清元「鳥刺し(とりさし)」歌詞と解説
日本舞踊で人気の清元「鳥刺し(とりさし)」の歌詞と解説です。
コトバンクより引用
清元「鳥刺し(とりさし)」解説
「鳥刺し(とりさし)」とは、鳥を獲る仕事、またはそれを生業とする人のことを指します。鳥のお刺身のことではありません。
江戸時代、小鳥は飼育用や、鷹の飼料として需要がありました。「鳥刺し」は、「鳥黐(とりもち)」と呼ばれる道具を使い鳥を捕まえ、販売していました。
「鳥黐(とりもち)」は元々はモチノキ・クロガネモチ・ヤマグルマなどの樹皮から採った粘り気のある物質のことを指します。これを「黐竿(もちざお)」という長い棒の先につけ、鳥を獲りました。
清元「鳥刺し(とりさし)」は、この「鳥刺し」の曲ですが、鳥刺しそのものを描いたものではなく、吉原のお座敷で、幇間持ちが鳥刺しを真似て踊っている様子を描いております。
いろいろな鳥の名前を並べながら鳥づくし、洒落づくしの楽しい一曲です。
なお、江戸時代には「鳥刺し」という名前の神経衰弱のような遊びもあったそうです。
三升屋二三治作詞。初世清元斎兵衛作曲。天保二年(1831年)江戸市村座初演。本名題「祇園町一力の段」。
清元「鳥刺し(とりさし)」歌詞
さすぞえさすは盃 初会(しょかい)の客よ 手にはとれども初心(しょしん)がおさいてくりょ さいてくりょ
これもんのにかんまえて まっ これもんのにかんまえて
ちょっとさいてくりょうか さいたら子供に羽根やろな
鶸(ひわ)や子雀(こがら)や四十雀(しじゅうから)
瑠璃は見事な錦鳥(にしきどり)
こいつは妙妙(みょうみょう) 奇妙鳥類 何でもござれ
念佛(ねぶつ)はそばで禁物と 目当て違わぬ稲むらを狙いの的と ためつすがめつ
いでや手並みをひと刺しと 一散(いっさん)走りに向こうを見て
きょろつき眼をあちこちと 鳥さし竿も其の儘(まま)に
手足伸ばして捕らんとすれば 鳥はどこへか随徳寺
烏(からす)鳴きさえエヽ
うまい奴めと なぶりオカメから そこらの目白が
見つけたら さぞ鶺鴒(せきれい)であろうのに
日がら雲雀(ひばり)の約束は いつも葭切(よしきり)顔鳥(かおとり)見たさ
文にもくどう駒鳥(こまどり)の そのかえす書きかえり事
なぞと口説きで仕かけたら 堪(たま)った色ではないかいな
実(げ)に御贔屓(ごひいき)の時を得て 座敷の興(きょう)も面白き
息せき楽屋へ走り行く