読んでおきたい!日本舞踊を学ぶ、おすすめ必読本【初心者向け4冊を紹介】
こんにちは、うめざわです。
現在、日本舞踊の仕事をしており、この日本舞踊メディア「俺の日本舞踊」を運営している他、舞踊会で演目解説や、日本舞踊教室のHP作成、集客のお手伝い、教室運営のサポートをなどを行っています。
私は大人になってから日本舞踊を始めました。日本舞踊のことを学ぶのに、書籍での学習はとても重要でした。今現在も日本舞踊の本を開かない日は、まずありません。
日本舞踊って難しいですよね。言葉も難しいですし、たとえ言葉の意味だけ分かっても、江戸の風俗を知らないと結局理解できなかったりします。音楽も、長唄?清元?常磐津?何が違うの?ってなります。。。そんなとき頼りになるのが「本」です。
日本舞踊を本で学ぶ際の注意点
難しいところは、最初から全部理解しようとしなくてOKです。
私は、日本舞踊に関する本を何冊も読んできましたが、結論として「これを読めば大丈夫!」という1冊だけを紹介するのは不可能です。そこは400年の歴史を持つ日本舞踊。一筋縄ではいかないのが魅力でもあります。
すべてを網羅する1冊は存在しないので、ここで紹介する本も、読むうちにわからない用語や、知らない演目が紹介されたりして、読書が一瞬止まることがあると思います。
でも大丈夫です。
わからないところは、とりあえず読み流して大丈夫。読む場所も、「最初から全部読んで理解してやろう!」と思うのではなく、目次を見て、あなたが興味があるところから読めばOKです。わからないところがあっても、あとで先生に聞いたり、ネットで調べたり、また別の機会でその言葉に出会ったときに、思い出してもう一度読めばいいのです。
この記事では「この本は、最低この章は読みましょう」という本の中のおすすめページも紹介しています。
4冊を選んだ基準はこちら
この記事では、最低読んでおきたい必読本4冊を紹介します。先にネタバレすると、以下の4冊です。
1.日本舞踊ハンドブック(日本舞踊の知識を得る)
2.日本舞踊の実技(技術を学ぶ)
3.古典芸能の基礎知識(関係の深い芸能を知る)
4.日本音楽史(音楽を学ぶ)
「日本舞踊の知識を得る」「技術を学ぶ」「関係の深い芸能を知る」「音楽を学ぶ」という4つの観点から、それぞれ1冊ずつを選びました。
とりあえず、この4冊の中の気になるものから順番に、読んでみることをお勧めします。
できれば、身近に、日本舞踊を習っている人なら自分の先生でもいいですし、本の内容でわからないことがあったら、その都度聞ける人が周りにいると理想ですね。
日本舞踊を学習をする際の必読本【4冊を紹介します】
1.日本舞踊ハンドブック【改訂版】
この本を一言でいうと・・・「日本舞踊の知識」が得られます
こんな人に▶これから習う人・初心者~中級者
お勧めの使い方▶まず気になったところを読み、あとは用語集として必要な時に辞書のように使う
この本は「日本舞踊の基礎知識の教科書」です。
入門書かつ、用語集として、日本舞踊学習者が手元に置いておきたい一冊です。日本舞踊の基本的な歴史、種類、用語、主要演目の解説などが掲載されています。
こんなことが書いてあります
第一部「日本舞踊への招待」では、日本の踊りの歴史、舞踊の種類、演出と演技の約束事、音楽、衣裳、道具について日本舞踊の基本的な知識が学べます。
第二部「流派と家元」では、家元制度の解説と主だった流派の簡単な歴史や有名人について学べます。
第三部「名作の鑑賞」では、実に205の演目解説が掲載されています。特に有名な86の演目は、それぞれ1~2ページを使い詳細に解説してあります。
第四部「用語・資料集」では舞踊・邦楽の用語集、これから習いたい人に向けて、教室の選び方や、決まり事、月謝や発表会費用の目安などを解説した「入門ガイド」、さらに学びたい人へ専門書の紹介が掲載されています。
こういう使い方がおすすめです
ハンドブックと言えど「小事典」と銘打ってあるだけあって、ボリュームはなかなかのものです。
ですので、まずは気になるところだけを読み、あとは辞書のようにわからない演目や用語が出てきたらこの本で調べる、という使い方がおすすめです。
しいて言うなら第一部の「日本舞踊の歴史」のパートは、日本舞踊だけではなく、日本の踊りの歴史がざっくり理解できるので読んでおいて損はないと思います。
解説には全体的に邦楽や舞踊の専門用語がじゃっかん多めで、日本舞踊を始めたばかりの初心者向けがいきなり読んですべてを理解できるわけではありません。
それでも網羅的に日本舞踊情報が掲載されている点では必携の一冊と言えるでしょう。舞踊会に出かける前に、これから見るプログラムの予習として、演目解説を読んでいくという使い方もできます。
これから日本舞踊を始めたい人には気になる、月謝や発表会費用や名取、師範料の目安などの参考金額も掲載されていることも注目です。すでに歌舞伎や文楽、邦楽などに一定の知識があり、これから日本舞踊も見てみようかな、習ってみようかな、という方にもおすすめの一冊です。
2.実技 日本舞踊の基礎
この本を一言でいうと・・・「日本舞踊の技術」を学べます
こんな人に▶初心者~中級者
お勧めの使い方▶まずは踊りのための型にどんなものがあるのかを知るつもりでざっと読む。あとは特に気になるところ、身に付けたいときに再び戻ってきて詳しく読む、見ながら練習する。
「日本舞踊ハンドブック」が知識の教科書なら、この「実技 日本舞踊の基礎」はタイトル通り「実技の教科書」といえるでしょう。
こんなことが書いてあります
基礎的な「かまえ」や「上半身下半身の動きの基本」「歩く、廻る、すべるなどの動作」、「小道具」の扱いのポイントなどを写真付きで非常に丁寧に解説しています。最後には応用編として、童謡に合わせて基本動作が練習できる踊り譜が掲載されています。
例えば、初心者が最初につまづきがちな「三つ振り(三つ極め)」では、
童振り、若振り、娘振り(右)、娘振り(左)、男極め、町人極め、荒事極め、奴極め
8つの種類を写真と言葉で丁寧に説明します。
この本は昭和56年(1981年)の出版ですが、現在まで重版に重版を重ねており、中国語・英語で出版されるなど、日本だけでなく世界でも熱心に学ばれているロングセラーです。日本語版は映像版もあります。
著者は紫綬褒章、勲四等宝冠章も受賞した花柳千代氏。千代氏は、初代花柳応輔氏、初代花柳昌太朗に師事した他、全国舞踊コンクールでは36回の指導者賞を受賞しており、日本舞踊の技術の体系化、後進への指導で多大な貢献があります。
こういう使い方がおすすめです
まずは日本舞踊の基本の動作と、その名称を知るために、全編(応用編以外)をざっと読むことをお勧めします。このとき熟読してすべて理解する必要は必ずしもありません。
初心者にとって、「振りを覚えること」が非常に難しいことです。そこで、個々の動作の名称を知ること、基本の動きを理解することが早道です。「型」といってもいいでしょう。
「型のパターン」が頭の中にあると、踊りを「すでに知っている型の組み合わせ」として組み立てることでき、振りを覚えるのが早くなります。
しかし、普段のお稽古ではどうしても、流れていってしまって、個々の動作について詳細に知ることが難しい場合があります。時間の都合で教わりきれないこともあると思います。
そんなときにこの本に戻って、型について学ぶ、練習することで踊りの習得・理解が深まります。
3.古典芸能の基礎知識
この本を一言でいうと・・・「日本舞踊に関わりの深い古典芸能」を知れます
こんな人に▶初心者
こんな人にお勧め▶日本舞踊(+能楽、歌舞伎、人形浄瑠璃、邦楽)について、辞書的な説明だけではなく、社会的、歴史的背景まで踏まえて知りたい方
日本舞踊を学ぶ上で、能や歌舞伎、浄瑠璃など、そのルーツとなった芸能について知ることは避けて通れません。
おそらくこの記事を読んでいる人は、一度はそれらについて説明を聞いたり、文章を読んだことがあるでしょう。しかし、一般的、辞書的な説明を聞いても、いまいちよく理解できないという方も多いのではないでしょうか。
こんなことが書いてあります
第一部「古典芸能の基礎知識」は、能楽、歌舞伎、人形浄瑠璃、日本舞踊、邦楽についての解説です。
第二部「鑑賞秘伝」、第三部「芸能余談」は著者の随筆的な内容になっています。
この本は日本の古典芸能について歯に衣着せぬ簡潔で、かつ本質的な分析を学ぶことができます。著者は小山観翁さん。観翁さんは歌舞伎の「イヤホンガイド」の創設者でもあります。
イヤホンガイドとは・・・音声による同時解説サービス。劇場にてイヤホンを貸出し、目の前の歌舞伎と同時進行で、見どころや背景知識を音声で解説してくれるというもの。
例えば、上方舞の成立を、江戸時代の大坂・船場の米商人と武士の商習慣から分析したり、江戸における踊り稽古場の需要を、参勤交代という社会制度を切り口に解説したりと、一般書とは一味違う、深堀りされた解説を読むことができます。
こういう使い方がおすすめです
個人的にこの本は全部おすすめなので、最初から最後まで読んでください、と言いたいところですが、今回は初心者向けなので、あえて限定するなら、第一部「古典芸能の基礎知識」は一通り読むことをお勧めします。
日本舞踊の決まりごとの記述などには、やや情報が古いと感じる(1981年刊行)ところもありますが、その一歩も二歩も踏み込んだ分析には著者の深い教養と、古典芸能への愛情を感じます。
第二~三部「鑑賞秘伝」「芸能余談」も面白いのでおすすめです。
4.図解 日本音楽史 増補改訂版
この本を一言でいうと・・・「日本舞踊の音楽」がわかります
こんな人に▶初心者~中級者
お勧めの使い方▶日本舞踊にかかわりが深い「三味線音楽」を読む。あとは興味があるところを読めばOK。
日本舞踊は身体芸術ですが、それは日本の伝統音楽と深く結びついています。
音楽の定番とされるのは「長唄」「清元」「常磐津」でしょう。「小唄」「端歌」「義太夫」や「大和楽」なんていうのもあります。これらの違い、わかりますか?
私はさっぱりわかりませんでした。しかも、調べていくと、これらの音楽はそれぞれに無関係ではなく、日本の音楽史の中で複雑に関係しあっています。
こんなことが書いてあります
日本の音楽史を古代から戦後の音楽まで、ジャンルごとに詳しく教えてくれるのがこの本です。これを読むと、そもそも日本の音楽はどういうものなのか、そして日本舞踊と切っても切れない「三味線音楽」について歴史を通じて知ることができます。そして、日本舞踊の音楽が、いかに懐の深い邦楽の世界の中にあるのかがわかります。
第一章「日本音楽のあらまし」では、膨大・複雑な日本音楽の全体を俯瞰し、「歌い物と語り物」「芸能と音楽」「流派と家元」など、日本音楽に通底するいくつかのテーマによって日本音楽全体について理解を深めます。
第二章以降はジャンルごとの解説です。内容は「雅楽」「声明(しょうみょう)」「能楽」「琵琶楽・詩吟」「尺八楽」「筝曲」「三味線音楽1~4」「民謡」「楽器」「沖縄音楽」「近代の音楽」があります。
こういう使い方がおすすめです
邦楽の世界は非常に複雑です。すべてを理解する必要はありませんが、第一章の「日本音楽のあらまし」、第八~十一章「三味線音楽」だけは読んでください。
日本舞踊の音楽を知るうえで重要な「歌」について、「歌い物と語り物」の違い、そして日本音楽のそもそもの特徴を知ることができます。
「三味線音楽」の項では、浄瑠璃、歌舞伎、日本舞踊の伴奏音楽として受け継がれ、発展していくプロセスを時系列で知ることができるので、音楽史側から見た、芸能の歴史も理解することができます。
歌舞伎音楽についても詳しく載っているので、「常磐津?清元?長唄?どう違うの?」「黒御簾?なにそれ?」というような方もこちらで勉強ができます。歌舞伎の知識もあるていどあったほうがいいですからね。
余裕があれば、第四章「能楽」、第十三章「楽器」も読んでおきたいところです。
初心者が本を読みながらするといいこと
日本舞踊を学ぶための必読本として4冊を紹介しました。さて、本を読むことで知識をインプットしたら、できるだけアウトプットしましょう。
誰かに話す、ツイートする、ブログに書くなど、アウトプットすることで知識が定着して、より身につきます。
実はこの「俺の日本舞踊」も、そうやって始まりました。ネット上に情報がないから、勉強した内容をブログに書き始めたのが最初です。日本舞踊のことをもっと知りたいと思っている人に、自分が学んだことをシェアしたいと思ったからです。
知識が深まることで、日本舞踊はもっと楽しくなります。ぜひ周りの人にも学んだ内容をシェアしてあげてほしいと思います!