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長唄「秋の色種(いろくさ)」歌詞と解説

長唄「秋の色種(いろくさ)」歌詞と解説

日本舞踊で人気の長唄「秋の色種(いろくさ)」の歌詞と解説です。

富士三十六景より(歌川広重)

長唄「秋の色種」解説

「秋の色種」と書いて「あきのいろくさ」と読みます。「色種(いろくさ)」とはいろいろな秋の草花のことで、秋の季語です。

弘化2 (1845) 年、麻布不二見坂の南部侯邸の新築祝いのため作られた曲です。南部侯 36代佐竹利敬 (さたけとしのり) の未亡人教子 (のりこ) 、または 39代信侯 (のぶとも) 作詞と推定されていますが、あるいは両人の合作という説もあります。作曲は十世杵屋六左衛門。

長唄「秋の色種」歌詞

秋草の 吾妻(あがつま)の野辺(のべ)のしのぶ草

しのぶ昔や古へぶりに 住みつく里は夏苧(お)ひく

麻布の山の谷の戸に 朝夕迎ふ月雪の 春告鳥のあとわけて

なまめく萩が花ずりの 衣かりがね 声を帆に 上げておろして玉すだれ

端居の軒の庭まがき うけら紫葛尾花

共寝の夜半に荻の葉の 風は吹くとも露をだに すゑじと契る女郎花

その暁の手枕に 松虫の音ぞ たのしき

変態繽粉(ひんぷん)たり 神なり又神なり新声婉転す

 

夢は巫山の雲の曲 雲の曙雨の夜に

うつすや袖の蘭奢待 とめつうつしつ睦言も

いつかしじまのかねてより 言葉の真砂敷島の 道のゆくての友車

暮ると明くとに通ふらん

峰の松風岩越す波に 清掻く(すががく)琴の爪調べ

 

うつし心に花の春 月の秋風ほととぎす 雪に消えせぬ 楽しみは

尽きせじつきぬ千代八千代 常磐堅磐(ときわかきわ)の松の色 幾十返りの花に