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国立劇場への取材と回答(2025年4月)

国立劇場への取材と回答(2025年4月)

2023年10月に国立劇場(東京都千代区)が閉場して1年半が経つ。建替え予定だが、2度の入札が不調に終わり、まだ再開のめどはたっていない。伝統芸能関係者はナショナルシアター不在のまま時間だけが過ぎていく焦りを募らせている。
今年2025年には公益社団法人日本舞踊協会と日本舞踊保存会が共同で署名活動をはじめ、4月16日には5万筆を越えたようだ。

全国の皆さまの温かいご支援のおかげをもちまして、
署名は、50,858筆に達しました。[4月16日(水)現在](引用:公益社団法人日本舞踊協会HP)

国会提出を経てどのような影響があるか見守る必要があるだろう。

「なぜ閉場したままなのか」「ほかに道はなかったのか」

弊社が日本舞踊関係者への取材行うと、そんな切実な、しかし至極もっともな声が多数を占める。資材高騰の影響などに一定の理解を示す声もあるが、その裏には「諦め感」も見え隠れする。

そこで弊社は30人余りの日本舞踊関係者へのヒアリングをもとに「国立劇場問題」に関する疑問をとりまとめ、国立劇場を運営する独立行政法人日本芸術文化振興会へ取材を行った。同法人からは文書での回答となった。以下に、質問と回答文を掲載する。

1.情報開示について

取り壊しや入札情報の更新状況や現状にについて、もっとわかりやすい説明や対話の場を用意してほしい

(回答)国立劇場の再整備事業は、政府による「国立劇場再整備に関するプロジェクトチーム」(主宰:文部科学副大臣)において定める「国立劇場の再整備に係る整備計画」に沿って進めています。

詳細は、文化庁のホームページにおいて公表し ております。
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kondankaito/kokuritsugekijo_saiseibi/

上記の通り、国の方針に沿って計画を進めておりますが、事業の節目で文化庁及び日本芸術文化振興会のホームページなどで状況を公表しております。
「国立劇場の再整備に係る整備計画」では、国立劇場の再整備事業をPFI事業として進めることとしており、応募者は設計・建設・維持管理業務について提案し、有識者による審査を経て事業者を選定します

2.工事計画について

2-1.改修工事の可否:工事そのものの見直しは不可能なのか、現在の施設の改修工事では不足なのか

(回答)舞台機構の老朽化やバリアフリー化、座席の狭さや女子トイレの不足などの問題を解決するためには、部分的な改修では間に合わず、次の改築など中長期のライフサイクルコストを考慮し検討した結果、建て替えが決定されました。

舞台機構などの老朽化には抜本的な対策が必要です。楽屋、稽古場、研修施設の不足、そしてそれらがかかえる他の課題などを解決するためには、現在のこれら設備の配置を変更してスペースを確保せねばなりません。また、開場当時はバリアフリーの概念はありませんでしたし、座席が狭い、女子トイレが不足しているなどなど多くの問題があります。

これらのすべてを解決するには、部分的な改修では間に合いません。たとえ部分改修でしのぐとしても、大掛かりな舞台機構の取り換えなど、全面建て替えに匹敵する事業費や工事期間が必要になると見こされます。そして、いずれは次の改築が必要になりますから、中長期のライフサイクルコストを考え、十分な検討を加えたうえで、建て替えが決定されました。

2-2.仮設施設:仮設での施設を併設して並行した工事はプランできないのか。PFI方式について:そもそもメリットがあるからPFI方式が採用されたと思いますが、それが採用されるに至った経緯を教えて下さい。

(回答)「1」の回答をご参照ください。

2-3.工事業者が決まる前に閉場した理由は何でしょうか。
2-4.入札不決定のあと、再開場はできなかったのでしょうか。

(回答)建物自体だけではなく舞台機構や空調などの設備の老朽化が深刻であり、現国立劇場の閉場並びに代替劇場での公演が必要な状況であったため、事業者が決定する前であっても閉場する必要がありました。

舞台機構では、廻り舞台や迫りが、本来止まるべき位置で止まらないなど、事故につながりかねない動作不良がときおり発生していました。5,6階建てのビルほどもある廻り舞台を支えるレールにはひびがはいっており、いつ動かなくなっても不思議ではない状態です。これらの装置も空調も、修理するための部品はすでに作られておらず、故障すれば再稼働させることはできません。水まわりの配管も古くなり、トイレなどの水があふれだすこともありました。
また、2011年の東日本大震災の被害をふまえて建築基準法が改正され、天井脱落対策の規制が強化されました。しかし、大劇場、小劇場などの客席の天井は、国立劇場の再整備を計画していたため、未改善となっております。

2-5.ナショナルシアターの不在について:ナショナルシアターが再開の見込みなく閉場が続いていることは、日本の芸術文化政策上、どのような影響や問題点があるとお考えでしょうか。また、その影響や問題点を手当てするために、計画・実行されている施策はありますか。

回答なし

3.再開場の可否について、ユニークベニューについて

●工事着工までの期間において、部分的にでも利用ができないでしょうか。
●再開場の可否:現在、取り壊しなどの工事が予定されていない期間において再開場することはできないでしょうか。

(回答)「2」の回答をご参照ください。

●部分的な使用:客席やロビーが使用不可なのであれば、せめて今回のファションショーのように、舞台だけでもオンライン配信のための撮影用として使用できるようにしていただくなどご検討いただけないでしょうか。
●ユニークべニューについて
●批判への回答:活用では評価の声がある一方で、伝統芸能従事者からの批判(伝統芸能には使えないのになぜ他の用途になら使用できるのか、活用には賛成だが神聖な舞台に土足で上がるなど舞台人の誇りを傷つけるようなことはしないでほしい、など)などの批判がありました。これらの批判に対する返答があればお願いいたします。
●ビジョンとマーケティング:それに付随して、国立劇場として日本の伝統文化発信の場と新しいジャンルとのシェアをどのくらいに考えてらっしゃるのか、ビジョンとマーケティングについても伺いたいです。

(回答)国立劇場は、施設老朽化への対応と機能強化のため、再整備事業の実施に向け、令和 5年 10 月末に閉場しましたが、稽古場・研修室につきましては、施設・設備上の安全性が確認されていることから、引き続き貸し出しを継続してまいりました。
また、劇場施設に関しましては、法令上・安全上・機能上の問題がない下記①~③の部分に限って使用可能といたしましたが、舞台機構*¹や空調*²などの設備の老朽化が深刻で、使用において様々な制約が発生しているため、ご希望の具体的な利用方法を予めご相談いただきながら使用条件を整理させていただいております。
① 大劇場:楽屋、舞台面の一部(舞台機構等の設備の使用は不可)
② 小劇場:楽屋、舞台面の一部(舞台機構等の設備の使用は不可)、ロビー
③ 前庭
*¹舞台機構は、廻り舞台や迫りが本来止まるべき位置で止まらないなど、事故につながり かねない動作不良が発生し、また、廻り舞台を支えるレールにはひびが入っており正常に使用できない状態です。 *²空調設備については、公演中に停止するなどの不具合が発生し 安定した稼働ができなくなっています。これらの舞台装置も空調設備も修理に必要な部品の多くはすでに製造中止となり入手することが非常に困難です。また、 2011 年の東日本大震災の被害をふまえて建築基準法が改正され、天井脱落対策の規制が強化されましたが、 客席および大劇場ロビーの天井は、再整備を計画していたため未改善となっており、客席エリアなどは使用できない状態です。こうした条件のなか、劇場施設の使用を検討し、これらの条件をクリアしたものとして、本年 1 月に訪日外国人向けの初春歌舞伎公演鑑賞とセットとしたバックステージツアー、2 月には大劇場の舞台をユニークベニューとして活用したファッションブランドのコレクション発表会(テーマ「日本独自の美意識」)を行ったところです。今回のコレクション発表会では、 動線および舞台上をシートで養生したうえ、 観客の皆様は小劇場ロビーから客席を通らず大劇場舞台上へご移動いただき、舞台上に設置した床几でご観覧いただきました。また、空調設備の不備等についてはご了承いただいた上で、演出上必要な照明・音響等の機材の持ち込み・設置、電源車の確保、お客様の誘導人員の配置等については、主催者様に責任をもってご対応いただくなどして条件をクリアしてまいりました。

もともと制約が非常に多いなか、こうした試行を重ねながら、そこで得たノウハウ・経験を活かして、今後とも伝統芸能の関係者の皆様やその他文化芸術の関係者の皆様など様々な方々に利活用していただけるよう、さらに、こうした閉場中の施設有効活用事業により、国立劇場の PR、 インバウンドの誘客、 ひいては再整備後も視野に入れた伝統芸能の普及や、我が国の文化芸術の世界発信に資する文化観光の拠点を目指してまいりたいと考えております。
なお、国立劇場では、再開場までの間、様々な劇場等をお借りして主催公演や伝承者養成事業等を継続してまいりますが、これらの事業に必要な運営費の確保に大変苦慮している状況にあります。制約の多い施設ではありますが、その貸し出し等による収入は、主催公演等の事業を行うための貴重な財源として活用させていただくこととなります。使用条件・制約も多くご不便をお掛けしますが、 引き続き伝統芸能従事者の皆様のご理解が得られるよう丁寧な説明に努めてまいりますので、 今後とも施設のご利用・ご協力をよろしくお願い申し上げます。

稽古場・研修室・劇場施設のご利用のご希望がありましたら、国立劇場 施設活用係(TEL:03-3265-6793)までお問い合わせください。(なお、 劇場施設の上記①、 ②の予約については、施設維持関連や夏の高温対応などにより、 令和 7 年 10 月以降の予定です。予めご容赦くださ い。)

●活用成果・計画:ユニークべニューとしての活用の成果と今後の計画を教えて下さい。

(回答) これまでの活用の成果は上記回答のとおりです。今後の計画につきましては現時点では具体的な計画はありません。