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稽古場からスマホを排除せよ!?スマホ脳に要注意!【対策あり】

稽古場からスマホを排除せよ!?スマホ脳に要注意!【対策あり】

日本舞踊教室の先生

今や、子どもでもスマホを持っているのが当たり前。他の教室では、お稽古をスマホで撮影するところもあるらしい。昔じゃ考えられなかったけど、これも時代の流れなのかな。

でも動画で復習できたり、教室の様子をSNSにアップして宣伝になったり、メリットもあるよね?

うちの教室もスマホをどんどん活用しようかな?

うめざわ

ちょっと待ってください!

今日「稽古場からスマホを排除せよ!?スマホ脳に要注意!【対策あり】」というテーマで書きたいと思います。お稽古場でのスマホの活用は、まずこの記事を読んでからにしてくださいね!

「スマホ脳」とはスウェーデンの精神科医アンデシュ・ハンセンの著書のタイトルです。スマホやタブレット、パソコンといったデジタルデバイスが私たちの脳に与える影響を明らかにしたものです。

この本の一部を紹介しながら、スマホが日本舞踊のお稽古に与える影響と、スマホとの上手な付き合い方について考えたいと思います。

スマホ脳

スウェーデンの精神科医アンデシュ・ハンセンの著書。

9人に1人が抗うつ剤を使用しているといわれるスウェーデンではここ10年で若者の心の不調が急増している。急激にデジタル化したライフスタイルにその原因があるのではないか、と考えた著者は、スマホが脳に与える影響を研究し、本書を出版した。

・1日2時間を超えるスクリーンタイムはうつのリスクを高める。そして現代人のスクリーンタイムは1日平均4時間に達している。

・大企業は脳科学者を雇用してアプリ開発を行っている。スマホの依存性は、最先端の脳科学研究に基づき、アプリが脳に快楽物質を放出する〈報酬系〉の仕組みを利用して開発されているからなのだ。

・10代の若者の2割はスマホに1日7時間を費やしている。このまま若者がSNSを使えば、80年の人生では5年はスマホに使うことになるだろう。

・学習現場では、スマホを傍らに置くだけで学習効果、記憶力、集中力が低下するという実験結果が報告されている。

などの研究結果が世界中に衝撃を与えた。

お稽古は「集中」が大事!それがスマホによって台無しに?

日本舞踊という習い事で、最も大切と言っても過言ではないのは「お稽古の時間」です。

師匠と相対して「集中」して踊りを学ぶ時間は、まさに真剣勝負です。

私も個人的な体験があります。忙しい毎日を送る中、目の前の稽古に身体と心を集中させて没頭できる時間は、貴重でした。心身をリフレッシュできる時間です。

このお稽古に集中することを「マインドフルネス」や「瞑想」に例える人もいますよね。

しかし、スマホがこの貴重なお稽古を「台無し」にしているかもしれません。

結論から言うと、あなたがお稽古場にスマホを持ち込むだけで、無意識に「集中力」と「記憶力」が下がっている可能性が高いのです。

本書に掲載されてい象徴的な実験結果を3つ、紹介しますので、まずこちらをお読みください。

実験の結果は・・・ネガティブなものばかり!

大学生500人の記憶力と集中力を調査すると、スマホを教室の外に置いた学生の方が、サイレントモードにしてポケットにしまった学生よりも良い結果が出た。

学生自身はスマホの存在に影響を受けているとは思ってもいないのに、結果が事実を物語っている。ポケットに入っているだけで集中力が阻害されるのだ。

モニター上に隠された文字を素早くいくつも見つけ出す、そんな集中力を要する課題をさせる実験もあった。

その実験を行った日本の研究者も、同じような結論を出している。被験者の半分は、自分のではないスマホをモニターの横に置き、触ってはいけないことになっていた。残りの半分は、デスクの上に小さなノートを置いた。その結果は?ノートを与えられた被験者のほうが課題をよく解けていた。そこにあるというだけでスマホが集中力を奪ったようだ。

ある研究で約30名に、知らない人と10分間自由に話してもらった。テーブルを挟んで座り、一部の人はスマホをテーブルに置き、それ以外の人は置かなかった。

その後、被験者たちに会話がどのくらい楽しかったかを尋ねてみると、視界にスマホがあった人たちはあまり楽しくなかった上に、相手を信用しづらく共感しにくいと感じていた。言っておくが、スマホはただテーブルの上にあっただけで、手に取ることは許されていなかった。

一つ目の実験からは「サイレントモードにしていても、身近にスマホがあるだけで記憶力と集中力が下がる」

二つ目の実験からは「自分のものでなくても近くに『スマホ』があるだけで集中力が落ちる」ことを示唆します。

三つ目はスマホを手に取りたい衝動が、無意識に会話への集中力を奪っている、さらには対話する相手の印象まで悪くしていることを教えてくれます。

日本舞踊のお稽古で「集中力」「記憶力」いずれもとても大切なものです。スマホがそれを妨げているなんて・・・

まったく、スマホは恐るべきもの、と思っておいた方がよさそうです。

生存のために身に付けた特性が邪魔をしている

では、なぜこのようになってしまうのでしょうか?

その理由については以下の「人の3つの特性」を知ると理解できます。

・常に周囲を確認する

・好奇心があり活発である

・人の噂、評価に敏感である

これらの3つの特性は、人類が20万年という歴史の中で、生き延びるために発達させてきた特性です。人は、太古の昔から現代にいたるまで、そのほとんどを、飢餓や戦争、他の肉食動物などの危険にさらされ続けてきました。そのような環境で生き延びるために、人は時間をかけてこの特性を身につけていきました。

常に周囲を確認すること

肉食動物などの敵に襲われないために、一つのことに集中せず、常に周囲を確認している個体のほうが生き残れる確率が高まります。

現代では「集中すること」が、勉強や仕事で成果をあげるためにとても大事なことだとされていますが、そもそも人は「一つのことに集中しない」ほうが得意なのです。

好奇心があり活発であること

「少し遠いけど、あそこの木に登れば新しい木の実が見つかるかもしれない」

「いま茂みが揺れたのは食料となる動物がいるからかもしれない。行ってみよう」

そう考えることが狩猟採集民であった人類にとって生き残りに直結しました。めんどうくさがって動かない個体は、食料が得られず、子孫を残すことはなかったでしょう。

人は「かもしれない」が大好きで、「報酬(いいこと)が得られるかもしれない」と考えただけで、実際に報酬が得られたときと同じか、それ以上の快感を感じるようにできています。それによって人は新しいことに向けて行動を起こし、生存してきたのでしょう。

いまスマホを見れば新しい、役立つ情報が届いている「かもしれない」。常にこう考えるのは、人の特性から考えて、当たり前のことなのです。

人の噂、評価に敏感になること

人口減少の原因の1~2割が、他の人間に殺されることだった時代が長くあったと筆者は指摘しています。

昔は身近な集団内でのいさかい、殺し合いがとても多かったのです。そのような環境の中では、誰と誰の仲がよくて、誰が誰を憎んでいる、というような情報がとても重要でした。

危険な人物から距離をとったり、時には共通の敵を持つ者同士が同盟を組んで身を守るために、私たちは「人の噂」や「自分が集団内でどのような評価をされているのか、立ち位置にあるのか」に非常に敏感になっていきました。

私たちがSNSのとりこになるのは、この「人の噂」「社会的評価」が、私たちの祖先の生死をわけていたからなのです。

ここまで、スマホによって記憶力、集中力が落ちるということ、その根拠について見てきました。

「常に周囲を確認する」という特性が、スマホに常に注意を向けさせます。

「好奇心があり活発である」という特性が、スマホを開いて新着情報を確認したい衝動を掻き立てます。

「人の噂、評価に敏感である」特性がSNSを見たい欲求を刺激するのです。それも無意識に、です。

スマホは絶対ダメなのか

スマホはそこまで悪なの?必要に応じて工夫して使えばいいのでは?

こういう意見もあると思います。

お稽古の様子を撮影して家で復習したり、スマホやタブレットを使ってオンライン稽古をしている教室もあります。

部分的に悪い影響があるかもしれないとはいえ、一様に使用禁止!というわけにもいかないのが現状ではないでしょうか。

実験結果から上手な付き合い方を考える

「お稽古場にスマホがあると、その影響で集中力や記憶力が低下してしまう。」

残念ながら、このことは実験の結果からも明らかに思えます。

「人間の脳はデジタル化に適応していない」というのが、著者のハンセンの結論でもあります。何十万年もかけて身に付けられた生存のための本能から完全に自由になることは、私たちには難しいでしょう。

そうすると、理想の対応は「スマホの電源は切って、さらにお稽古場に持ち込ませない」ということになりそうです。

日本舞踊教室の先生

お稽古の時間は、とっても特別な時間です。厳しいかもしれませんが、これからは、スマホは電源オフ、稽古場内は持ち込み禁止にします。

心の健康のためにも、たまにはデジタルデトックスしましょう!

このような教室ポリシーを掲げることも、大いにありだと思います。

一方で、お部屋の都合で物理的に無理だとか、そこまでしなくても・・・という方は、

・先生、お弟子さんともにスマホの電源は切って鞄の中など目に触れないところにしまう
・SNS用の写真はお稽古が完全に終わってから
・写真を撮る時など特別な時だけ電源を入れて使う
・オンライン稽古の時は着信やSNS、メールなどの通知を完全オフにする

のように、お稽古中、スマホに注意が向かないような取り組みをしてみてはどうでしょうか。

スマホというツールは、気軽に動画を撮影できる、撮った写真をすぐにSNSに投稿できるなど、お稽古や教室にとってメリットも多いツールです。

メリットもデメリットも踏まえた上で、上手に付き合っていく方法を考えていくことが重要ではないでしょうか。

まとめ

スマホは同じ部屋にあるだけで、私たちの集中力と記憶力を奪ってしまいます。しかも無意識にです。その理由は、私たちが進化の過程で身に付けてきた生存するための特性の影響でした。

お稽古の時間をより良いものにするために、スマホのメリットも理解したうえで、無意識に向けられるスマホへの注意を、少しでも減らす工夫をしてみてはいかがでしょうか。

日本舞踊の体験価値をもっと上げるために

日本舞踊の体験価値ってなんでしょうか。舞台に立つこと?きれいな着物を着ること?日々のお稽古?先生や仲間と交流すること?

私はそのすべてだと思います。費やす時間という意味では「日々のお稽古」こそが日本舞踊の体験価値の大部分を占める、といってもいいかもしれません。

そのお稽古に、より集中できる、没頭できる、その時間を楽しめる環境作りの参考になれば幸いです。

なお、ここで紹介した「スマホ脳」にはスマホだけではなく、パソコンや電子書籍の脳への影響、「スマホ脳」を運動によって解消する方法など、興味深い内容もまだまだたくさん書かれています。この記事を読んで興味を持った方は、ぜひ書籍で全文にあたってみてください。

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