清元「子守」歌詞と解説

清元「子守」歌詞と解説

日本舞踊で人気の清元「子守」の歌詞と解説です。

清元「子守」解説

江戸時代の子守

江戸で子守として働く、新潟出身の娘の舞踊歌です。

現代では考えられませんが、江戸時代は7〜15才の娘が子守として出稼ぎをしていました。

子守の仕事につく娘は、貧しい家の出身が多かったため、虐められることもある辛い仕事でした。

子供をあやしながらも、恋への憧れや、越後の綾竹踊りを、故郷を思い出しながら踊ります。多感な娘の心情が描かれた演目です。

1.子守のシーン

冒頭では、せっかく買った油揚げを鳶(とんび)に取られてしまいます。

娘は「オヤッかなと何としょえ…」と、鳶を追いかけますが、転んでしまいます。

娘に背負われていた赤ん坊はびっくりして、泣いてしまいます。

「泣くなよい子じゃ こんな物やろうな…」と娘が赤ん坊をあやしています。

2.クドキのシーン

赤ん坊を脇へ置き、自身が楽しんで踊っています。

娘の恋への憧れが表現されています。

3.望郷のシーン

「お前越後(新潟県の地名)か私も越後 お国訛が出てならぬ」の部分では同郷の人と出会い話が弾んでいます。

「今は新潟の夢も見ぬ」と、すっかり江戸の生活に慣れているようですが、故郷を思う寂しさが残っているという解釈もあるようです。

4.子守のシーン(最後)

最後に、また鳶が飛んできます。

娘は「また取るつもり!?図太いやつ!」(またも鳶めとろゝとは太い奴)と鳶に対して怒っています。

赤ん坊を抱き上げ、味噌こしであやしながら豆腐屋へ向かおうとするところで幕となります。

 

「太い奴」と「豆腐屋」は掛詞になっています。

「子守」は、初代・清元斎兵衛作曲、増山金八作詞の舞踊曲の「大和い手向五字」を構成する5つの舞踊曲の1つです。「七夕星祭祀(たなばたほしまつり)」とも呼ばれます。

なぜ「七夕星祭祀」と呼ばれるのでしょうか。

この舞踊曲では「新潟出るときや…」の場面で、故郷の新潟を思いながら「新潟おけさ」が踊られます。この「新潟おけさ」は「綾竹」という道具を使って踊られるのですが、「綾竹」を使って踊る踊りの総称を「綾竹踊り」と言います。

また「綾竹踊り」は「七夕踊り」とも呼ばれているため「子守」は「七夕星祭祀」とも呼ばれています。

小道具(一部)

清元「子守」歌詞

オヤッかなと何としょえ

アイタゝゝゝ膝頭を擦りむいた

憎い鳶づら油揚さろうた

おゝ泣くなよい子じゃ

こんな物やろうな

お月様幾つ 十三七つ

まだ年ゃいかぬ山出しが

わたしゃ何うでも斯うでも

あの人ばかりは諦めきれぬ

じゃによって讃岐の金比羅さんへ

願でも掛けましょうか

仇口の花さえ咲かぬ生娘の

枝姿振もぶっきらぼう

鼻緒切らして方々掲げて

がっくりそっくり

みどり子おろして

これからは

並べたてる人形店

サアサア安売りじゃ

何でも可でも選取りじゃ

みどりは禿紅は

花の姿の姉様を

口説き文句は浄瑠璃で

聞き覚えたその侭に

 

ほんに思えばあとの月

宵庚申の日待の夜

甚句踊や小唄踊や小唄節

数ある中にこなさんの

お江戸で言わゞ勇み肌

好いた風じゃと瀬戸家から

見かじり申してなま中に

気もあり松の藍絞り

色に鳴海と打ち明けて

晩げ忍んで来めさるならば

コレナ嬉しかろではないかな

なぞと浮かれて座頭の坊

冴えた月夜にやみ市ではないかいなア

やみ市なりゃこそ真黒なア

炭屋のお客と行くわいな

座敷で何をひかんすえ

盆の踊になまめかし

お前越後か私も越後

お国訛が出てならぬ

 

新潟出る時ゃ涙で出たが

今や新潟の夢も見ぬ

オオイ船頭さん

寄ってかんせの

戻りに鯨でも積んでごんせの

踊りおどらば品よくおどれ

品のよいのを嫁にとろ

松前殿様持ち物は

鳥賊 蛹 海鼠にちんの魚

寄らしゃんせ面白や

またも鳶めとろゝとは

太い奴と豆腐屋へ

子を引っかたげて(急ぎゆく)

作品情報

 
作曲者 初代・清元斎兵衛
作詞者 増山金八
本名題 七夕星祭祀(たなばたほしまつり)
初演情報 役者:岩井紫若
劇場:江戸森田座
大道具 江戸の街屋の場面
小道具 鳶(とんび)の差金
油揚
味噌こし
抱き人形
日和下駄、又は草履
土人形、又は紙人形
綾竹
かつら 桃割れ(蝶々まげ)
赤月形櫛
花すすき
赤つぶ鹿の子
衣裳 黒襟付大柄な縞、又は黄八丈

参考図書

西形節子著「日本舞踊の世界」 講談社 1988
森治市朗著「日本舞踊曲覧集」 創思社 1965
村尚也著「踊るヒント見るヒント」 演劇出版社 1995
別冊演劇界「日本舞踊曲集成」 演劇出版社 2004
をどりの小道具 能楽書林 1953

ライター:伊東ちひろ

仕事が落ち着き、何かしたいなと思っていた頃、日本舞踊の動画を見たことがきっかけで即入門。OLをしながら週1でお稽古に通う。着物も大好き。「もうこれ以上着物は増やさない!!」と何度誓ったのか、わからない。好きな演目は「京の四季」。

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