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【選択回答】習い事における子どもの安全(性加害)に関するアンケート 集計・分析レポート

【選択回答】習い事における子どもの安全(性加害)に関するアンケート 集計・分析レポート

本レポートは、習い事・稽古場における子どもの安全に関する独自調査(n=155)について集計・分析を行い、日本版DBS(Disclosure and Barring Service)制度の現場実装に向けた課題を整理したものである。

サマリー

深刻な被害実態

回答者の31.6%(49名)がいずれかの性的被害・不適切行為を経験または見聞きしており、うち18.7%(29名)が自ら直接被害を経験している。被害経験者のうち相談できた者はわずか30.6%にとどまり、「したくてもできなかった」が22.4%を占める。

DBS義務化への賛成多数

(スコア1+2)は83.2%、平均スコアは1.52(5段階、1=強く賛成)であり、現場からの圧倒的な支持が確認された。一方、安全規程の文書化率は13.5%にとどまり、制度の「受け皿」となるガバナンス基盤の脆弱性が浮き彫りとなっている。

多角的な施策実施の必要性

DBS犯歴確認の義務化のみでは不十分であり、相談窓口の整備(希望率54.2%)、通報制度の構築(49.0%)、および稽古場ガバナンスの底上げ等を多角的にで推進する必要がある。

回答者属性の分析

回答者155名のうち、最大の構成層は指導者(現在+元)が合計86名(55.5%)で過半数を占めた。次いで「現役の生徒の保護者」26名(16.8%)、「元生徒」21名(13.5%)と続く。

立場 人数 割合
教室の師匠・先生・指導者(現在) 79 51.0%
現役の生徒の保護者 26 16.8%
元生徒 21 13.5%
元生徒の保護者 11 7.1%
現役の生徒 8 5.2%
教室の師匠・先生・指導者(元) 7 4.5%
その他 3 1.9%

性別構成

女性106名(68.4%)、男性45名(29.0%)、その他・回答しない4名(2.6%)であった。

年齢層

年齢層 人数 割合
40代 49 31.6%
50代 40 25.8%
60代以上 30 19.4%
30代 29 18.7%
20代 6 3.9%
10代 1 0.6%

習い事のジャンル

複数選択による回答であり、最多はダンス系46名(29.7%)、次いで学習・進学38名(24.5%)、音楽37名(23.9%)、伝統文化・教養36名(23.2%)と続く。スポーツ26名(16.8%)、武道・格闘技25名(16.1%)、美術・工芸14名(9.0%)と、幅広いジャンルから回答を得ている。

多様な習い事への対応が必要

DBS制度は学校教育・保育に先行適用される見込みだが、本調査の回答分布はダンス・音楽・伝統文化・武道など多様なジャンルからの回答があった。これらジャンルに特化した運用ガイドラインの策定が不可欠である。

教室規模

「5〜20人」65名(41.9%)が最多で、「21〜50人」42名(27.1%)と合わせると約7割が中小規模教室である。5人未満の極小規模も17名(11.0%)存在する。51人以上の大規模教室は24名(15.5%)にとどまった。

多くの小規模事業者が制度の「対象外」へ

講師が2人以下の事業者は「日本版DBS」の対象外となり認定事業者にはなれない。しかしこのアンケート結果は対象外となる事業者がかなりの割合で存在することを示唆している。そのような事業者においてどのように安全対策を進めるかが課題である。

18歳未満の在籍状況

「いる(いた)」が142名(91.6%)と圧倒的多数であり、回答者の大半が子どもとの接点を持つ環境に関わっている。

安全対策の現状

安全規程の有無

回答 人数 割合
特にルールはない 67 43.2%
暗黙のルールがある 43 27.7%
わからない 24 15.5%
文書化されたルールがある 21 13.5%

安全規程を文書化している教室はわずか13.5%。「特にルールはない」43.2%と「わからない」15.5%を合わせると、58.7%の教室で安全に関する明確なルールが存在しないか認識されていない。

実施されている安全対策

取り組み 人数 割合
複数指導者・保護者の同席 76 49.0%
上記いずれも未実施 37 23.9%
映像・音声の録画・録音 36 23.2%
SNSルール設定 25 16.1%
わからない 18 11.6%
子ども向け相談窓口の周知 15 9.7%
二人きりにならない仕組み 11 7.1%
犯歴確認(DBS含む) 1 0.6%

最も実施率が高い対策は「複数指導者・保護者の同席」(49.0%)であるが、それでも半数に届かない。また、性犯罪・不適切行為の防止を目的として仕組化、義務化されているというよりは、「保護者が同席することもある」といった程度のルールであることも考えられる。

「いずれも未実施」が23.9%、「わからない」が11.6%であり、約3分の1以上の教室で具体的対策が取られていないか把握されていない。

日本版DBSの認知度

認知度 人数 割合
知らない 54 34.8%
概要は知っている 48 31.0%
名前は聞いたことがある 46 29.7%
詳しく知っている 7 4.5%

「知らない」が34.8%であり、3人に1人がDBS制度自体を認識していない。「詳しく知っている」はわずか4.5%にとどまる。認知している層を合わせても「名前程度」が多く、制度内容の正確な理解は限定的である。

被害・不適切行為の経験

行為類型別の経験率

9つの行為類型について、「自分が経験した」「見た・聞いた」「ない・知らない」「答えたくない」の4択で尋ねた。いずれかの行為について経験または見聞きした回答者は全体の31.6%(49名)に達し、自らが直接被害を経験した者は18.7%(29名)であった。

行為類型 自分が経験 見た・聞いた 答えたくない 計(経験率)
身体への不必要な接触 15 (9.7%) 9 (5.8%) 2 24 (15.5%)
わいせつな言動・性的発言 13 (8.4%) 8 (5.2%) 2 21 (13.5%)
私物スマホで子ども撮影 10 (6.5%) 12 (7.7%) 2 22 (14.2%)
プライベートSNSやり取り 8 (5.2%) 12 (7.7%) 1 20 (12.9%)
その他の不適切行為 8 (5.2%) 13 (8.4%) 3 21 (13.5%)
性交・強制的性的行為 7 (4.5%) 7 (4.5%) 2 14 (9.0%)
のぞき・盗撮 7 (4.5%) 4 (2.6%) 2 11 (7.1%)
性器・裸の写真等を見せる 6 (3.9%) 4 (2.6%) 2 10 (6.5%)
二人きりで会う 2 (1.3%) 8 (5.2%) 3 10 (6.5%)

「身体への不必要な接触」(15.5%)と「わいせつな言動」(13.5%)が高率であるのみならず、性交・強制的性的行為も9.0%に達しており、習い事環境における深刻な被害実態が明らかとなった。

また、全項目で「答えたくない」が1〜3名存在しており、実際の被害率は報告値を上回る可能性が高い。「答えたくない」を含めた場合の潜在的被害経験率は、いずれの類型においても報告値より1〜2ポイント高くなり得る。

立場別クロス集計

立場 被害経験率 該当者/全体
元生徒 66.7% 14/21
教室の指導者(元) 57.1% 4/7
現役の生徒の保護者 42.3% 11/26
元生徒の保護者 36.4% 4/11
教室の指導者(現在) 16.5% 13/79
現役の生徒 12.5% 1/8

元生徒の被害経験率66.7%は突出して高く、過去に被害を受けた当事者が本調査に声を寄せていることを示している。一方、現在の指導者の16.5%も「見聞きした」経験を含む数値であり、指導者自身が教室内の問題を認識している事例が一定数存在する。

ジャンル別クロス集計

ジャンル 被害経験率 該当者/全体
学習・進学 52.6% 20/38
美術・工芸 42.9% 6/14
音楽 40.5% 15/37
武道・格闘技 40.0% 10/25
スポーツ 38.5% 10/26
伝統文化・教養 25.0% 9/36
ダンス 17.4% 8/46

学習塾(52.6%)、美術・工芸(42.9%)、音楽(40.5%)、武道(40.0%)と、個人指導・密室指導の比率が高いジャンルで被害経験率が顕著に高い。

加害者の立場

加害者の立場 件数
師匠・先生・指導者 32
先輩の生徒 7
教室関係者(保護者・スタッフ等) 6
同輩の生徒 4
該当なし・わからない 61

加害者として最も多く挙げられたのは「師匠・先生・指導者」(32件)であり、権力関係を背景とした加害構造が明確である。「先輩の生徒」(7件)や「教室関係者」(6件)を含め、教室内の上下関係がリスク因子となっていることが示唆される。

DBS犯歴確認の対象は「指導者」に限定されるが、先輩や同輩による加害も発生している。指導者・スタッフだけでなく、生徒・保護者に対する性教育、命の教育が重要である。

相談・報告行動

相談・報告の有無 人数 割合(経験者中)
相談・報告した 15 30.6%
したくてもできなかった 11 22.4%
該当なし 9 18.4%
必要ないと思った 8 16.3%

被害経験者のうち、相談できたのはわずか30.6%。22.4%が「したくてもできなかった」と回答している。「必要ないと思った」16.3%は、被害の矮小化・正常化(「指導の一部」という認識)が一因と考えられる。

相談先

相談先 件数
その他 15
教室の別の指導者・代表者 8
保護者・家族 7
警察 4
弁護士・法的機関 3
児童相談所・こども家庭センター 2
学校の先生・スクールカウンセラー 1

公的機関への相談は極めて少なく、児童相談所はわずか2件、警察4件にとどまる。「教室の別の指導者」(8件)や「保護者・家族」(7件)といった身近な相手に頼る傾向が強い。「その他」15件が最多であり、SNS、知人、被害者ネットワーク等のインフォーマルな経路が主要な相談先となっている可能性がある。

相談しなかった理由

理由 件数
誰に相談すればよいかわからなかった 12
被害を認識できなかった 8
報復・関係悪化が怖かった 7
信じてもらえないと思った 5
稽古場を辞めることになると思った 3
指導の一部・仕方がないと思った 2

「誰に相談すればよいかわからなかった」(12件)が最多であり、「窓口の未周知」が障壁となっている。「被害を認識できなかった」(8件)は、子ども・保護者への啓発教育の必要性を示す。「報復が怖い」(7件)「稽古場を辞めることになる」(3件)は、師弟関係の非対称性が告発を抑制する構造を端的に表している。

被害の影響と支援ニーズ

被害による影響

影響 人数 割合
該当なし 82 52.9%
教室を辞めた・辞めざるを得なかった 15 9.7%
精神的・心理的つらさ 11 7.1%
そのジャンルへの参加をためらうように 10 6.5%
日常生活・学業・仕事に支障 9 5.8%
特に影響はなかった 9 5.8%

被害を経験・見聞きした回答者のうち、「教室を辞めた」15名、「精神的つらさ」11名、「ジャンルへの参加をためらう」10名、「日常生活に支障」9名と、被害の影響は習い事の継続のみならず生活全般に波及している。加害者ではなく被害者が教室を去るという逆転現象が生じている。

必要と感じる支援

支援の種類 人数 割合
匿名で相談できる専門窓口 84 54.2%
加害者を報告できる仕組み 76 49.0%
カウンセリング・心理支援 62 40.0%
法律相談 59 38.1%
稽古場の変更・転籍支援 49 31.6%
その他 18 11.6%

「匿名で相談できる専門窓口」が54.2%で最多であり、過半数がこの支援を求めている。「加害者を報告できる仕組み」(49.0%)がこれに次ぎ、通報・報告制度の整備への要望が極めて強い。「カウンセリング」(40.0%)「法律相談」(38.1%)「転籍支援」(31.6%)と、多層的な支援体制への需要が確認された。

子供のSOSの相談窓口 文部科学省、「こどもの人権110番」法務省、NS相談「Cure time(キュアタイム)」内閣府といった行政の相談窓口はあるものの、その存在が周知されていない実態が示唆される。

DBS制度への意見

DBS義務化への賛否

5段階評価(1=強く賛成、5=強く反対)で尋ねた結果、平均スコアは1.52(n=155)であり、圧倒的に賛成寄りの分布を示した。

スコア 人数 割合 累積
1(強く賛成) 108 69.7% 69.7%
2(賛成) 21 13.5% 83.2%
3(どちらでもない) 21 13.5% 96.8%
4(反対) 2 1.3% 98.1%
5(強く反対) 3 1.9% 100.0%

「強く賛成」(スコア1)が69.7%と約7割を占め、「賛成」(スコア2)と合わせると83.2%が賛成寄りである。「反対」「強く反対」は合計5名(3.2%)にとどまり、制度への抵抗感は極めて限定的である。指導者が過半数を占める回答集団においてなお、83.2%がDBS義務化に賛成している。「現場の負担増」への懸念以上に「子どもの安全確保」が優先されるべきとの認識が、指導者自身の間に広く共有されていることを示す。

また、反対意見に関して具体的なコメントはなかった。その他の自由記述コメントから、「現場の萎縮」「冤罪リスク」などへの懸念が現れている可能性がある。

教室の最優先事項

優先事項 人数 割合
犯歴確認の義務化(DBS) 113 72.9%
匿名相談の外部窓口設置 88 56.8%
不適切行為時の資格停止・取消し 88 56.8%
指導中の録画・録音 75 48.4%
子どもの権利教育 67 43.2%
性的虐待に関する教育・研修 56 36.1%
第三者機関による審査 37 23.9%

「犯歴確認の義務化」(72.9%)が最優先事項として突出しており、DBS制度への直接的な支持を裏付ける。同時に「匿名相談窓口」と「資格停止・取消し」がともに56.8%と高率であり、犯歴確認と事後対応の双方が求められている。「録画・録音」(48.4%)「権利教育」(43.2%)も4割超であり、予防・抑止・事後対応の三段階すべてに対する需要がある。

(1) 予防段階:DBS犯歴確認の義務化+指導者研修の制度化 (2) 抑止段階:録画・録音、二人きり禁止等の物理的対策の標準化+子どもの権利教育 (3) 事後対応段階:匿名相談窓口+通報制度+資格停止・取消し制度 ── この三段階を一体的に設計・推進することが、現場の要望に応える制度フレームワークとなりえる。