【スッキリ解決!】長唄・端唄・常磐津・清元・大和楽の違い【日本舞踊でおなじみ】
日本舞踊の音楽にはいくつも種類がありますよね。主だったものといえば、長唄・端唄・大和楽・常磐津・清元…
日本舞踊初心者は、「結局何が違うの?」という疑問が湧いてくると思います。ここではそれぞれの共通点、違いを踏まえてご紹介し、初心者が抱き方な悩みをスッキリ解決したいと思います。
とりあえずそれぞれの特徴を一言で言うと?
この記事はまずはざっくり解説することを目的としているので、詳しい歴史の紹介などは別記事に譲るとして、各音楽の特徴を「一言」で紹介してみたいと思います。
長唄
江戸時代、歌舞伎の舞台音楽から独立した、人気曲シリーズ
代表的な曲「神田祭」「越後獅子」「七福神」「雛鶴三番叟」など
端唄
江戸庶民に愛された短い流行曲たち
代表的な曲「奴さん」「梅にも春」など
大和楽
昭和の大富豪によって創始された日本伝統音楽と西洋音楽の融合
代表的な曲「あやめ」など
常磐津
浄瑠璃音楽。ゆったりとした重厚な曲が多く、歌舞伎とともに大発展し、劇舞踊の伴奏にはなくてはならない存在となった。
代表的な曲「廓八景」「粟餅」夕月」など
清元
浄瑠璃音楽。所作事に多く用いられる、叙情的、技巧的、洗練された高音が特徴の語り物。
代表的な曲「青海波」「玉兎」「幻お七」「椀久」など
なんとなーく、イメージが湧きますでしょうか?もう少し詳しくみていきますね。
全てに共通するのは「三味線音楽」であること
長唄・端唄・常磐津・清元・大和楽に共通するのは「三味線音楽である」ということです。
三味線は16世紀ごろ沖縄から大阪へ伝わった「三線」が改良されてできた楽器で、それまで主流だった琵琶に代わって爆発的に広がりました。メロディーを奏でるメインの楽器として三味線を使うのは全てに共通することです。
「歌い物」と「語り物」に分けられる
これらの曲の種類は、「歌い物」と「語り物」に2つのジャンルに分けるすることができます。
「歌い物」は文字通り「詞を歌う」ことを目的とした曲、「語り物」は、三味線にのせて「物語を語る」ことに重きが置かれています。
歌い物
- 長唄
- 端唄
- 大和楽
語り物
- 常磐津
- 清元
「歌い物」長唄・端唄・大和楽の違い
歌い物である長唄・端唄・大和楽の特徴を一言で表すと以下のようになります。
- 長唄は歌舞伎の劇中音楽が独立したもの
- 端唄は短い三味線曲
- 大和楽は日本と西洋の音楽を融合させた昭和の音楽
長唄は歌舞伎の音楽が独立したもので、上方で発祥、江戸に伝わり、江戸では「メリヤス」とも呼ばれました。日本舞踊でも多くの曲がありますが、一例を挙げると「神田祭」「越後獅子」「七福神」「雛鶴三番叟」などが挙げられます。もちろん始めから長唄として作られた新曲もあります。
端唄は「端」の字からも伺えるように、短い曲で長唄と対を成すものです。発祥はやはり、長唄と同時期ごろとされています。「奴さん」「梅にも春」などが有名ですね。短くて、おさらいしやすいので庶民の間でも親しまれました。
大和楽は昭和に入ってから開発されたジャンルで、西洋の和声(ハーモニー)などを取り入れた比較的新しい音楽です。日本舞踊でよく踊られるのは「あやめ」などでしょうか。
この三つに対し、常磐津、清元だけなぜ、「語り物」なのでしょうか??それは常磐津も清元も実は起源は同じだということに関係しています。それでは常磐津と清元の起源は何なのでしょうか?それは「浄瑠璃音楽」です。
「語り物」常磐津、清元は「浄瑠璃」の音楽
浄瑠璃の起源は戦国時代ごろとされています。「浄瑠璃姫」という人物が主人公の、「浄瑠璃十二段草子」という物語を、琵琶の伴奏にのせて語り演奏されたのが始まりと言われています。人形を用いて演ずる「人形浄瑠璃」も有名ですね。
三味線(創成期は琵琶)によって語られる芸能そのものが「浄瑠璃」と呼ばれるようになり、全国に広まっていくのですが、中には伝説的な浄瑠璃奏者が現れ、流派を形成していきます。
その中に「常磐津節」を創始した「常磐津文字大夫(ときわづ もじだゆう)」と、「清元節」を創始した「清元延寿太夫(きよもと えんじゅだゆう)」がいました。これが今まで続いて、常磐津、清元、と呼ばれているのです。
ちなみに、同じように浄瑠璃の名演奏家によって流派となっているもので有名なものには「義太夫」「富本」「新内」「河東」などがあります。
常磐津、清元は歌舞伎にも取り入れられる
常磐津、清元は浄瑠璃の曲とはいえ、江戸の一大娯楽であった歌舞伎とも、実は無関係ではありません。実は芸能としては浄瑠璃の後発である歌舞伎には、先輩である浄瑠璃の演目を取り入れたものや、演出に影響を受けたものが多く存在します。
そのように、「歌舞伎音楽としての常磐津」、「歌舞伎音楽としての清元」として、発展していった側面もありました。
生まれた時代順に並べてみると
時代も考慮するとこんな感じになります。
- 浄瑠璃の成立(戦国時代)
- 歌舞伎から「長唄」誕生(江戸初期〜中期?)
- 「端唄」の誕生(江戸初期〜中期?」
- 浄瑠璃から「常磐津」誕生(江戸中期)
- 浄瑠璃から「清元」誕生(江戸中期)
- 〜大なり小なり歌舞伎の影響を受けながらそれぞれ発展〜
- 日本の近代化、西洋化を受けて「大和楽」誕生(昭和初期)
スタイルは違えど、長唄、常磐津、清元は歌舞伎の影響を受けている、というのも共通点ですね。
以上、日本舞踊でよく使われる、長唄・端唄・大和楽・常磐津・清元について、ざっくり解説しました!みなさんの参考になれば幸いです。
邦楽について、さらに詳しく知りたい方はこの本がおすすめです。
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