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【コロナ禍の2020年を振り返る#2】「一人じゃない!」仲間の存在で前に進む力を得られた~若柳絵莉香~

【コロナ禍の2020年を振り返る#2】「一人じゃない!」仲間の存在で前に進む力を得られた~若柳絵莉香~
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うめざわ

新型コロナウィルスに振り回された2020年。そして、2021年5月には3度目の緊急事態宣言が出され、新型コロナウィルスの影響はまだしばらく続きそうです。

ここで、悩みながらも、さまざまな活動をされてきた先生と一緒に、この一年を振り返ってみたいと思います。

まだこれからも何が起こるかわからないことばかりですが、この一年、先生たちがどのように悩み、考え、行動されたのかを知ることで、未来のヒントが得られるのではないかと思います。

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うめざわ

今日お話を伺うのは、東京神楽坂で教室を開かれている若柳絵莉香さんです。よろしくお願いします。

若柳 絵莉香 (わかやぎ えりか) プロフィール

1972年 東京生まれ。
幼少より母・若柳吉寿海に師事。
1988年 名取を許される。
1996年 若柳流師範免状取得。
現在は五世宗家家元若柳吉蔵に師事。
以降、日本舞踊の普及に努めている。

取材記事あり>>踊りを通じた「輪」をつくる!~若柳絵莉香 東京都新宿区神楽坂~

「一人じゃない!」仲間の存在で前に進む力を得られた

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うめざわ

絵莉香さんへの取材では、悩みながらも仲間の存在で「一人じゃない!』と思えて前に進む力を得られた、ということがとても印象的でした。

絵莉香さんは2020年12月に日本橋劇場で大きな公演も開催され、また最近ではお弟子さんが中心となって、教室のSNS発信にも力を入れています。

前向きな活動を続けている絵莉香さんですが、そこにどんな悩みや困難があったのか、またそれをどう乗り越えてこられた、この一年を過ごしてきて、他の方へ伝えたいこと、などを詳しく伺いました。

何が正しいかわからない!

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うめざわ

まず、約1年前、新型コロナウィルスの影響が出始めたころについて教えてください。

若柳絵莉香(えりか)さん

皆さんがそうだったと思うんですが、初めてのことで、何をもって正しいと思ってやっていいかがわからなかったのが、一番難しかったですよね。それは今も続いています。

それこそ、買い物に行くにも息を止めて行くような・・・そんな感じでしたよね。

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うめざわ

日本で新型コロナウィルスが大きく報道され始めたのは2020年2月、横浜港の大型客船のニュースからでした。4月には第一回目の緊急事態宣言が出されました。

若柳絵莉香(えりか)さん

年末に会をやると決めていたので、なんとか気持ちを切らさないようにしようと。もちろん簡単にできるとも思っていなかったですけど、最初からあきらめていたら絶対にできないので。

と口では言いつつも、5月くらいは本当にそれどころじゃないし、気持ちも揺れ動いていました。打ちのめされたように感じたときもありましたね。

しかし、緊急事態宣言が明けてから、状況が少し変化し始めたそうです。

若柳絵莉香(えりか)さん

少し冷静になって、しっかり対策をすれば、お稽古場は密ではないし、移動なども気を付けて来られればお稽古できるな、と分かってきました。

お稽古場には来れなくても、リモートで稽古を続けてくれたお弟子さんや、年末の公演もやれるだけ準備してその上で「もしできなくても、それはそれでしょうがないじゃないですか」と前向きに背中を押してくださる方もいて、日々が少しずつ明るさを取り戻してきました。

みんな、思った以上に心がすさんでしまっているのではないか

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うめざわ

大変な時だからこそ、日本舞踊のお稽古のようなものが大切、ということもあったのではないでしょうか。

若柳絵莉香(えりか)さん

はい、そういうことも、お弟子さんから声をいただく中で感じています。

みんな、自粛でいろんなものを我慢して、自分が思っている以上に心がすさんでいると思うんです。コロナが収まっても、すぐには元に戻れないくらいに。

もちろん、災害で目の前に危険が迫っているようなときは別ですが、少し落ち着いたら「心のよりどころ」が必要です。こういう時だからこそ、趣味などを大切にしてほしいと思います。

自分の価値観だけで判断してもいけない

一方で、価値観の偏りには気を付けなければならない、と絵莉香さんはおっしゃいます。

若柳絵莉香(えりか)さん

教室を辞められた方の中には、近しい方が、新型コロナウィルスで命を落とされた、という方もいらっしゃいました。

幸いなことに私は周りに、新型コロナウィルスに感染した人はいません。でも、そういう私の価値観だけで物事を判断しては決していけない、とその時強く感じました。

汗だくで稽古する仲間を見て「前に進もう」と思えた

学校公演の様子(日本舞踊協会Instagramアカウントより)

お弟子さんだけではなく、仕事仲間からも刺激を受けたという絵莉香さん。きっかけは文化庁と日本舞踊協会による、学校公演でした。

若柳絵莉香(えりか)さん

8月から「行けるつもりで準備しましょう」ということで、学校公演のお稽古が始まりました。

そこで協会の舞踊家のみなさんと稽古を始めたことからも、力をもらえました。みんなが汗だくになってお稽古しているのを見て「自分だけが不安なわけじゃないし、みんなこうやってできることを一生懸命やってるんだ」「自分も前に進もう!」って思うことができましたね。

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うめざわ

公演をする、と決めていたこと、そしてお弟子さんや仲間たちの存在も支えとなり、力になったということですね。

9月からはよほどのことがなければ「公演をやる」と決めて、チラシ作りなども具体的に動き出しました。

しかし、今まで普通にできたことができない、という事も多かったそうです。

大勢で集まるお稽古ができない

普段のお稽古の様子

若柳絵莉香(えりか)さん

大勢で集まるお稽古ができないんですよ。

いつもなら公民館などを借りるんですけど、新宿区は9月まで使用ができませんでした。できるようになっても消毒と清掃が入るために、時間枠を一コマ飛ばしでないと借りられなくて、短い時間でぎりぎりまでお稽古して3分で着替えて・・・みたいなことをやっていました。

若柳絵莉香(えりか)さん

当日の感染対策の正解もないので、いろんな人に聞いて考えたんですが、果たしてこれで大丈夫だろうか?ということは不安で、ずっとぐるぐるモヤモヤしていました。
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うめざわ

感染対策はどのようにして決めていかれたのですか?

試行錯誤した会場の感染対策

2020年 若柳吉寿海二十三回忌追善公演 莉利の会

いろんな人から知恵を集めて・・・

若柳絵莉香(えりか)さん

夏に同じ日本橋劇場で公演をされた先生に伺ったり、演劇公演の受付のプロの方に来ていただいて意見をいただいたりしました。

お弟子さんたちはみなさん、違う仕事していて、会社ごとにいろんな感染対策があると思いましたので、作成したガイドラインを教室のグループLINEに流して、お弟子さんから意見を聞いたりもしました。

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うめざわ

会場の準備も大変だったのでは?

若柳絵莉香(えりか)さん

本番前日を下ざらいにしていたのですが、その日が一番大変でした。

発表会の時は、いつもはお客さんが楽屋に挨拶に来るのですが、それができないので、お客さんとの面会をいつ、どこでどういう風にやるだとか、掲示物をどういうものをどこに貼るだとか。

そういったことも、先ほどの受付の方や、休会中のお弟子さんたちが意見を出し合って進めてくれたこともあり、助かりました。

私がその場で全部判断するんだったら、1日だったら無理だったかもしれませんね。

当日は信じられないほどスムーズに。成功の秘訣とは

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うめざわ

当日はいかがでしたか?考えることがたくさんあって大変だったのでは。

若柳絵莉香(えりか)さん

それが、当日は信じられないほどスムーズだったんですよ、

お客様の楽屋立入を禁止したことで、感染対策だけでなく出演準備をスムーズに進められたのです。

通常はお客様がいらっしゃると準備の手を止めて対応しますし、面会で楽屋も廊下も常に混み合うため衣装やカツラをつけに別の楽屋へ移動するのも大変で。いつもは私も、舞台袖にいてもお客さんがいらっしゃると呼び出されたりするんですけど、そういうこともなく。

楽屋も静かで、楽屋のお弟子さんたちも集中できてストレスフリーだったんですって。

若柳絵莉香(えりか)さん

また、楽屋内のお手伝いの人数を絞りました。普通は出演者がそれぞれ身の回りを手伝う人を連れてきますが、それを禁止。楽屋手伝いを担当した5名が全出演者のお世話をしました。

この5名には、衣装カツラをつける時の声かけや舞台袖への誘導などの進行係から化粧を落とす等々の身の回りの手伝いまで、楽屋内での事を全てやってもらいました。

これが最高にうまくまわりました!

お手伝いのご家族や友人が楽屋にいると気をつかって話がしにくかったりするようですが、今回はお弟子さん同士が楽屋での交流がたくさん出来たらしいんですよ。そういうことは今までありませんでした。

お弟子さんを中心にSNSを更新

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うめざわ

最近、お弟子さんを中心にSNSの更新をされています。お弟子さんが中心、というところが素晴らしいなと思うのですが、どういった経緯で行うことになったのでしょうか?

若柳絵莉香(えりか)さん

弟子との雑談の中で、新しいお弟子さんを増やしていきたい、という話をしていたら「じゃあインスタやりましょうよ」と。そこにHP担当も加わって広報チームを作ってくれたんです。

「教室を知ってもらうなら、先生からの授業みたいな投稿じゃなくて、お弟子さん目線のものがあったほうが面白いよね」と意見を出してくれて、まめに更新するには「みんなでやればいいじゃないですか」と。

コロナ禍で逆に得られたこと、気づいたこと

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うめざわ

逆に、コロナ禍があったことで気づいたことや、得られたことなどはありますか?

若柳絵莉香(えりか)さん

公演の動画配信をしたことで、普通なら見てもらえなかった人に見てもらえたり、つながれたりしたことです。

会場に行けない状況だからこそ、見てもらってよかったのは、「次は会場に行きたくなる」ということですね。興味を持ってもらったり、興味を持ち続けてもらうツールになる。

不安もありましたが、やってみてそれがなくなりました。

これまでは動画配信をすると生で舞台を見る良さがなくなるとか、先入観があったと思いますが、コロナになったから、しょうがなかったからこそ、それができたと思います。

若柳絵莉香(えりか)さん

これは今年に入ってからのことなのですが、先日、遅ればせながら新年会(踊り初め)をやりまして、会場に来れない弟子にも、LINEのビデオ通話でつないで見てもらう形で参加してもらったんですよ。

そうしたら「自分の都合で参加できないのにオンラインで参加できて、ものすごく楽しかったし、嬉しかった。」と言ってくれて。

新年会(踊り初め)の様子(莉利の会Instagramアカウントより)

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うめざわ

そうやってつながりを感じられるのも良いところですね。

年末公演の配信方法等はどうやって決められたのですか?

若柳絵莉香(えりか)さん

やると決めて弟子たちに話したら、みんな食いついてくれて、みんなで話し合ってくれて、Youtubeにしようということになりました。

みんなも求めていたのかなと思います。

同世代とか、私より少し下の人がいたのが助かったと思います。

穏やかに、健やかに過ごすことが大切

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うめざわ

いま悩んでいる人たちへ伝えたいことはありますか?

若柳絵莉香(えりか)さん

穏やかに、健やかに過ごすことですかね。

そういう私自身も、春先に少し落ち込んでいたときがあったんですね。年末の公演が終わって燃え尽きてしまって、教室でも何名か家庭の事情で辞められた方もいて、そういうことが重なって、気持ちを持っていかれちゃってたんですね。

世の中的にも、コロナが2年目に突入した事でいつ終わるか分からない不安が増し我慢や自粛が限界に達したというか…。

人によっては怪我や病気という形で現れたり、去年とは違う影響がみんなに出てきていると思うんですよ。

若柳絵莉香(えりか)さん

そんな風に辛い時に無理をしてあれこれやろうとしてもダメなんですよね、大してうまくいかない。私はそれに気づいて落ち込みから脱することが出来ました。

そしてまずは自分が穏やかに、健やかに毎日を過ごすということが大事なんだなと思うようになりました。

ありがたいことに、私には表現する道具として日本舞踊があります。穏やかな心持ちは、踊りを通して自然に周りにも伝わります。良い空気は伝播するんです。

良い空気が伝わって、みなさんがお稽古場でリフレッシュ出来たら嬉しいなと思います。

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うめざわ

健康が一番大切ですね!

本日はありがとうございました。

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