変わらないことです。つまり常緑のことで、常葉(とこわ)ともいいます。
松は、一千年の霜雪に耐え続けてもなお緑濃く、長寿・高潔の象徴であり、神聖な木として尊ばれています。
枝の先で遊んでいる2羽の鶴が羽ばたいていく姿がのどかで晴れやかです。
やがてめでたき高砂の尉と姥との相生は
比翼連理(ひよくれんり)の舞の袖
やがてその2羽の鶴は、高砂の松のように二つで一つになり、年を重ね老翁(おきな)と老婆(おうな)となるでしょう。
※高砂の松:黒松と赤松が根本で1本に合体しており、「相生(あいおい)の松」とも呼ばれています。
比翼連理とは、男女の情愛の深く、むつまじいことのたとえです。
「比翼」は比翼の鳥のことで、雄雌それぞれ目と翼が一つずつで、常に一体となって飛ぶという想像上の鳥。「連理」は連理の枝のことで、根元は別々の二本の木で幹や枝が途中でくっついて木理(もくり)が連なったものをいい、ここではこの二羽の鶴の夫婦仲のむつまじいことを指しています。
▲島根県の琴平神社にかつて存在した「高津連理の松」。二本の松が枝で完全につながっていて「夫婦松」として親しまれていました
鶴の一声幾千代(いくちよ)かけて
末は互の友白髪(ともしらが)
幾千代とは何千代もという意味です。
友白髪とは夫婦そろって長生きして共に白髪になることです。夫婦そろって長命であることのたとえです。
現在では、結納や婚礼などに祝い品として用いられます。
実際に白髪を用いるのではなく、白髪に見立てた麻ひもを一対にして使います。
作品情報
作曲者 | 松島庄十郎 |
作詞者 | 村山亘 |
長唄「千代の寿」の歌詞
常盤(ときわ)の松の色かえぬ
梢に遊ぶ友鶴の
羽音長閑(のどか)に晴れやかに
やがてめでたき高砂の尉と姥との相生は
比翼連理の舞の袖
鶴の一声幾千代(いくちよ)かけて
末は互の友白髪