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お座敷文化の継承を目指して~赤坂芸者「ふみ香」のこれまでと、「塩見文枝」のこれから

お座敷文化の継承を目指して~赤坂芸者「ふみ香」のこれまでと、「塩見文枝」のこれから

「お座敷文化」の継承と発信活動に取り組む、塩見文枝さんにお話を伺いました。

塩見さんは小さいころから芸事全般に親しみ、大学卒業後、IT企業や呉服業界勤務を経て、赤坂の芸者さん(芸名:ふみ香)に。和文化好きが高じて、芸者さんをしながら、新宿四谷荒木町にカフェバー「穏の座」を立ち上げ、これまでお座敷体験をはじめ、さまざまな和文化イベント、ワークショップを実施してきました。

そして今年、お座敷文化の継承、さらなる発信のために、12年勤め上げた芸者さんを辞め、小舞台付きお座敷のレンタルスペース「津の守」開業に向けて奔走されています。そこには「お座敷文化」のみならず、「日本舞踊」への想いと思い入れがありました。

芸者さんでありながら、経営者としても和文化を発信し続けてこられた原動力とは?新たな挑戦と日本舞踊への想いとは?詳しくお話を伺いました。

目次
・IT業界から赤坂芸者へ!?背景には目に見えない積み重ねがあった
・自分にしかやれないからこその挑戦。カフェバー「穏の座」は和文化好きが集う
・いまやらなければ、お座敷文化が本当に危ない
・歌舞伎座と同じ舞台、引幕・・・日本舞踊への思い入れが各所に
・町の教室も利用可能。お稽古からリサイタル、オンライン配信まで本格的な舞台で
・取材を終えて。「お座敷と日本舞踊」の関係を表す象徴的な場

塩見文枝さん プロフィール


「日本を知る、江戸の遊ぶ」をテーマに活動中。 日本人なのに知らない日本のこと。 興味津々だけどとっつきにくい日本の伝統。 まとめてまるっとわかりやすくご案内しています。 お座敷文化を楽しむ「津の守」プロジェクト立ち上げました。 日本文化サロン&かふぇバー「穏の座」主宰 。 文人茶教授「薛風」。日本の伝統芸能と工芸のプロデュース。呉服プロデュース。芸者衣裳制作。日本文化イベント制作。 オンラインマーケティングコンサルタント。デジタルシフトアドバイザー。

IT業界から赤坂芸者へ!?背景には目に見えない積み重ねがあった

芸者”ふみ香”さん時代のお写真(荒木町にて)

うめざわ

プロフィールを拝見してまず感じたのは、赤坂の芸者さん、経営者、日本文化イベント制作、 オンラインマーケティングコンサルタント、デジタルシフトアドバイザー・・・など、なぜここまでマルチに活躍できるのだろう?ということでした。
 
確固としたキャリアプランがあって、ご経歴を築いてこられたのでしょうか?特に「IT」と「和文化(呉服、芸者さんなど)」に両方通じているというのは大変珍しいことではないでしょうか。

塩見さん

自分の力で開拓してきたように見られることもあるんですけど、実は、成り行きに任せて来たら、こうなっていたんですよ。
 
節目節目に、面白そうなこと、誰かの役に立つこと、自分にしかできない仕事にご縁をいただいて、仕事に選ばれてきたような感覚なんです。

塩見さんは小さいころから演劇に親しみ、芸事も大好きでした。「東京で観劇三昧の生活をして、将来は役者になる!」という夢を持って高校卒業とともに地元・岡山から上京、お茶の水女子大学 舞踊教育学コースへ進学。諸事情あり、役者の夢は諦めましたが、卒業後はアルバイト先だったIT広告企業へ就職します。

塩見さん

私、ITも広告も大好きで。夢中で仕事しているうちに個人でも仕事を請けるようになり、やがてフリーランスとして独立しました。着物好きが高じて呉服業界で働いていたときも、IT・広告で培ったスキルを活かして、老舗呉服店のプロデュースや、イベント企画などいろんなことを山ほどやりました。
 
芸者にならないか、とお姐さんに誘われて、40歳で赤坂の芸者になった時も、お店に若い芸者さんを入れるためにSNSを活用したり、自分のこともどんどん発信してお客さんを作ったり。関係ないように見えて、全部がこれまでやってきた仕事の積み重ねなんです。
芸者”ふみ香”さん時代のお写真

自分にしかやれないからこその挑戦。カフェバー「穏の座」は和文化好きが集う

お座敷のあるかふぇ&バー「穏の座」2022年で8年目を迎えた|新宿区荒木町
 

うめざわ

2014年には、芸者さんをしながら和文化サロン&カフェバー「穏の座」を開業されました。芸者さんだけでも大変なのに、和文化イベントの主催や飲食店の経営もされるというのは並大抵のことではありません。その原動力は何ですか?

塩見さん

「やりたいから、やっている」としか言いようがないんですよね(笑)その中でも、「私にしかできないことをやる」というのは常に考えています。
 
例えば、「穏の座」は座敷があって、茶席や和のお稽古、芸者さんを呼んでお座敷遊びもできます。その代わり、通常なら客席を28席くらい作れるところを、カウンタ―で8席だけ。バーの料金も普通より安いくらい。
 
商売としてそんな効率が悪いこと、誰もやりたがらないじゃないですか。でも自分ならアイデアと工夫で何とかできるかもしれない、だったら、やってみよう、ということなんです。
お囃子、煎茶、習字・・・さまざまな習い事のお稽古場や、イベント会場としても利用されている

うめざわ

「やりたい」という情熱の背景に、これまで培ってきた経験やスキルの裏打ちがあるのを感じます。

いまやらなければ、お座敷文化が本当に危ない

穏の座Twitterより

うめざわ

2022年末の「津の守」開業に向けて奔走されているとのことですが、このタイミングで開業を決意されたのはなぜですか?

塩見さん

コロナの影響が大きいですね。コロナ禍になり、各地で芸者さんの廃業が相次いでいます。いまやらないとお座敷文化の継承が、もう間に合わなくなってしまう、と強く感じています。

 

うめざわ

いまだコロナの影響は完全になくなってはいません。周囲からの反対などはなかったでしょうか?

塩見さん

心配はされますが、驚くことに、周りから反対はほぼありませんでした。銀行さんはじめ、みなさん応援してくださっています。それに、いま業界は下がり切っている状態。これから先は上がるしかないから、ここで始めることが大事だと考えています。

うめざわ

「塩見さんならできる!」と思われている証拠なのかもしれませんね。

歌舞伎座と同じ舞台、引幕・・・日本舞踊への思い入れが各所に

津の守のお座敷と舞台。芸者さんを呼んで食事はもちろん、舞台としても利用できる(完成イメージ)

うめざわ

いよいよ、いま開業準備中の「津の守」について伺いたいと思います。目的は「お座敷文化の継承・発信」ということですが、「日本舞踊」への思い入れも随所にあると伺いました。
 
「津の守」はクラウドファンディングを成功させ、2023年4月に無事オープンしました。公式サイトはこちら

 

塩見さん

津の守は芸事をするのに特化させようと思っていまして、歌舞伎座舞台株式会社さんにお願いして、本格的な「檜舞台」を作っています。
 
「お座敷」なら畳があれば十分ですよね。でもお座敷での舞踊と、舞台での舞踊では違いがあります。それは、「床を踏む」という動作です。畳だと音が出せませんから。でも、私は地方さんの音と、床を踏む音が合わさって、一つの曲が完成すると思っています。どうせならただの板の間ではなくて、小さくても本格的なものを、と檜舞台を用意しました。
 
また、板付きができるように、引幕も付けています。
歌舞伎座の所作台。これを手掛ける歌舞伎座舞台(株)による舞台が備わる

塩見さんの日本舞踊の原体験

踊りはこんなに人を感動させることができるんだ
塩見さんの日本舞踊の二つの原体験を教えていただきました。一つは高校生のころ、初めて地元の舞台で踊った「お夏狂乱」、幕がおりるとき、客席最前列のお客様がみなハンカチで目元を押さえ、泣いていたのを目にしたときでした。「踊りはこんなに人を感動させることができるんだ」と少なからぬ衝撃を受けたそうです。

「本物の藤の精がそこにいる」表現力に鳥肌
もう一つは大学生のころ。歌舞伎座へ足しげく通っていた塩見さんが、あるとき奮発して一等席を取ったのが坂東玉三郎さんの「藤娘」。「鳥肌が立つくらい、本当に藤の精がそこにいると感じた」といいます。

学生時代の貴重な二つの体験が、津の守の設備の特徴にもつながっています。

町の教室も利用可能。お稽古からリサイタル、オンライン配信まで、本格的な舞台で

津の守の平面図(銘々膳とシアター形式)

うめざわ

「津の守」は、町の日本舞踊教室でも利用できますか?

塩見さん

もちろんです。お稽古やおさらい会はもとより、お師匠さん方にはぜひ、ここで小さなリサイタルをやってほしいな、と思っています。
 
大きな舞台だと難しい、でも公民館でやる発表会だと、ちょっと物足りない、そんなときに、小さくても、檜舞台や引幕、照明、音響などが揃った本格的な舞台が、ここならあります。

うめざわ

大きな舞台では費用面や集客、スタッフの手配などでハードルも高くなってしまいますよね。手ごろな大きさで本格的な舞台というのは、あまりありませんでしたし、町のお師匠さんたちにとっても新しい選択肢になりそうですね。

塩見さん

時代に合わせてオンラインの配信設備もありますので、遠方で見に来れない方へ会の中継もできます。また、「津の守」は飲食店であることも強みです。30名までなら会が終わった後にそのままお食事もできますよ。
 
芸事を見るのがお好きな方は、津の守主催でいろいろなイベントも企画していますので、ぜひそちらにもお越しください!

取材を終えて。「お座敷と日本舞踊」の関係を表す象徴的な場

花街のお座敷文化と日本舞踊は切っても切れない関係です。日本舞踊が芸者さんの魅力を引き立て、その芸者さんたちが日本舞踊を継承してきました。

「津の守」は日本舞踊のための本格的な檜舞台を備えたお座敷という、まさに両者の関係を象徴的に表す場所だと感じました。また、「小さくても本格的な舞台」という芸事披露の新しい選択としても注目が集まります。津の守を中心に、塩見さんの情熱と、経験からどんな企画が飛び出すのかも、楽しみです。

「津の守」はクラウドファンディングを成功させ、2023年4月に無事オープンしました。公式サイトはこちら津の守のクラウドファンディング(終了済み)東京から発信するお座敷文化「津の守」開業へご支援を(READYFOR)

 

塩見文枝さんの各種情報はこちら

公式サイト「しおみインフォメーション
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