【取材】日本舞踊にはいろんな「楽しい」が詰まってる~若柳喜美奈(わかやぎきみな)~神奈川県横浜市
神奈川県横浜市で日本舞踊教室を開かれている、若柳喜美奈さんにお話を伺いました。
伝統芸能の師匠らしい落ち着きとともに、スポーツマンのような爽やかさをお持ちの先生です。
喜美奈さんは、おばあさまの影響で3歳から日本舞踊をはじめ、大学は日本大学芸術学部日舞コースへ。卒業後におばあさまから受け継いだ地元の稽古場で、ご自身の教室を開かれました。地元の行事にも積極的に関わられ、最近ではお弟子さんも増えてきた喜美奈さんですが、どのように今に至ったのか、これからの目標は、などを伺いました。
若柳喜美奈(わかやぎきみな) プロフィール
公益社団法人 日本舞踊協会 神奈川県支部所属
3歳のとき舞踊家の祖母の影響で日本舞踊を習い始める
5歳で初舞台
20歳で正派若柳流 名取取得
24歳で正派若柳流 師範取得
2018年 若柳喜美奈日本舞踊教室を開く
好きな演目
清元「玉兎(たまうさぎ)」
初心者さんやお子さんにも分かりやすく、誰でも楽しめるから。何より踊ってて楽しい!
初舞台「菊づくし」(5歳)
-日本舞踊をはじめたきっかけについて教えてください。
3歳のとき、自宅で日舞を教えていた祖母から習い始めました。
そのころは、何やっても「上手だね!」と大変チヤホヤされました(笑)
祖母がやっていた日本舞踊は地元だけの小さな流派だったので、長くやっていくなら大きなところでやった方がいいということで、小学生の3年生から正派若柳流でお稽古を受け、中学1年生の時、正式に入門しました。
自分の世界が開けた!日大芸術学部時代
創作舞踊はすべて学生の手で
-大学は、日芸の日舞コース*でいらっしゃったんですね。
*日本大学 芸術学部 演劇学科 日舞コース
はい。中学の時に日芸日舞コースの創作舞踊の公演を見て、衝撃を受けました。これまで見たことのない演出や衣裳で踊る先輩を見て、日大に入ることを決めました。
-大学時代は一言でいうと、どんな時期でしたか?
一言でいうと、濃い時間を過ごせて、自分の世界が開けた時期でした。
-大学ではどんなことを学ばれたんですか?
最も大きく得られたことは、「創作舞踊」をやらせてもらった経験です。テーマなどを全部自分たちで決めて、曲も持ってきて、振りもつけました。
日芸は2年生から4年生まで実習発表があるんですよ。同級生たちで作品を作って、日舞コースは創舞と立ち方、スタッフのコースもあるんで、照明・装置・音響・制作・舞台監督もすべて学生でやります。これがすごくいい経験になりました。
-クリエイティビティも求められるんですね。
創作舞踊は大学行かなかったらやらなかったことですね。最初は、ぐちゃぐちゃでしたけどね(笑)
-その経験が、喜美奈さんの中で大きな割合を占めているんですね。
日芸の仲間は今でもLINEで連絡を取り合う仲だ
そうですね、あと大学で大きいのは仲間に会えたことですね。
私のいるお稽古場の中は年配の方が多くて、同年代の子がいても途中で辞めちゃったり、踊りをやってる同世代の友達がいなかったんですね。
だから日芸の同級生6人は、いまでもLINEグループ作ってて、すごく仲がいいです。
大学4年生の時、祖母の死をきっかけに日本舞踊の道を進むことを決める
きっかけは「祖母の死」
「幻お七」おばあさまと唯一の共演
大学4年の時に祖母が急に亡くなってしまって。半年後に私の名披露目を控え、祖母もその会で「山姥」を踊る予定でお稽古をしていた矢先でした。
大学卒業後は日本舞踊を続けつつも、就職しようと思っていて就職活動をしていたのですが、祖母のために、ではないですが、早く教えられるようになろうと師範*をとり教室を継ぐことを決めました。
*師範 日本舞踊を教えるための資格
心に残る舞台 長唄「鷺娘」
2016年、師範のお披露目で国立の大劇場で踊らせていただきました。子供のころから白無垢に憧れていました。
鷺娘はちょっと悲しい話。寂しいところと、楽しい恋のシーンと、また最後の地獄の責め苦に・・・という切り替えの踊り分けに気をつけました。でも踊ってるときは無我夢中!
-日本舞踊を教えるにあたって、大切にしていることはなんですか?
まずは楽しくお稽古してもらえることを一番大切にしています。私がここまで続けてこられたのも楽しかったから。あまり難しく考えずに、楽しんでもらうことですね。
また、教える時は、情景を感じてもらえるように、振りを教えるだけじゃなくて、「上手(かみて)を見てください」だけじゃなくて、「上手の花を見るんですよ、花を見て、それをお客さんにも見せてあげるんですよ」とか。
お子さんは、私もそれが嬉しかったんですが、出来たことをなるべく褒めてあげて教えます。あとは自宅の犬と猫に助けられてますね(笑)お弟子さんから学ぶことが多く、日々勉強です。
猫のイグちゃんはお稽古場のマスコット
-楽しいことは大事ですね。具体的はどんな楽しさがあると思いますか?
「自分磨き」かな。お弟子さんには踊りを通じて、より良くなってもらいたいという気持ちがあります。踊りを楽しむことももちろんですけど、それを通して、もっと素敵な自分になってほしいです。
いろんな「楽しい」が日本舞踊には詰まってる
おばあさまから受け継いだお稽古場
役になりきるとか、踊りをきっかけに江戸のことを勉強するとか、いろんな「楽しい」が日本舞踊の中には詰まっていると思うんですよ。その中のどの「楽しい」でも、お弟子さんに刺さってくれたらなあ、って。
私も日本舞踊がイヤになった時期もあったんですけど、師匠が根気強く教えてくれたからまた楽しくなりました。私もお弟子さんには愛情をもって、楽しいを受け取ってもらえるようになりたいなと思っています。
-喜美奈さんが考える日本舞踊の魅力はなんですか?
違う自分になれるところです。普段の自分と踊ってるときの自分って、自分でも違う、って思うんですよね。踊りモードになる、というか。それが自分的にも心地が良くて。
そして、演目によっていろんな人が出てくるので、いろんな人になれる。例えば「北州」という曲は、結構いろんな役が入ってるんですよね。ベースは男のご祝儀物なのですが、花魁が出てきたり、馬子やお侍さんが出てきたり。これは演劇と違うところで、一曲で何役も踊り分けるのも魅力です。
クルッと回ったら違う役に変わってたり(笑)
-日々のお稽古以外ではどんな活動がありますか?
地元商店街のイベント「まちゼミ」
地元での活動があります。老人ホーム慰問に行ったり、お弟子さんと地元のお祭りのパレードに参加することもあります。「まちゼミ」という活動で商店街のお店で日舞健康体操を教えたり。最寄り駅の上永谷駅前の七夕イベントでは「茄子と南瓜」という楽しい曲を踊りました。
-そのようなイベントに関われるのは会のお弟子さんにとっても貴重な経験ですね。
-日本舞踊をやってきた中で、一番の思い出はなんですか?
若柳喜美奈一門・新年会にて
濃い時間を過ごしたのは大学の4年間でしたが、最近で一番は、今年のお正月に、初めて会の新年会ができたことです。
このお稽古場で、一人ずつ踊って、お昼にお寿司をとってみんなで食べました。5人集まったら新年会やろうと決めていたので、ひとつ夢が叶いました。
-それはおめでとうございます!お弟子さんたちも初めての経験ですよね。
はい、お弟子さんたちも緊張してましたけど、私が一番緊張してましたね。自分が踊る方が楽ですね(笑)
-「喜美奈会」の今後の目標はありますか?
新年会は今年はじめてだったので、毎年続けていきたいです。
漠然とは、ホールで自分のおさらい会がやりたいですね。衣裳付けで!
-早く目標が実現するといいですね!本日はありがとうございました。
若柳喜美奈さんの日本舞踊教室にご興味がある方は、下記HPからお問い合わせください。
若柳喜美奈 日本舞踊教室
〒233-0012
神奈川県横浜市港南区上永谷2-2-17
Tel:045-843-7493
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