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【取材】”よかったよ!”目の前で喜んでもらえるやりがい~北海道教育大学釧路校 日本舞踊部~

【取材】”よかったよ!”目の前で喜んでもらえるやりがい~北海道教育大学釧路校 日本舞踊部~

北海道教育大学釧路校(公式HP)より

北海道教育大学釧路校 日本舞踊部を取材しました。

2020年に創立10年目を迎える日本舞踊部は、年間10回を越える地域での公演活動や、現役・卒業生の枠を超えた部員の交流があるのが特長です。新若柳流・若柳吉澄奈(きちすみな)先生を顧問に、部員5名で活動中です。

若柳吉澄奈先生(大学HPより)

今回は、吉澄奈先生のご自宅のお稽古場に先生と部員3名の方に集まっていただき、オンラインで取材を行い、日々の活動や日本舞踊部の魅力について伺いました。

北海道教育大学釧路校 日本舞踊部

創部:2010年
活動場所:若柳吉澄奈(きちすみな)先生のお稽古場
活動日時:週2~4回、1~2時間 空いている予定を合わせて行う
人数:約5名

インタビューに参加してくださった皆様

若柳吉澄奈(きちすみな)先生(新若柳流・師範)
野澤さん 3年生(部長)
西田さん 3年生(副部長)
嶋田さん 2年生

1.みなさんが日本舞踊部に入ったきっかけは何ですか?

野崎小唄(お稽古場にて)

嶋田さん(2年生)

嶋田さん「これまでは運動部(卓球部)にいて、なにか違うことをやろうと思っていた時に、最初に目に入ってきたのが日本舞踊部でした。」

西田(にした)さん(3年生・副部長)

西田さん「同じ研究室の先輩とご飯を食べてるときに『面白いから入りなよ』って、誘われたのがきっかけです。『めっちゃ楽しいし、焼肉とかも食べれるし』って笑
日本舞踊の良さとかよりは『めっちゃ楽しい』っていうことで興味を持ちました。」

おばあさまが日本舞踊をされていて、小さいときに少し習ったこともあったという西田さんは、友だちの野澤さんを誘って日本舞踊部の見学に行かれたそうです。

野澤さん(3年生・部長)

野澤さん「私はそのときアルバイトしかやってなくて。人との関わりがあんまりないし、なにか部活やりたいな、って思ってた時に西田さんから誘われました。

参加した先生のお宅の焼肉会では、卒業した先輩方も立ち寄られるような雰囲気で、そういう親密なところにも惹かれました。

 

ちなみに、「焼肉会」というのは、先生のお宅で時々開催されるみんなで焼肉を食べる会だそうで、仕事帰りにOBOGの先輩が寄ってくれたりもする楽しい会なのだそうです。

2.卒業して終わり、じゃない、OBOGとの交流

卒業生の先輩たちとも交流がある日本舞踊部。

焼肉会だけではなく、発表会の時には何時間もかけて駆けつけて裏方をして下さったり、卒業して家庭を持っても応援に来てくれる先輩たちがたくさんいらっしゃいます。

卒業したら終わりじゃない、と思える(野澤さん)」ことも、日本舞踊部の大きな魅力の一つです。

3.手探りから始まった。創部のきっかけは?

まりもの唄(老人ホームにて)

若柳吉澄奈(きちすみな)先生の叔母様のお知り合いが、北海道教育大学に在籍されていたことがきっかけで、部の立ち上げを依頼されたのだそうです。

吉澄奈先生「当初は本当に手探り状態でした。男子2人女子2人の4人で始まったんですが、男性の着物なんて持ってないですし、最初は女性の羽織を着てもらってお稽古していました。そこからリサイクル着物屋さんに男性の着物を買いに行ったり。

たとえ介護施設であっても、みなさんには振袖だったり、きれいな着物を着てほしいので、衣裳も徐々に徐々に増やしていきました。」

京の四季(老人ホーム)

その「施設」での公演も、日本舞踊部のおおきな特徴のひとつです。

4.どんどん増えちゃった?年間10回以上の公演活動

青海波(釧路刑務所にて)

北海道教育大学釧路校 日本舞踊部の活動でひときわ目を引くのが、年間10回にものぼる、地域公演活動です。

本番は、お稽古では得られない貴重な経験が得られる場です。それをとても大切にしている日本舞踊部。

それにしても年間10回という数字は驚きですが、ここまでになったきっかけを吉澄奈先生はこう語ります。

吉澄奈先生「10年前、部ができたときに最初、介護施設へ行ったんです。それを、施設の方がすごく喜んでくださって。学生たちの真摯な態度に、すごく感動してくださったんです。

それが、毎年毎年呼ばれるきっかけになりました。他からも『やってくれないか』って言われるようになって、そうしているうちにどんどん、どんどん増えていっちゃったんです。

老人ホームなどの福祉施設、祭りをはじめ、2016年からは刑務所への慰問も行い、刑務所慰問では矯正教育に貢献したとして、感謝状を授与されるほど

刑務所での感謝状授与式

盛んな地域活動を支える日々のお稽古は、先生のご自宅の稽古場で行われています。

教育大学の学生さんは、大学の授業以外にも教員を目指すための教育実習など、非常に多忙です。そのため、お稽古も公演も、すべてに参加できるわけではありません。参加できるときにしっかりお稽古できるように、先生が予定を合わせてくださるのだそうです。

5.やりがいや印象的な思い出を聞いてみました

千代の鈴舞(釧路厳島神社にて)

日本舞踊の活動の魅力・やりがい、印象に残っている思い出などを聞いてみました。

野澤さん「慰問とかお祭りとかに参加することが多く、お年寄りや地域の方と関わる機会が多くて、喜んでもらっている姿を見たり、声をかけてもらったりすることが嬉しいですね。地域に根差して貢献できてるな、って思えます。

やりがいは成長を感じられることです。1年生で入部して、初めて踊りや着物に触れるところから始まりました。そのころは、先輩に前に立ってもらって、自分は後ろで踊るのが当たり前だったんですが、学年が上がって西田さんと二人で踊れた時に、成長を実感できました。

特に印象に残っているのは、ある老人ホームのお祭りに参加したときです。

その時はなかなか一緒になる機会のなかった学年の部員とも集まる機会があって交流を深められたのと、見ていただいているお客さんの表情、拍手をとても身近に感じられました。

よさこい鳴子踊り(夏祭りにて)

嶋田さん「踊りを、どう表現するのか、どう考えて身体を動かすのか、が難しいですね。私は背が高くて、周りと合わせるためにけっこう姿勢を低くしないといけないことも多くて。でも、できなかったことが、できるようになっていくことが楽しいです。

まだ入部して日が浅くて、地域貢献などには参加できてないんですけど、たくさんお稽古に通って、できるだけ参加しようと思っています!」

西田さん「印象的な経験は、刑務所に慰問に行ったことですね。

ソーラン節(釧路刑務所にて)

それまで老人ホームでしかやってなかったから、すごく不思議な空間でした。いつもなら拍手があったり、「知ってる知ってる!」とか「かわいい」「かっこいい!」って声かけてくれるのが、静寂の中ピクリとも笑われないし、拍手も、刑務官の人が拍手すると初めてブワァーって一斉に拍手が上がったり。表情には出さないけど、楽しんでる人もいるのかな?って思ったら、これも社会貢献だな、ここは経験できる幅が大きいんだな、って感じました。

やりがいは、見てくれたお客さんに「良かった」という声をもらえることですね。人から褒められたりしないと、なかなか自分の姿って見ることがないと思うんです。
お稽古はインナーマッスルを使って、しんどいなって思うこともあるんですが(笑)、人に喜んでもらうためにやっているので、「良かった」という声をもらえることが私の続ける喜びかなって思いますね。

6.”大学で日本舞踊を習う意味”とは?

おさらい会の宣伝

全国、いろんな方が日本舞踊を習っていますが、「大学生 」がこの時期に日本舞踊を習う意味は何だと思いますか?吉澄奈先生に聞いてみました。

吉澄奈先生「すごく意義があることだと思います。

学校の先生になる方、生徒を教える立場になる人が多いので、そういう方が、ここで日本の古典、着物の一つにでも、触ってみる、ということ自体がすごく大事だと思っています。

これから世界に出ていく人ばかりですし、よく言いますよね、『自分の国の文化を知らないとお話ができない』って。ここで少しでも知っているかどうかだけでも、天と地ほどの差があります。

私自身も、彼ら彼女と一緒に10年やってきて、物凄く勉強になりました。

私にとって大きな衝撃だったのは、上手いとかじゃなくて若い子たちが「真摯な姿できちんと踊るということ」が、見る人にすごくアピールになる、感動を与える、ということです。

例えば、カラオケの世界の人たちに踊りを頼まれて、男子学生が「白鷺の城」「黒田節」なんかを踊ると、「イケメンが踊ってる!」って。本当にそれくらいかっこよく見えるんですよ。

目線だとか、しぐさだとか、かっこよく見えるように私が指導したものを、真摯にきちんとやっていることが、それだけ感動を与えるんです。

そうやって、一つのことを続けていって、軸になるものに沿って、自分のクセをそぎ落としていくということを体感する。余計な演技をせずに、地に足をつけて、納得するまでやる。そういうことの大切さを少しでも分かってもらいたいと思います。

北海道教育大学釧路校 日本舞踊部を取材して

終始笑顔の絶えないインタビューとなりました
(左から野澤さん、嶋田さん、吉澄奈先生、西田さん)

日本舞踊部は、取材に先生を含めて4名の方が集まってくださったように、とても仲が良く、少人数でも、濃く充実した活動をされていることが伺えました。

現役・卒業生の垣根を超えて、日本舞踊部のコミュニティが続いていることも、とても素晴らしいことだと感じました。その要因としては、吉澄奈先生や、教育者を目指される人の多い、学生の皆さんたちのおおらかなお人柄があると思います。

取材時はまだまだ活動に制限がある状況ではありましたが、少しでも早く、地域活動や公演活動の再開を願っています!

北海道教育大学釧路校 日本舞踊部に興味がある方へ

日本舞踊部は、今回取材に参加してくれた3人の方々がそうであるように、新歓の時期に遅れても、1年生でなくても、入部可能です。

留学中の外国人の学生さんや、卒業前の数か月だけ入部されていた方もいらっしゃったそうですので、ちょっとでも触れてみたい方は、足を運んでみてはいかがでしょうか。古典の学びを教育に活かしたい方などもお勧めだそうです。

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