長唄「島の千歳(しまのせんざい)」歌詞と解説

長唄「島の千歳(しまのせんざい)」歌詞と解説

日本舞踊で人気の長唄「島の千歳(しまのせんざい)」歌詞と解説です。

長唄「島の千歳」解説

島の千歳(しまのせんざい)とは?

白拍子今様男舞之図 歌川国貞

「島の千歳」は、最初の白拍子(平安時代に生まれた、舞を舞う職業)と言われている女性です。演目の内容をざっくりいうと、この「島の千歳」がおめでたい歌を歌う、という内容になっています。

平家物語に、島の千歳(この当時は『ちとせ』と呼んだらしい)と、和歌の前という二人の女性が白拍子の始めであると記載があります。白拍子と言えば、源義経の恋人として有名な静御前も白拍子ですね。

長唄「島の千歳」の概要

明治38年(1905年)東京都本所区(現・墨田区)両国中村楼にて行われた、七代目望月太左衛門(後の三代目望月朴清)の襲名披露で演奏されました。望月流は邦楽囃子方(鼓)です。

長唄「島の千歳」の内容と意

横山大観 蓬莱山

鶴亀が遊び、朝日が昇る和田津海に浮かぶ蓬莱島で、千歳がめでたい今様を歌っている、という構成になっています。

蓬莱(ほうらい)とは、中国の伝説上の島で、仙人が住むといわれる秘境です。日本でもある種の理想郷、桃源郷として知られており、かぐや姫でおなじみの「竹取物語」の中で、求婚してくる男たちにかぐや姫が「蓬莱の玉の枝」を持ってきたら結婚してもよい、と伝える場面があります。

今様(いまよう)は、白拍子が歌った七五調の歌のこと。実際に子の長唄も「水のすぐれておぼゆるは~」からはおおむね七五調となっており、今様形式を取り入れた文となっています。

その今様の内容とは言うと、変わらぬ御代のめでたさを讃え、中国の水の故事や、水の名所を引いて水づくしとなり、最後は汲んでも汲んでも尽きることのない春の若水めでたく締めくくられます。

なお、歌詞の中の「鼓腹の声々うち寄する」とは、おなかが満たされ満足し、腹鼓を打って太平を楽しむ、という意味で、鼓師の襲名披露であるために選ばれた言葉であろうと思われます。

作詞に関しては逸話がありまして、作詞者の大槻加電は、京都の名家・飛鳥井家に伝わる秘曲「雨の曲」(この曲を演奏すると雨が降る)が書きつけられた扇の絵からヒントを得たと言われています。その絵は、大海に小さな岩があって丹頂鶴が舞い、月が出ているというもので、この曲の冒頭に、まさにそのシーンが描かれています。

歌詞の意味はさまざまな故事や書籍からの引用が複雑に絡み合い、一筋縄では解釈が難しいため、その大意に留めます。勇気ある方はぜひ詳しい解釈に挑戦してみてください。

長唄「島の千歳」歌詞

丹頂緑毛の色姿 朝日うつろふ和田津海 

蓬が島の千歳が うたふ昔の 今様も 

変はらぬ御代の御宝 鼓腹の声々うち寄する 

四方の敷波立つか 返るか 返るか立つか 

返す袂や立烏帽子 

 

水のすぐれておぼゆるは 西天竺の白鷺池(はくろうち) 

しんしょう許由に澄み渡る 昆明池(こんめいち)の水の色 

行末久しくすむとかや 賢人の釣を垂れしは 

厳陵瀬(げんりょうらい)の河の水 

 

月影流もるなる 山田の筧の水とかや 

芦の下葉をとづるは 三島入江の氷水 

春立つ空の若水は 汲むとも汲むとも尽きもせじ尽きもせじ

歌詞・解説カテゴリの最新記事