長唄「浦島」歌詞と解説

長唄「浦島」歌詞と解説

長唄「浦島」は、皆さんのよく知るおとぎ話「浦島太郎伝説」を元にして作られています。

地上へ戻ってくる場面から始まり、乙姫のことを忘れられず、恋しく思う浦島の心情を、渋く品の良い曲調で表現した作品です。

長唄「浦島」解説

1.竜宮城から帰ってくるシーン

「和田の原」から「寝覚心にたどり来る」までは竜宮城から地上へ戻ってくるシーンを描いています。

「後に引かるゝ恋衣」で乙姫のことが心に引っかかっていることがわかります。

「かぞいろ=父母」、「乗路の海=船に乗って出かけた」とありますので、「父母の為に竜宮城からしかたなく帰った」という浦島の気持ちが歌われます。

「独りこがれて」の部分では「船を漕ぐ」と「恋い焦がれる」の掛詞になっています。

2.乙姫のことを思うシーン

「袖に梢の」から「昔恋しき波枕、うたてさよ」の部分では陸に着いてもなお、乙姫を忘れられない気持ちが描かれます。

「比翼の蝶」とは2匹の蝶が翅を並べ寄り添っていることを表し、乙姫と浦島の深い関係を連想させます。

「うつゝ白浪」は夢見心地で現実のことを忘れてしまっている様子を表し、ここから玉手箱を開けて年老いた浦島の様子が描かれていきます。

「波枕」とは一般的には船旅のことですがこの曲では竜宮城のことを指します。

「昔恋しき波枕」とあるので竜宮城の生活が恋しくなっているのでしょう。

作品情報

 
作曲者 四代目・杵屋三郎助
作詞者 瀬川如皐(せがわ じょこう)
初演情報 初演年月 1828年3月(文政11年)
役者 四代目・中村歌右衛門
劇場 江戸中村座
本名題 拙筆力七以呂波(にじりがき ななついろは)
大道具 水江の浦の海岸
小道具 玉手箱、釣竿、白絹こしみの、二本組扇子、木彫御面
衣装 赤地に水色の波の熨斗目

長唄「浦島」歌詞

和田の原

浪路遥かと夕凪に

龍の都を出て汐の

奇するも八十の浦島が

後に引かる 恋衣

濡るるも夢と父母に

のりじの海の船唄や

沖の洲崎に蜑の小舟が

誰が恋風に独り焦がれてよんやさ

ゆたのたゆたのしょんがいな

磯辺離れて木曽路山

寝覚心にたどり来る

袖に梢の移り香散りて

花や恋しき面影の

さっと吹き来る 春風に

霞が生める初桜

花の色香につい移り気な

菜種は蝶の露の床

忘れ兼ねたる比翼の蝶の情比べん仇桜

雪か雲かと 峯の花

せめて薫の 便りもがなと

思い暮らして 恋すちょう

空定めなき花曇り

うつゝ白波幾夜か恋に

馴れし情も

今では幸や独り寝の

ほんに思えばさりとは

昔恋しき波枕

うたてさよ 実にや七世の

浪路を越えて蓬が裏の浦島が

尽きぬ契を語るいえづと

ライター:伊東ちひろ

仕事が落ち着き、何かしたいなと思っていた頃、日本舞踊の動画を見たことがきっかけで即入門。OLをしながら週1でお稽古に通う。着物も大好き。「もうこれ以上着物は増やさない!!」と何度誓ったのか、わからない。好きな演目は「京の四季」。

参考図書

浅川玉兎著「長唄名曲集要説」 邦楽社 1956年
郡司正勝編「日本舞踊辞典」 東京堂出版 1977年
森治市朗著「日本舞踊曲覧集」 創思社 1965
村尚也著「踊るヒント見るヒント」 演劇出版社 1995
別冊演劇界「日本舞踊曲集成」 演劇出版社 2004

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